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『室町無頼』これは時代劇の皮をかぶったアウトローたちの生存劇だ!

この映画は、つまり―
  • 「戦国以前」の混沌を生きる、知られざる男たちの記録
  • アウトロー集団の人間ドラマとしての濃度
  • 見応えあるアクションと、血の通った演出

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『室町無頼』

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時代劇というジャンルは、今となっては“伝統”の側に置かれてしまった。着物と刀と武士道、決まりきった様式美の中に閉じ込められて、「現代の観客には届きにくい」と言われることもしばしば。だが、『室町無頼』は違う。これは、そんなジャンルの古びた看板を引き剥がし、地面に叩きつけるような一作だ。

監督は入江悠。『SR サイタマノラッパー』で時代の空気を切り裂き、『22年目の告白』『AI崩壊』などを手がけてきた作家が、2025年、満を持して放つチャンバラ時代劇である。主演は大泉洋。飄々としたイメージの強い彼が、この映画では泥臭くて剥き出しの男・蓮田兵衛を演じている。

時代は応仁の乱の直前。幕府の権威はガタガタで、中央も地方も秩序が崩れ、人々は日々を生き延びるのに必死だった。そんな混乱の時代に登場するのが、“無頼者”と呼ばれるアウトローたちだ。彼らは主君を持たず、武士でも農民でもなく、組織にも属さず、それでも人間らしく生きようとする。大泉演じる兵衛は、そんな無頼者たちを束ね、自分たちの手で世直しを始めようとする。

「戦国以前」の混沌を生きる、知られざる男たちの記録

本作の最大の特徴は、まだ「戦国」の名前すら定まっていない、室町後期という不安定な時代にスポットを当てている点だ。

刀を抜けば命を奪うしかない。かといって、黙っていても餓え死にする。誰もが自己責任で命を繋いでいる時代に、蓮田兵衛はあえて一揆という形で「共に生きる道」を模索する。

彼のモデルとなった人物は、実在の可能性こそあれ、詳しい記録は残っていない。だが、こんな人物がいてもおかしくはなかった。そう思わせる説得力が、映像から滲み出ている。京都の街は陰鬱で、疫病の気配が充満している。加茂川に死体が浮かび、弱き者たちがただ踏みにじられていく。そうした地獄の風景を、ドラマではなく事実として見せきる撮影と美術の力も大きい。

アウトロー集団の人間ドラマとしての濃度

兵衛が拾うのは、世の中からあぶれた者たちばかりだ。家族を失い孤独に生きていた青年・才蔵(長尾謙杜)。敵方に与するも、かつては兵衛と並び立っていた骨皮道賢(堤真一)。

登場人物たちは、清廉潔白ではない。それぞれに事情があり、憎しみや迷いを抱えている。一揆はあくまで手段であり、そこに至るまでの過程で仲間たちは衝突し、離反し、そしてまた結び直される。特に兵衛と道賢の過去が明かされていくにつれ、物語は単なる対立構造を超え、「それぞれの選んだ生き方の違い」を描くものになっていく。

善悪ではなく、選択の問題。そう言い切れる強さが、この映画の人間関係にはある。

見応えあるアクションと、血の通った演出

殺陣は派手さよりも実感重視。刀を抜けば命のやりとりが始まるという緊張が、画面全体を支配している。斬れば終わりではなく、斬るまでの逡巡、斬った後に残るものまで描いている。

特に終盤の一騎打ちは、型の美しさではなく、動きの“重さ”で勝負している。どちらが勝っても痛みが残るような、引き裂かれるような戦いだ。

演出面では、背景の使い方も印象的だ。風景はどこまでも荒れており、そこに立つ人間の生気がくっきりと浮かび上がる。生と死の境界があいまいな時代だからこそ、そこに生きる者たちの選択が際立つ。

【ストーリー】
時は室町、“応仁の乱”前夜の京(みやこ)――。大飢饉と疫病の連鎖、路上に重なる無数の死骸。そんな混沌の世に風の如く現れ、巨大な権力に戦いを挑んだ者たちがいた・・・。蓮田兵衛(はすだひょうえ)――日本史上、初めて武士階級として一揆を起こし、歴史書にただ一度だけその名を留める男。本作は彼の元に集結した「アウトロー=無頼」たちの知られざる戦いをドラマチックに描く。空前の一揆を巻き起こす無頼たち、ラストはたった9人で幕府軍に挑む。勝率ゼロに等しい無謀な戦い、その勝機と狙いとは!?

【キャスト】
大泉洋、長尾謙杜、堤真一、松本若菜、柄本明、北村一輝 他

【スタッフ】
監督・脚本:入江悠

 

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