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『CUBE 一度入ったら、最後』同じような部屋が続く迷宮のように、同じような作品が溢れる中でのリメイクの意義とは。

◆今週公開の注目作 
『CUBE 一度入ったら、最後』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

1997年のオリジナル版『CUBE』は、ホラー映画に大きな影響をもたらした。理由も分からないまま無数の立方体からなる施設に閉じ込められた素性もよく分からない登場人物たちが、各部屋に仕掛けられた死のトラップをかいくぐって脱出しようとする“だけ”の映画であったが、その斬新な設定を前面に押し出した作風は非常にフレッシュな驚きをもって迎えられた。その後は似たような設定の映画が量産され、「デスゲーム映画」とか「シチュエーションスリラー映画」というジャンルとして確立された。『CUBE』自体の続編も『CUBE 2』と『CUBE ZERO』の2作があるが、オリジナル版の監督ヴィンチェンゾ・ナタリは関わっていない。約25年の時を経て、『CUBE』は何とこの日本で、初めての監督公認リメイク作品として作られることになった。しかもヴィンチェンゾ・ナタリの協力付きで。

とは言え、前述の通りオリジナル版の一番の特徴はその設定だ。設定をなぞるだけのリメイクには目新しさがない。そこで、本作には独自のテーマが足されている。詳しくは話せないが、ヒントは舞台となる施設“キューブ”のセットにある。隣の部屋への通路を開けるためには6面の壁にあるハッチのハンドルを回すのだが、そのハンドルはオリジナル版ではアルファベットのIの字型だったのに対し、本作では十字型になっている。非常に象徴的な形だ。それに関連して、本作ではある登場人物の過去についても触れられる。“キューブ”のセットはオリジナル版と比べてスタイリッシュで明るくなっているが、そのキャラクターにとってはどこまで行っても同じような光景が続くこの場所は出口の見えないトンネルと同じだ。オリジナル版を知る方からすれば本作での変更ポイントに賛否両論あるだろうが、だからこそ逆に、この見慣れた“キューブ”に別の意味を見出すことができるだろう。

オリジナル版を知らない方は、まず本作から観てしまって構わない。オリジナル版の先進性はさすがにもう失われているし、ドラマ性が足された本作の方が見やすい映画だと言えるかもしれない。“キューブ”の謎には、ものすごく難解なわけではないが数学的な要素が関わっており、ドラマ性も薄いオリジナル版は言うなれば「理系映画」という感じだった。対して、リメイク版は「文系映画」。数学が苦手の方のために、最後に軽く重要な単語のおさらいをしよう。「素数」と「デカルト座標」についてだ。「素数」については知っている方が大半かと思うが(ですよね?)、劇中でも説明されるので大丈夫だろう。「デカルト座標」は聞き慣れない用語だろうが、単に「座標」と聞いてイメージするものと近いはずだ。平面の横方向をx軸、縦方向をy軸、そしてその平面の鉛直上向き方向をz軸とした座標である。…やはりピンとこなくとも気にしないでほしい。「デカルト座標」の名称は、「我思う、故に我あり」の言葉で知られる哲学者ルネ・デカルトに由来する。言ってみれば、本作で大事なのは「座標」でなく「デカルト」の方。デカルトの思想ということではなく、哲学的な部分が重要なのだ。デスゲーム作品は人の生死にフォーカスしている。本作もまさにそう。結局は生き方についての話なのだ。そして、本作で『CUBE』初体験のあなたも、もうこのジャンルからの脱出は叶わない。

【ストーリー】
目が覚めるとそこは謎の立方体=CUBEの中だったー。突然閉じ込められた男女6人。エンジニア、団体職員、フリーター、中学生、整備士、会社役員。彼らには何の接点もつながりもない。理由もわからないまま、脱出を試みる彼らを、熱感知式レーザー、ワイヤースライサーや火炎噴射など、殺人的なトラップが次々と襲う。仕掛けられた暗号を解明しなくては、そこから抜け出すことは絶対にできない。体力と精神力の限界、極度の緊張と不安、そして徐々に表れていく人間の本性…。恐怖と不信感の中、終わりが見えない道のりを、それでも「生きる」ためにひたすら進んでいく。果たして彼らは無事に脱出することはできるのか?!

【キャスト】
菅田将暉、杏、岡田将生、柄本時生、田代輝、山時聡真、斎藤工/吉田鋼太郎

【スタッフ】
原案:「CUBE」ヴィンチェンゾ・ナタリ
監督:清水康彦
脚本:徳尾浩司
コンセプトデザイン:カイル・クーパー
クリエイティブアドバイザー:ヴィンチェンゾ・ナタリ
主題歌:星野源「Cube」(スピードスターレコーズ)
製作:「CUBE」製作委員会
企画・配給::松竹株式会社
(C)2021「CUBE」製作委員会
公開:2021年10月22日(金)

公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/cube/

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