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『キラー・ナマケモノ』ヤツに殺されるほど怠惰な者は大人しく死んでおけ!殺人鬼の正体は、ま、マサカー!?

◆今週公開の注目作

『キラー・ナマケモノ』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

断言しよう。本作は、今劇場で上映されている映画たちの中でも群を抜いてくだらない映画である。なぜか。もう分かっただろう。タイトルを見れば一目瞭然、いわゆる出オチというやつだ。くだらないついでに、きっと一番安い映画でもある。しかし、「くだらない」は必ずしも「つまらない」を意味しない。一見の価値はあるはずだ。物好き…いやモノ好きの方にとっては。

本作の舞台はある大学の女子寮。日本ではあまり馴染みがないが、ホラーだとお馴染みのソロリティ(女子学生同士の結束が強い社交クラブ)が描かれている。互いを「姉妹(シスター)」と呼び、基本的には仲の良い彼女らの間にも、ソロリティをまとめる次期会長を決める時期で不穏な空気が漂っていた。地味な主人公エミリーは“何者か”になるために会長を目指し、高飛車な現会長のブリアナも再選しようとあの手この手で妨害してくる(ブリアナ役のシドニー・クレイヴンがホラーの巨匠ウェス・クレイヴンと同じ姓なのが良い)。そんな中、エミリーは常軌を逸したカワイさを持つある動物を見つけ、寮のマスコットとして起用する作戦で当選を狙う。だがまさか、この動物によってソロリティが壊滅するとは、エミリーどころか観客すら思いもしなかった……。

本作はまごうことなきB級コメディホラーである。そりゃそうだろう。本作に登場する殺人鬼はあの動物のナマケモノなのだから! 改めて、ナマケモノとはすごいネーミングだが、英語でも「Sloth(スロース)」と呼ばれる。本作の原題は、屠殺場を意味する「slaughterhouse(スローターハウス)」にかけた『Slotherhouse』となっており、「Sloth」は『セブン』他多くの作品でもよくフィーチャーされる“7つの死に至る罪”のうちのひとつ、「怠惰」を指す言葉でもある。こいつに殺されるのであれば、ナマケモノを超える怠け者ということに……!? 一応、本作のナマケモノはなぜかすばしっこいしソロリティの連中よりも頭が良いので、殺られても気にせず成仏すべきかもしれない?

本作は安い。ルックも安ければストーリーも安い、演技も安い。最も大事なナマケモノすら安い。アニマトロニクス(動物型ロボット)を使っているはずだが、ほとんどただの人形にしか見えないのだ。『チャイルド・プレイ』では文字通り人形のチャッキーが殺人鬼だったが、あれよりも安い。とは言え、しょうがないではないか。本作においては命すら安いのだから! もはやB級どころかC級と言っても良いかもしれない。だがこのCはCrazyのCである(いや、C“lazy”か?)。古くはトマト(『アタック・オブ・ザ・キラートマト』)が、最近でもタイヤ(『RUBBER ラバー』)、ジーンズ(『キラー・ジーンズ』)、カブトガニ(『キラーカブトガニ』)などが殺人鬼化している群雄割拠のホラー界。その真っ只中を鋭いツメで切り裂いて先頭に躍り出ようとする、ナマケモノらしからぬその意気や良し!

もはやナマケモノってなんだ? 当の殺人ナマケモノももう少し頭が良ければアイデンティティの危機に陥ったのだろうが、全然グロくなく怖くもなくコメディに振り切ったカワイイホラーとして本作のキャラは立っている。……それでもホラーなのかって? ホラーを自称していれば何でもホラーなのだ。ホラー界は心が広いのだ。こういったホラーが好きになってしまったら、もう前の自分には戻れない。おお怖い。

【ストーリー】
大学の女子学生クラブ「シグマ・ラムダ・シータ」に所属するエミリーは、大学4年の最後の年になっても地味でハネない学生生活に焦りを感じていた。そんなある日、ショッピングモールでペット業者のオリヴァーと出会ったことから、物珍しいナマケモノを飼うことに。女子大生たちはたちまちキュートなナマケモノに夢中になり、エミリーは寮のマスコットにしようと提案。「アルファ」と名付けられた。だが、そのナマケモノは見た目の可愛らしさとは裏腹に、脅威の能力を持った殺人ナマケモノだったのだ。そして、ひとりまたひとりと美女たちを血祭りにあげ、寮は“殺戮の館”と化していく――。

【キャスト】
リサ・アンバラバナール、シドニー・クレイヴン、オリビア・ルーリエ、アンドリュー・ホートン、ビアンカ・ベックルズ=ローズ、ティフ・スティーヴンソン、ステファン・カピチッチ

【スタッフ】
監督:マシュー・グッドヒュー
製作・脚本:ブラッドリー・フォウラー、キャディ・ラニガン
撮影: マーク・デイヴィッド
音楽: サム・ユーイング
ヴィジュアルエフェクト:SILO FX
配給:アルバトロス・フィルム
©2023 Slotherhouse™ All rights reserved
公式サイト:namakemono-film.com

 

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