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『映画版 変な家』この映画……何か変……。

この映画は、つまり―
  • この間取り……何か変……。
  • この登場人物たち……何か変……。
  • この演出……何か変……。

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◆配信中の注目作

『映画版 変な家』

配信先:Prime Video

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ホラー好きの方は、筆者を含め、おそらくその多くが怖がりだろう。逆説的に聞こえるかもしれないが、甘みを感じない者が甘味を好きになることがないのと同じく、恐怖を感じやすいからこそホラーが好きなはずだ。まさに「怖いもの見たさ」が行動原理なのがホラー好きなのである。そしてホラー好きは時に、恐怖を自給自足し始める。本当かどうか分からない不確かな事柄について勝手にあれこれ思考を巡らせたあげく、勝手に怖くなってしまうのだ。そんな習性を持つ我々に持って来いなコンテンツが、YouTuber・雨穴によってウェブサイト「オモコロ」に投稿された記事と、YouTube動画「【不動産ミステリー】変な家」だった。ありふれて見える物件の間取り図の中にある、使途不明の奇妙なスペース。動画では、なぜその空間が作られたのかをどんどん不穏な方向に推測していき、最終的には真相が分からないまま終わる。すっきり解決しないのが逆に、都市伝説のような不気味な印象を残す。

オリジナル動画はその後雨穴本人によって小説化され、それがこの『映画版 変な家』となった。冒頭、本編に入る前に流れる、本作についてのCMのような映像(これがすでに怖い)で、4章構成だった原作小説に対して映画は5章的な立ち位置の作品であると語られるが、筆者のようにオリジナル動画のみを見ている方にとってもそう感じられるだろう。動画での、その家は殺人に用いられていた事故物件ならぬ“事件物件”だったのではないかという想像のその先に、実際に踏み込んでいくからだ。

本作は、「変な家」というタイトルにオマージュを捧げるように「変な映画」になっている。まず、先述の「踏み込んでいく」というのは比喩表現ではない。主人公である、スランプに陥った動画クリエイター・雨男こと雨宮は悪徳マネージャーに唆され、再生数稼ぎのため売りに出されている実際の「変な家」に無断で忍び込むのだ。ここで我々観客は、この映画に最初から騙されていたことに気づく。本作の登場人物たちは我々とそう変わらない人間に見えるが、実は大きく乖離した感覚を持っていたのだ。他にも、燃え盛る松明を持ちながら木造の家にお邪魔する男たちなどが登場する。思考が理解できない人間ほど怖いものはない。何はともあれ、雨宮は、「変な家」と関わりがあるらしい謎の女性から依頼を受け、オリジナル動画にも登場する設計士・栗原さんとともに彼女の“家”のルーツに迫っていく。オリジナル動画が、およそ映画向きとは思えない小さなスケールだったのに対し、本作では映画らしく規模が拡大されている。

 

演出や編集も独特……、いや、本作にならうなら“変”だ。伏線だと思ったものが全く回収されないダミーだったり、「人間が怖い」系と思わせながら、雨宮が録画した映像が不自然に乱れるオカルト的なシーンを入れホラージャンルを混乱させようとしていたりと、なかなかアヴァンギャルドな作りになっている。大まかにストーリー展開は予想できたとしても、「なぜそうなるのか」を予想できる方はまずいないだろう。“常識”など、単なる思い込み、砂上の楼閣に過ぎないのかもしれない。安定しているはずの地盤が揺らぐことほど恐ろしいものはない。何も確かでない本作において、間違いないのはただひとつ。雨宮、そのマネージャーとは早く“手を切った”方が良い。もちろん左手を。

【ストーリー】
“雨男”の名前で活動する、オカルト専門の動画クリエイター・雨宮は、マネージャーから、引っ越し予定の一軒家の間取りが“変”だと相談を受ける。そこで雨宮は、自身のオカルトネタの提供者である、ミステリー愛好家の変人設計士・栗原さんにこの間取りの不可解な点について意見を聞いてみることに……。次々と浮かび上がる奇妙な“違和感”に、栗原さんはある恐ろしい仮説を導き出す……。そんな矢先、ある死体遺棄事件が世間を騒がせる。その現場は、なんとあの【変な家】のすぐ側だった。事件と家との関連性を疑った雨宮は、一連の疑惑を動画にして投稿することに。すると、動画を見た「宮江柚希」なる人物から、この家に心当たりがあるという連絡が入る。柚希と合流したことで、さらに浮上する数々の謎。そして新たな見取り図。やがて二人は、事件の深部へと誘われていく――。紐解かれていく間取りの謎の先に、浮かび上がる衝撃の事実とは――。

【キャスト】
間宮祥太朗、佐藤二朗、川栄李奈、長田成哉、DJ松永、瀧本美織、根岸季衣、高嶋政伸、斉藤由貴、石坂浩二 他

【スタッフ】
監督:石川淳一

 

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