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『バイオレント・ネイチャー』どうにも腹の虫が治まらない。虫の音も鳴り止まない。

この映画は、つまり―
  • 血とともにマイナスイオンを浴びろ! 前代未聞の森林浴ホラー
  • 意外と日本人の精神性にピッタリ!?
  • 一息つきたい時にこそ

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◆配信中の注目作

『バイオレント・ネイチャー』
配信先:U-NEXT

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

本作『バイオレント・ネイチャー』は予告もポスターも、どこからどう見てもホラー……らしい。「らしい」と言ったのは、観客の感想におよそホラー映画に似つかわしくない言葉があまりに多く登場するからだ。「癒される」「リラックスできる」「お散歩映画」……挙句の果てには、海外でも公式ポスターでも「アンビエント・スラッシャー」などという聞いたこともない、いや常識的に考えて存在するはずのない謎のジャンルで呼ばれている。同時に非常にグロテスクでもあるらしく、情報が完全に錯綜している。果たして彼らは何を目撃したのだろうか? 断言しよう。観客は作品の難解さのために混乱、あるいは揶揄していたのではない。それら全てが紛うことなき真実であり、矛盾せず両立しているのだ。

残忍な殺人鬼が刃物を用いて若者を殺して回る、言ってしまえばそれだけの映画ではある。スラッシャーというジャンルど真ん中の内容だ。間違いなく、ホラーらしい要素ばかり集まっている。しかし、だ。いざ見てみると、不思議なことに「これは本当にホラーと呼べるのか」と自問自答せずにはいられない。深い森へ遊びに来た若者たちが曰く付きのペンダントを見つけて持ち去ってしまったために、過去の大量殺人事件に関係するらしい死体・ジョニーが怨霊のように蘇り、ペンダントを探してゆっくり森を彷徨いながらひとりずつ若者を殺していく。これがあらすじだが、通常のホラーと異なりほとんど殺人鬼視点で描かれるのだ! 森版『イット・フォローズ』を“それ”視点で撮った感じである。

ジョニーの過去は最低限しか描かれないものの、ペンダントは彼にとって大事な品だったのが十分に伝わってくる。本作は、もしかしたら日本人にこそ受け入れやすい作品かもしれない。「この恨み、晴らさでおくべきか」と死者が化けて出る幽霊譚のようで、詩情さえ感じるほどだ。対して若者たちは私情で利己的な行動ばかりとり、品性の欠片もない(通常のホラーと同じか)。結果、観客の脳は殺人シーンで恐怖を覚えるのではなく、むしろスカッとできるように作り変えられる。ウォーキング、殺人。ウォーキング、殺人。本作はジョニーが“森林浴”しながら若者たちを探しているだけのシーンがほとんどで、ショックシーンすら怖くないがゆえ、“癒される”のだ。よく、「日本人に馴染み深い虫の声は、外国人には雑音としか認識されない」という話がまことしやかに語られるが、BGMもセリフもほとんどない本作は虫と鳥の鳴き声に満ちている。人の泣き声など聞こえないも同然だ。

 

ここで詳しくは言わないが、通常のホラー映画らしいシーンも登場する。これまで、マイナスイオンと滝の水しぶきよろしく血飛沫を浴びながら涼み安らぎに身を任せていた観客は、ここではじめて言いようのない極度の不安に襲われる。だが、幽霊譚のオチにふさわしいラストシーンに納得。またもスッキリさせられるのだ。息を詰めるのではなく息を抜くための、世にも不思議なホラー映画。さあ、人間の醜い性(ネイチャー)など葬り去って、自然の中へと歩き出そう。

【ストーリー】
深い森の奥、朽ちた火の見やぐらに横たわるのは、60 年前の凄惨な事件に起因する怨念の亡骸――ジョニー。その死体とともに封印されていたペンダントがある日、何者かの手によって持ち去られる。やがてジョニーは奪われた遺物を取り戻すべく蘇り、若者たちに標的を定める。不死のゴーレムと化した彼は、冷酷かつ静かに殺戮を遂行していく。だが、その怒りは彼らにとどまらない。ジョニーの行く手を阻むすべての存在に、“死” という名の償いがもたらされる─―。

【キャスト】
ライ・バレット、アンドレア・パヴロヴィック、キャメロン・ラヴ、リース・プレスリー、リアム・レオーネ 他

【スタッフ】
監督・脚本:クリス・ナッシュ

 

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