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『ワン・バトル・アフター・アナザー』 過去の闘争から長年の逃走。そして目下の使命は本物の「父さん」!?

この映画は、つまり―
  • ダメダメディカプリオ版『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
  • チェイスからの困り顔デカプー!  カーチェイスからの泣き顔デカプー!!
  • 重厚なPTA作品のファンにもオススメ

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◆配信中の注目作

『ワン・バトル・アフター・アナザー』
配信先:AmazonプライムAppleTVhulu

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

昨年映画ファンたちを賑わせた、レオナルド・ディカプリオ最新作である『ワン・バトル・アフター・アナザー』が早くも配信されている。筆者も気になりながら昨年中に見られなかったのでこれを機に鑑賞したが、意外や意外、非常に軽やかな映画だった。上映時間が2時間41分もあるのにもかかわらず! 筆者がポール・トーマス・アンダーソン監督(通称PTA)のファンになったのは、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』と『ザ・マスター』の重厚さにノックアウトされたからだ。特に熾烈な石油の利権争いを描いた『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』は、テーマ同様に黒く粘りつくような“重さ”が非常に印象的な作品で、それまで(もしかしたら現在までも)似た映画を見たことがなかったのでずっしりとした衝撃を受けた。PTSDの元軍人に対するカルト団体の“セラピー”を描いた『ザ・マスター』では、ホアキン・フェニックスの鬼気迫りすぎている演技に打ちのめされた(次作のずっと意味不明な『インヒアレント・ヴァイス』には別の意味で驚愕した)。

それら以前には『ブギーナイツ』のような軽やかなものもあったが、本作はそちらの方向性が好きな方はもちろん、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』などが好きな方でも、というかPTAのPの字も知らない方にも誰にでもオススメしやすい、シンプルな娯楽作だった。カーチェイスアクションと紹介される場合が多いだろうけれども、基本的にはオフビート・コメディだ。主演は、今となっては「レオ様」などと呼ばれていたのが信じられない我らがデカプーことレオナルド・ディカプリオ。

彼が演じているのはかつて革命に身を投じたが、同志の女性と恋に落ち娘が生まれ娘一筋になった結果生粋の戦士だった恋人に去られ、今となっては飲んだくれのしょぼくれ親父と成り果てたボブ。父親の威厳などカケラも残っていないボブと、彼を全く尊敬していない娘ウィラは警察に見つからないようふたりで隠れて暮らしていた……というのが冒頭だ。ここまではまだ良い。この後がおかしくて、ある日、かつてボブの恋人(黒人)に受けた屈辱と快感が忘れられない白人至上主義者の軍人ロックジョーがボブたちを見つけ、追いかけてくるのだ! 革命グループ時代の仲間を頼ろうにも肝心の合言葉が思い出せないダメボブは、果たしてクレイジー軍人の魔の手から娘を守り、立派な父親へと成長できるのだろうか!?

あらすじで脱力してしまうものの、全編にわたって常にある程度の緊張感が持続する作りになっている。ボブたちがA地点からB地点に逃げるとロックジョーはすぐにA地点に辿り着き、ボブたちがC地点に着くとロックジョーはB地点に到達、というように将棋の歩兵で追いかけっこをしているような展開が続くからだ。颯爽としていない『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』と言っても過言ではない。ボブを助ける空手のセンセイ役でベニチオ・デル・トロが出演しているが、すっかり渋い顔になりたまにデル・トロにも見間違えるデカプーは常にカッコ悪く、常にかわいい。そんなデカプーに対して、ウィラ役の新人チェイス・インフィニティ(ピッタリすぎる名前だ)はあどけないながらも強い意志をたたえた目をしており、革命家の血ゆえかボブに頼らず自力で戦っていくキャラクター像にハマっている。追って追われてのシンプルな物語がいつものPTAらしいテーマに収束されていくのは見事で、鑑賞後感は実に爽やか。人生は終わりなき闘いだ。こういった映画が、立ち上がる強さをくれるのだ。

 

【ストーリー】
最愛の娘と平凡ながらも冴えない日々を過ごす元革命家のボブ。突然娘がさらわれ、生活が一変する。異常な執着心でボブを追い詰める変態軍人“ロックジョー”。次から次へと襲いかかる刺客たちとの死闘の中、テンパりながらもボブに革命家時代の闘争心がよみがえっていく……。逃げなければ生き延びられない。だが、娘を救わなければ、父では居られない……!! ボブのピンチに現れる謎の空手道場の“センセイ”の手を借りて、元革命家として逃げ続けた生活を捨て、戦いに身を投じたボブと娘と運命の先にあるのは、絶望か、希望か、それとも――。

【キャスト】
レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、チェイス・インフィニティ、タヤナ・テイラー、レジーナ・ホール 他

【スタッフ】
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン

 

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