『ピノキオ』ロバート・ゼメキスが実写とCGアニメを完璧に融合！今後はこの映画がピノキオのスタンダードになる？

2022.09.18

この映画は、つまり―

あのディズニーの名作アニメが、現代的な改変を加えて実写化！
圧巻の映像！VFXならロバート・ゼメキスにお任せ！
名曲あり！アトラクション感あり！ダークな要素あり！何でもアリ！

記事を見る

◆配信中の注目作

『ピノキオ』（2022）

ディズニープラスで視聴する⇒こちら

文：屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

『ピノキオ』は誰もが知る児童文学、ディズニー・アニメだ。何の偶然か、ここ数年で三度も新たに映画化されている。2019年にイタリア映画『ほんとうのピノッキオ』、そして今年には『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』と本作『ピノキオ』として。監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などで知られるロバート・ゼメキスだ。

ゼメキスは昔からCGやVFXを多用してきた。1988年の『ロジャー・ラビット』では、同じディズニー映画の『メリー・ポピンズ』のような、実写と手描きアニメを融合させた映像が使われている。2000年代に入ってからは、『ポーラー・エクスプレス』『ベオウルフ/呪われた勇者』『Disney’s クリスマス・キャロル』とフルCGアニメ映画を立て続けに監督。『ピノキオ』では、これまでの技術をさらに発展させ、実写とCGアニメを融合させている。

CGのピノキオはまさに、ディズニーの古典アニメからそのまま出てきたような見た目をしている。だが、松でできているというその体の質感は非常にリアリティにあふれている。それでいて、動きはお馴染みのディズニー・アニメのそれなのだ。これが奇妙かつ自然で愛らしく、ピノキオの一挙手一投足から目が離せない。狂言回しであるコオロギのジミニー・クリケットもリアルになっているので、拒否反応が出る方もいるかもしれないが…。それ以外にも、トム・ハンクス演じるゼペットじいさんの飼い猫フィガロや金魚のクレオなど、他の動物もCGでありながら“いつもの”動きと表情をする。すでによく知っているストーリーでありながら、出演者により歌われる名曲群の助けもあって、画面への興味を失うことなく鑑賞できる。

途中で、悪党に騙されたピノキオがたどり着くプレジャー・アイランドの描写は、ディズニーリゾートのアトラクション感満載だ。ピノキオが乗るコースターとともに、観客は上下左右に揺さぶられる。ついでに心も揺さぶられる。見た目のきらびやかさ以外は実際のディズニーリゾートと真逆で、ポイ捨て、万引き、タダ食い、器物破損と何でもアリの悪徳遊園地だ。子どもの欲望を全て満たせる(悪)夢の場所で、ルートビアも飲み放題。ルートビア好きの筆者が子供の頃にここを知っていれば、のこのこ悪党についてきて堕落した挙げ句、ロバに変えられてドナドナされていただろう。ほっ。

すでによく知っているストーリーと言ったが、全てが同じとは限らない。『ウォルト・ディズニーの約束』でディズニーを演じていたトム・ハンクスが、現代的な改変を加えられた本作に出ているのが象徴的で、ディズニーは古典をアップデートしながら語り継いでいきたいのだろう。ゼメキスは、『ピノキオ』の物語を自らの集大成的映像で語り、星に願いをかけたようにCGのキャラクターに命を吹き込むことに成功した。ゼメキス自身も、ピノキオのごとくさぞ鼻高々だろう。