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『ファウンダーズデイ 殺戮選挙』 人々を切り裂き、分断を生む本当の“スラッシャー”は誰?

◆今週公開の注目作

『ファウンダーズデイ 殺戮選挙』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

運命。何とロマンチックなワードだろう。運命の赤い糸で結ばれたふたりのラブストーリー映画は、多くの観客の心をときめかせる。しかし、運命が持つのは良い面ばかりではない。ホラー映画は特にそれをよく教えてくれる。例えば、『ヘレディタリー 継承』のように血脈という名の赤い糸が個人を縛るのをホラーファンは何度も見てきた。『ファイナル・デスティネーション』シリーズのように、いくら回避しようとしても避けられない死という運命に登場人物が引きずられていくのを何度も見てきた。運命は“定め”、つまり決まっていることだ。それは我々の意思とは関係なく、我々の自由を制限する。ホラー映画が描く様々な恐怖の根底にあるのは、一言でまとめると「自由の侵害」となるだろう。

 

現実世界でも、多くの制約がある。運命とは違うが、政治もまた我々の自由を縛りうるものだ。現実に即した恐怖を扱うことがホラーに真実味を与えるのなら、政治ホラーは非常に理に適ったジャンルと言える。本作『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』もその中の1本だ(ビジュアルがどう見ても同じ政治ホラーの『パージ』なのはご愛嬌)。舞台は作られてから300年の節目を迎え、次なる町長選が迫ったニューイングランドの小さな町フェアウッド。現町長のグラッドウェルと、彼女に挑むフォークナーのどちらを支持するかで住民も割れている。主人公アリソンは同性のメリッサを愛していたが、ある日不気味な仮面を被った何者かにメリッサを殺されてしまう。彼女のフルネームはメリッサ・フォークナーだ。果たして、この殺人は町長選の裏に渦巻く陰謀なのか?

昨年末の『サンクスギビング』に次いで、これもまたホラー映画恒例の記念日ホラーとなっている。より細かく言えばスラッシャー、つまり連続殺人ものでミステリー要素が強い。『スクリーム』シリーズのように、犯人探しをするのが楽しい作品だ。え? 「一番悪いのは政治家だ」? まあまあそれは置いておいて。犯人はかなり意外な人物かもしれない。政治ホラーと言っても難解でもないし高尚でもないので、単純にゴアシーン目当てで見ても楽しめるだろう。

今後に公開を控えている政治スリラー『シビル・ウォー アメリカ最後の日』でも描かれているのだろうが、政治的に対立すれば隣人は容易に殺し合うようになる。それぞれがそれぞれの生き方にあった自由を求めているだけなのに。大昔から実際に世界中で起こっていることだけに、正直本作や他のホラーよりもよっぽど切実で頭を悩ませる問題だ。政治家の暗殺や暗殺未遂は決して海の向こうの話ではなくなってしまったし、現実の方がホラーを超えてきているような気もする今日この頃だが、まあとりあえず。人を殺しているヒマがあったら選挙に行こう。

【ストーリー】
ニューイングランドの平和な町で現職のブレア・グラッドウェルと挑戦者ハロルド・フォークナーは目前に迫った町長選を巡り、激しく争っていた。ある夜、アリソンとメリッサが夜道を歩いているとマスクを被った謎の男に襲われる。これは不吉な連続殺人事件の始まりにすぎなかった……。

【キャスト】
ナオミ・グレイス、デヴィン・ドルイド、ウィリアム・ラス、エイミー・ハーグリーヴス、オリヴィア・ニッカネン 他

【スタッフ】
監督:エリック・ブルームクイスト
脚本:エリック&カーソン・ブルームクイスト

 

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