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『ザ・ビーチ』海は全てを生み出し、全てを奪う。懐かしくも普遍的、美麗で醜悪なSFスリラーがここに誕生。

この映画は、つまり―
  • 個性的な作品が勢揃いする「未体験ゾーンの映画たち2022」の1本!
  • “美しく気持ち悪い”映像
  • 懐かしさのあるSFスリラー

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◆配信中の注目作 
『ザ・ビーチ』

「未体験ゾーンの映画たち2022」U-NEXTオンライン上映特集ページ
https://video.unext.jp/browse/feature/FET0010315

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田では毎年、未公開映画の一挙上映イベント「未体験ゾーンの映画たち」が開催される。マイナーながらも海外で高評価を受けている作品がひっそりと公開されることもしばしばで、本作もそのうちの1本であり、実に気味の悪いSFスリラーとなっている。

若きカップル、エミリーとランドルは人気のない町にあるビーチハウスを訪れる。楽しむための休暇のはずだが、生命の誕生についての研究意欲があるエミリーと、何にも興味を持てず大学を中退しエミリーの情熱を理解しないランドルの間には時折緊張感が漂う。2人だけで過ごせるはずが、ビーチハウスにはすでにランドルの父の友人夫婦が来ており、微妙な雰囲気に。そんな中、なぜか水道からは粘性の高い水が流れ、町には濃い霧が立ち込め始める。それに伴い、彼らの体調にも徐々に変化が生じていく…。

劇中では何度か、何ということのない光景がアップで映し出される。注がれたシャンパンが泡立つ様子や、ディナーに出てきたカキなど。しかし、それらをまじまじと見ていると、シャンパンの中にも微細な粒子が舞っていて、カキも微妙に動いているのが分かる。エミリーが生命の誕生について熱く語るのを聞きながらこれらのシーンを見ると、宇宙や海底などで起きている現象の映像を見せられているのかと錯覚してしまう。美しくもあるが、同時にグロテスクでもある。時間が経つごとに町を覆い尽くしていく霧も花粉に似た何かのようで、それを吸い込むとどうなるのかと、観客の嫌な予感は加速していく。

まず思い出されるのは、『SF/ボディ・スナッチャー』などの古いSFスリラーだ。同作では、宇宙から飛来した微生物が少しずつ人間と社会を変容させていく。数年前に公開されたニコラス・ケイジ主演の『カラー・アウト・オブ・スペース-遭遇-』でも、謎の隕石が周囲の環境を変貌させるという未知の恐怖が描かれていた。本作も同様のテイストであるが、エミリーの披露する有機化学の知識によって、単なるスリラーで味わえる不気味さを超えた、微生物がうごめくような、生命の持つある種の気味悪さすらも再認識させられる。

本作は感染スリラーと形容しても間違いではないが、それだけではない。登場人物が正気を失い、人間の形を失っても、このようなことは地球が誕生してから何度も起こってきたサイクルの一部に過ぎないのかもしれない。もはや、これは恐怖というより諦観…達観と言っても良いだろう。あらゆる生命を誕生させた海は、それを奪う権利も持っているのだ。もしかしたら、現実世界でも同じ事態が起きているのかも…いや、きっとすでに始まっている…“水面下”で。ちなみに、本作はU-NEXTでのオンライン上映も実施されている。外の空気を吸い込みたくなくなったなら、そちらでの鑑賞するのも良いだろう。どちらにせよ、無事でいられる保証はないが。

【ストーリー】
休暇で田舎の美しいビーチを訪れた一組のカップルと夫婦。楽しいひと時を過ごしていた矢先、あたり一面を霧が包み込む。海岸には打ち上げられたネバネバの生物、次々に正気を失い肉体が変容していく人々、無線から聞こえた謎のメッセージ――。一体このビーチで何が起こっているのか?不可思議な出来事に直面する彼らは、やがて何かに寄生された事に気付く…。果たして、極限状態に追い込まれた彼らの運命は?

【キャスト】
リアナ・リベラト、ノア・ル・グロス、ジェイク・ウェバー、マリアン・ナゲル、マイケル・ブラムフィールド

【スタッフ】
監督・脚本:ジェフリー・A・ブラウン
製作:タイラー・デビッドソン

原題:The Beach House
配給:アメイジングD.C.
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公式サイト:https://ttcg.jp/movie/0816900.html

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