MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『恐怖の報酬』オリジナルと同じフランスで再度リメイク。英雄になれなくば、ニトロとともにハデに散れ!

この映画は、つまり―
  • あの名作の再リメイク!
  • 思いついた時点で勝ち確定の設定!大量のニトロを800キロ先へ運べ!
  • 呆れるほどに色々起こる死の障害物レース

記事を見る

◆配信中の注目作

『恐怖の報酬』

Netflixで視聴する⇒こちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

映画の「設定」は非常に大事だ。ご存じ、物語の基本となる時代や国、キャラクター、物語内世界の決まりなどを包括した舞台設定のことだが、『CUBE』などのシチュエーション・スリラーを思い出していただければよく分かるだろう、ストーリーを考える際に最初に組み立てるこの設定の時点で面白ければ、もう勝ったも同然なのだ。名作として映画史に名を刻まれているフランスのクラシック、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の『恐怖の報酬』(1953)もその典型と言える。そのため、1977年には昨年亡くなった『エクソシスト』などを手がけた巨匠ウィリアム・フリードキンがリメイクし、そして今回再びリメイクがなされた。しかも、オリジナル版と同じフランスで。

3作に共通する設定は至極単純だ。爆発事故が起き、消えない炎が上がり続ける油井(油田)。石油会社は強力な爆風で火を消し飛ばす策を提案し、大量のニトログリセリンを用意する。しかし現場までは数百キロ、細心の注意を払いながらトラックで運ばなければならない。かくして、止むに止まれぬ事情のある者たちが、一攫千金を夢見てこの決死のミッションに挑んでいく…。

 

非常に分かりやすい。「常に緊張感が漂う任務で一攫千金」と言えば、筆者などは子どもの時にテレビで見た「イライラ棒」を思い出す。知らない世代の方に一応説明しておくと、電流の流れる金属のフレームに当たらぬよう、電極棒を様々な障害を超えゴールまで駆け抜けさせるゲームだ。失敗すると、電極棒に仕込まれた火薬が爆発する。もちろん、『恐怖の報酬』の場合はこの比ではない。ニトログリセリンは、実際は冠動脈が細くなり心筋へ流れる血が不足することで動悸などの症状が現れる狭心症の薬となる(未だに信じられない)ものの、やはり一般的なイメージとしては「少しの衝撃で大爆発する超危険な液体」でしかないだろう。ちなみに、ワイルドなスピードでカーレースをしているアイツらが使う“ニトロ”は、爆発的な加速をもたらすとは言えそれ自体では爆発しないナイトラス・オキサイド(亜酸化窒素)であって、ニトログリセリンではない。

何にせよ、『恐怖の報酬』は心臓に悪い。この映画たちは、実際のニトロと違って観客に恐怖を与え、血管を収縮させてしまうのだ。今回のフランスリメイク版は、密林が舞台であったフリードキン版と違って砂漠を行く展開になるが、舗装されていない道はそれだけでかなり揺れる。しかも、走り抜ける地域は銃を持った民兵がウロウロしており治安が悪く、何かあるとすぐ銃撃戦に突入する。何度も「バカなの?」と言いたくなるような状況が訪れ、普段映画の大爆発にキャッキャしている我々をハラハラ(ワクワク?)させてくれる。ちなみに、劇中では爆風消火には100キロのニトロがあれば良いと言われているのに、トラック2台で200キロのニトロを運ぶことになる。カンの良い皆様なら、筆者の言わんとしていることが分かるだろう。

さすがにオリジナル版とフリードキン版には敵わないのだが、黄金の設定がもたらす面白さは担保されている。前2作と違い、観客は高みの見物で楽しみという“恐怖の報酬”を得られるだろう。恐怖そのものを得たい死に急ぎ野郎は、前2作の方を見ると良い。

【ストーリー】
大勢の人々の命を脅かす油井火災が発生。大惨事を防ぐために集められた最強チームが、ニトログリセリンを積んだトラックで危険な砂漠地帯をひた走る。

【キャスト】
フランク・ガスタンビドゥ、アルバン・ルノワール、ソフィアン・ザマニ、アナ・ジラルド 他

【スタッフ】
監督:ジュリアン・ルクレルク

 

★配信エンタの過去記事はこちら

『終わらない週末』神が世界を創造し終えた週末から世界が終わっていく。世にも静かで美しいアポカリプティック・スリラー。

『PIGGY ピギー』彼は悪魔の殺人犯、それとも白馬の王子様?これはホラーかラブストーリーか。

『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』地の果てでひとつ、またひとつと個々の世界が終わっていく。Z世代の探偵は世界の崩壊を止められるか?

『レンフィールド』”虫食い下僕”ニコラス・ホルトVS”パワハラドラキュラ”ニコラス・ケイジ!ニコラス対決を制するのは誰だ!

『ザ・キラー』“完璧”は時に人を退屈させる。しかし“完璧”に生きられる人間などいない。

バックナンバー