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『ナポレオン』ホアキンによるナポレオンが強烈!手に入れたかったのは権力か?名誉か?それとも妻の心か…?

◆今週公開の注目作

『ナポレオン』(2023)

文:カカオ豆

なんとも切ない運命を強いられた狂気な道化師にすっかり心を奪われた筆者は、当時劇場で『ジョーカー』を3回観た。お恥ずかしながらホアキン・フェニックスのことをちゃんと知ったのはその時が初めで、この役者やばいな!と衝撃を受けたことを鮮明に覚えている。そのやばさを超えてきたのが本作で、これは完全にホアキン・フェニックスの映画だと言っても過言ではない。

今回彼が憑依したのは英雄と呼ばれる男、ナポレオンだ。物語は、1793年フランス革命の最中、ナポレオンがトゥーロンの戦いにて活躍を果たし、英雄への階段を上り始めるところから始まる。だけど、この映画はナポレオンの功績をたどり、難しいフランス史を紐解いていくような歴史映画ではないので、世界史が苦手な方も安心していただきたい。もはや描かれる数々の戦争や歴史的事件の背景についてはほとんど説明されることはなく、“ナポレオン”という一人の人物の生き様にだけ焦点が当てられているところが、新しい。

世の中的には、「ナポレオン」=なんかすごい人、偉大な人、英雄、現代憲法の礎を築いた人…といったイメージと紐づけられがちだ。しかし、どうやら彼は次々と戦いに勝利し、ヨーロッパを支配しようと目論む傍ら、その心は妻であるジョゼフィーヌに支配されていたようなのだ!後世まで“英雄”と語り継がれる男が、である!ナポレオンはとにかく彼女にゾッコンな一方で、ジョセフィーヌはそうでもなかったから気をもんでいた。なるほど。国やヨーロッパを支配するよりも、たった一人の女性の心を手に入れることの方が難しいらしい…。
本作ではそんな2人がいびつな愛の形を織り成す姿が丁寧に描かれている。一体なぜナポレオンはジョゼフィーヌにそれほど心を奪われたのか…。それは、ジョゼフィーヌをみごとに演じたヴァネッサ・カービーを通して、想像を膨らませていただくのが良いだろう。

もちろん、監督がリドリー・スコットであるからには、映像のクオリティや迫力は期待を裏切らない。数多くの人や馬によって描かれる戦場シーンは、何人のエキストラがいるんだ!?と度肝を抜かれるし、真冬の凍った湖の中に次々と兵隊たちが沈みゆくシーンでは、思わず足がムズムズしてしまうほど戦争の恐怖を目の当たりにするに違いない。

さて、冒頭に述べたなぜホアキンがやばいかと言うと、劇中で彼が放つ存在感が強烈なのだ!明らかに他の登場人物とは異なる威厳のような何かが、画面を飛び越えて襲ってくる。恐らくその要因となっているのは表情で、単純に怖そうとか機嫌が悪そうということではなく、何を考えてるのか掴めない何とも言い難い表情をしているから、無意識に目が離せなくなる。本当にナポレオンはこんな風に別格な人物だったのかもしれない…。

ナポレオンが乗り移ったかのような彼のやばい演技といい、リドリー・スコットとのダイナミックな映像といい、本作は劇場で鑑賞することを強くお勧めする!!

 

【ストーリー】
1789年。自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットは斬首刑に処され、国内の混乱が続く中、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り皇帝にまで上り詰めた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係の中で、フランスの最高権力を手に何十万人の命を奪う幾多の戦争を次々と仕掛けていく。冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもって、ヨーロッパ大陸を勢力下に収めていくが――。フランスを<守る>ための戦いが、いつしか侵略、そして<征服>へと向かっていく――。彼を駆り立てたものは、一体何だったのか?

【キャスト】
ホアキン・フェニックス、ヴァネッサ・カービー、タハール・ラヒム、ルパート・エヴェレット

【スタッフ】
監督:リドリー・スコット
脚本:デヴィッド・スカルパ

公式サイト:https://www.napoleon-movie.jp

12月1日(金)全国の映画館で公開

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