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『ジョン・ウィック:コンセクエンス』夏草や兵どもが夢の跡…。死神と謳われた殺し屋も、桜の如く散っていくのか?

◆今週公開の注目作

『ジョン・ウィック:コンセクエンス』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

『ジョン・ウィック』シリーズ。筆者は、ここまで倫理的な殺し屋映画を知らない。大抵、映画に出てくる殺し屋は一般人を巻き添えにすることをいとわず、節操もなければ品もない。しかし、ジョン・ウィックたちは違う。あくまで手にかけるのは同業者だけだし、その相手も元は友だちだったりする。裏社会を統べる首席連合のルールにきちんと従い、礼儀正しく、恩義を大事にする、人を殺す以外は非常にナイスな人たちばかり。忠誠と誉れ…その心は侍のようだ。監督のチャド・スタエルスキは、『マトリックス』でキアヌ・リーブスのスタントダブルを務めたキアヌの分身とも言える盟友で、まさに元寇の時代を舞台に侍の誉れを描いたゲーム『ゴースト・オブ・ツシマ』の実写化に挑戦している人物でもある。ジョンたちの生き様には、武士道的な面があるのだ。

1作目『ジョン・ウィック』で妻を病で亡くし形見の犬は殺され愛車は奪われ、2作目『ジョン・ウィック:チャプター2』では思い出の残る家を焼かれ、3作目『ジョン・ウィック:パラベラム』では愛の証である薬指と指輪を失ったジョン。「パラベラム」とは、ラテン語の警句「Si vis pacem, para bellum(汝平和を欲さば、戦への備えをせよ)」の後半部分だ。全てを終わらせるために戦ってきたジョンの願いは叶うのか? 否、依然として彼は奈落の底にいる。まだ失えるものは残っているのだろうか?

4作目となる本作は元々、「ハガクレ(葉隠)」というサブタイトルがつく予定だった。これは江戸時代に書かれた武士道の心得が記された書物で、「武士道と云うは死ぬ事と見付けたり」の一文で有名だ。内容を大雑把に要約すると「例え本当に死ぬことになろうとも、死ぬ気で生きろ」となり、これは“パラベラム”の考えにも通ずる。そして、「コンセクエンス」とは「(悪い)結果、報い」。さらにスタエルスキは過去、大量に人を殺したジョンにハッピーエンドはないと公言している(倫理的だ!)。日本好きのスタエルスキのことだから、「4」が日本で不吉な意味を持つと知っているだろう。ジョンは前作で首席連合への謀反の意志を示したため、本作では首席連合が差し向けたドニー・イェン演じる座頭市的な盲目の刺客ケインに狙われる。

盲目のドニーと聞いて、どうしても思い出すのは『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』だ。『ローグ・ワン』自体は面白かったが、『スター・ウォーズ』はどうもアジア系アクション俳優の扱いが下手なのだ。『ローグ・ワン』のチアルート役ではドニー自身の本来の強さを見せきれていない。『フォースの覚醒』では、インドネシアの超絶アクション『ザ・レイド』シリーズの兵(つわもの)、イコ・ウワイス&ヤヤン・ルヒアン&セセプ・アリフ・ラーマンが宇宙ギャングとして登場するが、すぐに死ぬ。『最後のジェダイ』では、ベトナムの泥臭いアクション『ハイ・フォン:ママは元ギャング』の姉御、ベロニカ・ンゴーが中心人物ローズの姉ペイジとして登場するが、やはり冒頭で死ぬ。なぜだ。アクション俳優がアクションさせてもらえないなんて!

その点、『ジョン・ウィック』シリーズは上手くやっている。上記の全員が出演しているわけではないが、ヤヤンとセセプは『ジョン・ウィック:パラベラム』でキアヌを圧倒する体術を見せてくれた。もちろん、本作のドニーもだ。視覚なき刺客とは言え、彼に死角はない。銃と刀に加え、『イップ・マン』で見せた恐ろしく手数の多い連続パンチまで繰り出し、最強すぎて笑う他ない。日本勢も光っており、真田広之と日本出身のアーティスト、リナ・サワヤマが殺し屋御用達のホテル「コンチネンタル」の大阪支部の支配人シマヅとその娘アキラとして登場する。日本には銃がないだけに(この世界の日本にもないのだろうか?)、大阪では刀と弓が中心のアクションとなる。これまで3本の映画でほぼアクションばかりを描いてきたのに、きちんと新鮮なバトルを見せてくれるのはさすがだ。

失い続けながら生きるジョンは、生き恥をさらしているのか。首席連合に刃向かって死んだとして、天国の妻ヘレンには会えるのだろうか。しかし少なくとも、『葉隠』流に言うならその死に様に恥はない。どのような最後/最期になろうとも、我々が呟くことを許されるのはただ一言だけだ。即ち、“Yeah”。

【ストーリー】
裏社会の掟を破り、粛清の包囲網から生還した伝説の殺し屋、ジョン・ウィック。地下に身を潜め、全てを牛耳る組織:主席連合から自由になるために立ち上がった。 組織内での権力を得た若き高官グラモンは、聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破、ジョンの旧友でもあった盲目の達人ケインを強引に引き入れ、ジョン・ウィック狩りに乗り出す。そんな中、日本の友人、シマヅの協力を求めてジョンが大阪のコンチネンタルホテルに現れる・・・。果たしてジョンは、かつて忠誠を誓った世界との決着をつけて、真の自由を手にすることができるのか!?

【キャスト】
キアヌ・リーブス、ドニー・イェン、ビル・スカルスガルド、ローレンス・フィッシュバーン、真田広之、リナ・サワヤマ ほか

【スタッフ】
監督:チャド・スタエルスキ
配給:ポニーキャニオン
原題:JOHN WICK:CHAPTER4(2023/アメリカ)
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9月22日(金)全国公開

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