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『バッド・エデュケーション』”教育”にはお金がかかる。実際の横領事件をシニカルに描いたブラックコメディ!

この映画は、つまり―
  • とんでもない実話の映画化!
  • コリー・フィンリー監督が描く独特の「ソシオパス」像
  • 悪法も法。悪い教育もある意味、教育には違いない

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◆配信中の注目作 

『バッド・エデュケーション』(2020)

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文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

『バッド・エデュケーション』は、2004年に発覚した、ニューヨークにあるロズリン高校で起きた巨額の横領事件を映画化した作品だ。アメリカでは概ね、教育レベルが高い地区ほど治安が良い。不動産価値も高く、学校が使える予算も増える。ロズリン学区の教育長フランク・タソーンと同僚のパメラ(パム)・グラッキンがその潤沢な予算からかすめ取った金額は、公立学校における横領事件の被害額ではアメリカ史上最高記録となる。

フランクとパムは、ヒュー・ジャックマンとアリソン・ジャネイが演じている。巨額の横領と聞くととんでもない悪党を思い浮かべるかもしれないが、両者とも非常に人間味と仕事への情熱に溢れた魅力的な人物として描かれている。フランクは、映画の後半はともかく、前半では皆が知っているヒュー・ジャックマン像そのままだ。2人は頼れる同僚として固い絆で結ばれていたが、パムの横領が明るみに出た途端、フランクは彼女を「ソシオパス(簡単に言えば良心の呵責や責任感などが著しく欠けた人物)」と呼んで自己保身を図る。それに対してパムが返す言葉は「ここ(学校)のソシオパスは私じゃない」……。コリー・フィンリー監督は、前作『サラブレッド』でもソシオパス的要素をオリビア・クック演ずるキャラクターに背負わせた。しかし、多くの映画で描かれがちな「サイコ」で悪一辺倒な造形にはせず、フェアに扱った。言わば、「人権を与えた」のだ。だからこそフランクは複雑で知的で愚かしく、容易に観客が感情移入できるキャラクターとなっている。

「バッド・エデュケーション(悪い教育)」とは何なのか、学校の学力より先に横領金額で全米1位になってしまったフランクがその身をもって教えてくれる。まさに「反面教師」だ。しかし同時に、フランクは正真正銘の優秀な教師でもある。多額の学校予算をかけた大規模工事の記事を任された、やる気がない新聞部員のレイチェルを「真のジャーナリストは何を書いても”物語”にする」と励まし、その気にさせてしまったのは彼自身なのだから……。本作は、あまりに皮肉な話で観客を笑わせるだけでなく、正しいジャーナリズムのあり方についても”教育”してくれる。

【ストーリー】
ニューヨーク州、ロズリン学区の教育長・フランクと同僚のパムは、学区を全米第4位の成績に導いた功績を認められ、多額の運営資金援助を受けていた。しかし、誰からも親しまれているフランクには裏の顔があった。学生新聞部の部員が怪しい臭いを嗅ぎ取り…。

【キャスト】
ヒュー・ジャックマン、アリソン・ジャネイ、レイ・ロマーノ

【スタッフ】
監督:コリー・フィンリー

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