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『コピーキャット』(1995)猫は虎の心を知らず。鏡に映るは猿に似て。

この映画は、つまり―
  • 配信サービスは時代に埋もれた映画の救世主?
  • 同年公開の『セブン』と対を成す、隠れた傑作サイコサスペンス
  • 「殺人」を仮にアートとするならば

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◆配信中の注目作

『コピーキャット』(1995)
配信先:U-NEXT、Netflix、ディズニープラス

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

今やレンタルビデオ業界は衰退し、自宅で映画を見るなら配信サービスを使う方がほとんどになってしまった。レンタルビデオ屋に足繁く通い映画を借りまくり、または何を借りるでもなくその店舗に置いてあるレアな映画を探し出すのを日課にしていた筆者からすると当然寂しい。しかし、今となっては逆に配信サービスにしかできない役割もある。筆者は、見たい映画がすぐに見られること以上に、それをありがたく思っている。要するに……、映画の中には、VHS時代に取り残されたものが数え切れないほどあるのだ。DVD、ましてやBlu-rayレンタルなどされておらず、鑑賞の機会に巡り合うのが絶望的な作品たちが。先日劇場公開された『モルグ 屍体消失』などもそうで、一握りの“運が良い”映画だけが今の時代に蘇る。配信サービスは、時折そういった作品をいつの間にか取り上げてくれていたりするのだ(最近、複数のピーター・グリーナウェイ監督作が配信されているのを見つけて仰天した)。ただ、特に宣伝されないので何千、何万という配信作品の中にやはり埋もれがちではあるのだが……。

本作『コピーキャット』も、運の良い映画だったようだ。記憶違いでなければDVDレンタルはされておらず、VHSかDVD(日本版は既に廃版)を購入するしか見る方法がなかったと思うが、筆者も同作について気になりながらも何年も見られないままだったのが、これまた運の良いことに配信されているのを先日発見できた。せっかくなのでここで紹介させていただこう。本作はあの『セブン』と同じく1995年に本国公開(『セブン』より1か月遅い)の映画で、ジャンルも同じサイコサスペンスだ。主演はシガニー・ウィーヴァーとホリー・ハンターであり、ネームバリュー的にはブラッド・ピット&モーガン・フリーマンにも全く負けていないのに、『セブン』は映画史に残りこちらは時代に埋もれてしまった印象がある。しかし、実際見てみるとこちらも中々の力作だった。面白いのが、偶然のはずなのに『セブン』と対を成しているように感じられるところだ。

「コピーキャット」とは、模倣犯を指す。ウィーヴァー演じる犯罪心理学者のヘレンは、過去に心理を分析したシリアルキラーのカラムに殺されかけた経験がトラウマとなり、自宅の外に出られない広場恐怖症に苦しんでいる。それから1年以上経った頃、カラムは死刑判決を受け檻の中なのになぜか同じ手口の殺人事件が起こり始めるのだ。話自体はもちろん『セブン』とは違うが、本作はミステリーではないので途中で犯人をバラしてしまったり、何かになぞらえた猟奇的犯行が連続したりする点で共通している。そして全く逆なのが、犯人に対峙するのが男性ふたりでなく女性ふたりである点だ。ハンター演じる女性刑事のMJは最初、不安定な言動をするヘレンを見くびっているが、確かなプロファイリング能力に気がついて頼りにし始める(本作のハンターは非常にキュートだ)。本筋とは直接関係ないところでこのふたりは恋敵にもなるのだが、内容が散漫というよりはキャラクターを多面的に描写しているとして筆者は好感を持った。

映画は基本的にヘレンの精神状態に寄り添って作られており、彼女にどう世界が見えているのかがダイレクトに観客に伝わるようになっている(時折犯人の気色悪い覗き視点になる)。PTSDの人はフラッシュバックに苦しむが、本作ではその設定からヘレンは“実際に”過去を再体験させられるわけで、彼女への共感は容易だ。反対に、どこまでもこちらの共感を拒むのが犯人。実在するどのシリアルキラーにも言えるが、なぜ殺人を犯すのか、その内面のミステリーは全く解ける気がしない。ただし、タイトルでネタバレされている通りこの犯人はただのコピーキャット。語弊を恐れずに、オリジナルのシリアルキラーを“アーティスト”とするならば、コピーキャットは先人の猿マネに終始する独創性のカケラもないエピゴーネンに過ぎない。猟奇殺人がテーマでありながら、それ以上の何かに言及しているようにも思えるところも、非常に『セブン』らしい。作品の質感は全く違えど、本作も素晴らしい作品だった。配信作品は知らぬ間に配信が開始され、終了してしまいがちだ。再び時代に埋もれさせてしまわぬよう、今のうちにチェックしておこう。

【ストーリー】
連続殺人鬼に殺されかけた犯罪心理学者のヘレンは、そのトラウマから外界を怖がり自宅に閉じこもって生活していた。事件から1年後、殺人鬼は檻の中にいるはずなのに同じ手口の殺人事件が起こり始める。そして、警察の捜査に協力するヘレンの身に犯人の魔の手が徐々に迫り……。

【キャスト】
シガニー・ウィーヴァー、ホリー・ハンター、ダーモット・マローニー、ウィリアム・マクナマラ、ハリー・コニック・Jr.、J・E・フリーマン、ウィル・パットン、ジョン・ロスマン 他

【スタッフ】
監督:ジョン・アミエル

 

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