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『ボーンズ アンド オール』骨まで愛して。思わず血で頬が染まる、カニバリズム・純愛・ホラー。

◆今週公開の注目作

『ボーンズ アンド オール』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ホラー映画好きであれば、『TITANE/チタン』でパルム・ドールに輝いたジュリア・デュクルノー監督の前作『RAW ~少女のめざめ~』を見たことがあるかもしれない。獣医志望の少女が主人公のカニバリズム・ホラーだ。本作『ボーンズ アンド オール』も設定自体は似ており少年少女のカニバリズムを描いているが、獣医大学を舞台にしていた『RAW』と違いロードムービーであるため、次々に違う場所へと移っていく。それでも、その衝動からは逃げられない。『RAW』が性の目覚めと家族愛に焦点を当てていたとすれば、本作は逃れられない業を背負ったマイノリティ同士の恋愛がテーマだ。監督のルカ・グァダニーノは以前『君の名前で僕を呼んで』でゲイ同士の恋愛を描いたが、本作では少なくとも外見上は「マイノリティ」の意味が変わっている。

文字通りの“肉食”女子マレンを演じるのは、『WAVES/ウェイブス』のテイラー・ラッセルだ。純真なイメージのある彼女がいきなり他人を食べ始めるものだから、多くの観客は面食らうだろう。相手役のリーを演じるのは『君の名前で僕を呼んで』で瑞々しい演技を見せたティモシー・シャラメだが、もちろん単に美男美女の甘酸っぱい恋愛を描くだけの映画にはなっていない。彼らは時々どうしようもなく人間を喰いたくなる「イーター」なのだ。そうしなければ生きていけないし、“食事”をしてしまう度にこそこそ夜逃げしなければならない。他人から理解されないからこそ、イーター同士惹かれ合ってしまう。血のように赤い糸で結ばれているのだ。

問題は、その糸が繋いでいるのは2人だけではないということ。マレンが最初に出会う同族はリーではなく、老人のサリーだ。匂いで同族かどうか判断できると話すサリーは人喰いを手助けしてくれるが、厄介なことにマレンに一目惚れする。このサリーが曲者で、カニバリズム・純愛・ホラーである本作のホラー部分を一手に引き受けている。早い話がロリコンストーカーなのだ。演じているマーク・ライランスは、いつもの「どこかトボケたおじいちゃん」の雰囲気を完全に封印し、非常に気色の悪い、心だけ少年のまま成長していないようなグロテスクな老人になりきっている。人喰いを楽しむ彼が追ってくるのは、同じイーターのマレンにとってもとてつもない恐怖だ。

酸鼻を極めるような凄惨さの人喰いシーンと、マレン&リーの甘酸っぱいロマンスの危険な融合を成し遂げた本作。突拍子もない内容にも思えるが、誰しも日々意図せず他人を傷つけているし、食事においてはさすがに人間ではないが動物を喰っている。どこかの部分で共感してしまうはずだ。ただし、旅の中で酸いも甘いも知ったマレンとリーがようやくひとつになった時――やはり彼らのようには生きられないと、畏怖とも憧れともつかぬ感情に身を貫かれるのだ。

【ストーリー】
生まれつき、人を喰べてしまう衝動をもった18歳のマレンは初めて、同じ秘密を抱えるリーという若者と出会う。人を喰べることに葛藤を抱えるマレンとリーは次第に惹かれ合うが、同族は喰わないと語る謎の男の存在が、二人を危険な逃避行へと加速させていくー

監督:ルカ・グァダニーノ『君の名前で僕を呼んで』『サスペリア』 
出演:ティモシー・シャラメ『DUNE/デューン 砂の惑星』『君の名前で僕を呼んで』 、テイラー・ラッセル『WAVES/ウェイブス』、マーク・ライランス『ブリッジ・オブ・スパイ』 『ダンケルク』

公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/bonesandall/
公式Twiiter:https://twitter.com/warnerjp #ボーンズアンドオール

© 2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.
映倫区分:R18+

2023年2月17日(金)公開

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