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『MERCY/マーシー AI裁判』あちらが立てばこちらが立たず。弁が立たねば墓が立つ。

この映画は、つまり―
  • AIでサクサク処刑新時代
  • ほぼ逆転不可能な「逆転裁判」
  • 情けは人のためならず

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◆配信中の注目作

『MERCY/マーシー AI裁判』
配信先:U-NEXTAmazonプライム

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

映画の中では数十年前からAIが人類になりかわる恐怖が描かれてきたが、いよいよそれが現実化してきている実感がある。『ターミネーター』のようなAIと人類の核戦争という形では(今のところ)なく、もっと日常的なスケールで。仕事を肩代わりさせた結果どんどん仕事を奪われているのはある種当然のことではあるが、人間にしか生み出せないと思われていたアートの分野まで脅かされているのは何という皮肉だろう。AIが生成した映像は精巧ながらもまだ奇妙な部分が残っているので、今日の時点ではまだ人間が勝っているとしても。まあ、時々人間が作ったはずなのにAI製にしか見えない理解しがたい映画も存在するが、それは一旦置いておいて……。

さて、本作『MERCY/マーシー AI裁判』では、AIが裁判で用いられ始めた近未来が描かれている。確かに、現在の裁判制度では刑が確定するまでに長い時間がかかるし、発生する犯罪の全てをスムーズに処理できているとは言えない。AIを導入すれば、社会や被害者にとってもメリットが大きいのかも知れない。実際、劇中の世界ではたった90分で裁判が終了する。なるほど、これは3日間で裁判が終わる世界観の大人気ゲーム「逆転裁判」よりも圧倒的にスピーディーだ。しかし同作の世界と同じで、この利便性の代わりにとんでもないものが失われている。人権だ!

普通の裁判では、証拠がなく罪を疑われている段階の被告人はもちろん無罪として扱われる。最終的に証拠不足のため検察が有罪を立証できなければ、被告人は無罪だ。この推定無罪の原則が失われる、即ち常軌を逸した上記2作品の“推定有罪”のルールに則るとなると、疑いをかけられた人間は自らの無罪を証明しないと自動的に有罪が確定となる。完全に悪魔の証明だ。しかも、つまり本作ではそれを90分でクリアしなければならないということ。何と、この世界では人命を賭けてリアル「逆転裁判」をやっているのだ! 何と恐ろしい。主人公を演じるクリス・プラットはよく分からない内に妻殺しの容疑をかけられており、レベッカ・ファーガソン演じるAI判事を証拠で説得しなければ死刑となる。この90分がほとんどリアルタイムで描かれるので、感覚としては本当にタイムリミットありのデスゲームに近い。どこが「マーシー(情け)」だ! どう考えてもノー・マーシーだろ!

監督のティムール・ベクマンベトフはジェームズ・マカヴォイ、アンジェリーナ・ジョリー共演の『ウォンテッド』で有名(プラットも出演)だが、最近では監督作よりプロデュース作品の方が印象的だろう。SNSホラー『アンフレンデッド』にインターネット・スリラー『search/サーチ』……、ストーリーがPC等の画面上で展開するので、画面に溢れかえる情報を観客自身が取捨選択しながら鑑賞しなければならないタイプの作品だ。必然、テンポも非常に速く、本筋以外の疑問にとらわれるとすぐに置いて行かれる。誰がこんなAI裁判を法制化したのか、なぜ無罪証明の方法として他人のプライベート動画にアクセスし放題というルールにしたのか、本当に侵害されているのは一体誰の人権なのか。そんなことを気にしていると、観客まで本作でファーガソンが見せる非人間的な圧巻の“無”表情のごとくになってしまいかねない。物事は天秤だ。どちらかが重すぎればもう一方はお手上げになってしまう。バランスをとるため、人生には細かい問題を許す寛大な心が必要なのだ。そう、マーシーが。

【ストーリー】
凶悪犯罪が増加し、厳格な治安統制のためにAIが司法を担うことになった近未来。ある日、敏腕刑事のレイヴンが目を覚ますと、妻殺しの容疑で〈マーシー裁判所〉に拘束されていた。冤罪を主張する彼だったが、覚えているのは事件前の断片的な記憶のみ。自らの無実を証明するには、AIが支配する世界中のデータベースから証拠を集め、さらにはAI裁判官が算出する”有罪率”を規定値まで下げなくてはならない。無罪証明までの〈制限時間は90分〉。さもなくば〈即処刑〉――。

【キャスト】
クリス・プラット、レベッカ・ファーガソン、カーリー・レイス、アナベル・ウォーリス、クリス・サリヴァン、カイリー・ロジャーズ 他

【スタッフ】
監督:ティムール・ベクマンベトフ

 

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