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『アナザー・シンプル・フェイバー』チン、とグラスが鳴ったなら、それは試合開始のゴング。

この映画は、つまり―
  • 毒っ気たっぷりオシャレミステリー・コメディ再び
  • 二重の意味での演技合戦
  • さらなる続編も作れそうなポテンシャル

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◆配信中の注目作

『アナザー・シンプル・フェイバー』

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

まず先に言っておくと、本作『アナザー・シンプル・フェイバー』は前作『シンプル・フェイバー』を見ていないとおそらく楽しめない。前作を知らずとも楽しめる続編というのは存在するが、本作の場合は前作の内容を隅々まで覚えておけば面白さが何倍にもなる。鑑賞済みでも筆者のように内容を忘れている方は、復習をしておくべきだ……いや、ぜひ復習しておいていただきたい。断る必要性もないくらいの、筆者からの“ささやかなお願い”だ。きっと前作も、間違いなくあなたを楽しませてくれる。

さて、では前作を見ていないか忘れてしまった方に向けて、少しネタバレあり(不可抗力だ)で簡単に振り返ろう。Vlogで全国のママたちに人気のシングルマザーである主人公ステファニーは、ファッションセンス抜群で超クールでミステリアスなエミリーとママ友になった。しかし突然エミリーは失踪し、ステファニーはVlogにて途中経過を発信しながら、素人探偵としてエミリーを探し出そうとする……というストーリーだった。かくかくしかじかで事件は解決、その後ステファニーは本格的にママ探偵となって他の幾つもの事件に関わっていくのだが、そうしてさらに有名人になったところから本作は始まる。ステファニーはエミリーと思いも寄らない再会をし、イタリア・カプリ島で行われる彼女の結婚式に付添人として招待されるのだ。失踪したはずのエミリーがなぜここにいるのかというと、色々、本当に色々あった結果なのだが、それは前作で確かめてほしい。とにかく、ここからはまさにカプリッチョ(狂騒曲)、気まぐれで自由闊達なストーリーが展開していく。前作同様に。

本シリーズで特に面白いのはまずキャラクターだ。ステファニー役のアナ・ケンドリックとエミリー役のブレイク・ライヴリーが非常に魅力的で、キレッキレの演技の応酬が楽しめる。本シリーズの登場人物は決して一面的に描かれず、誰しもに隠されたとんでもない顔があるのだが、俳優の演技とキャラクター自身がストーリー中でしている演技が重なり合って何が本当なのかが分からなくなっていくのだ。それでいてテイストは非常にポップでオシャレ、どこまでも軽い口当たりで、クスクス笑いながら謎解きを楽しめる。血の代わりに赤ワインが飛び散りそうなほどだ。同時に、コメディはコメディでもブラックコメディ色が強く、一言で言うなら甘い毒のようなもの。ステファニーとエミリーは友人(フレンド)でありながら攻撃し合う敵(エネミー)、いわゆるフレネミー的関係で、それが常に緊張感を生んでいる。

再会したエミリーは三つ子の魂百までといった様子で、相変わらずステファニーを好いているのか嫌っているのか、心の内が読めない。近づいては遠のいていく振り子のようだ。そのため前作同様ストーリーは何度も予想外の方向に転がり、その度に観客を驚かせ笑わせる(だが実際、笑っている場合なのだろうか?)。探偵ものという設定から、やろうと思えばまだまだ続編は作れるだろう。正直言って、この毒は病みつきになる。ステファニーの周りでまた誰かが死ぬのだろうが、まあ仕方ない。せめて、その墓にはドライマティーニを手向けよう……。

【ストーリー】
ステファニー・スマザーとエミリー・ネルソンと再会し、エミリーとイタリア人富豪との豪勢な結婚式が執り行われるイタリアの美しい島カプリへ向かう。華やかなゲストたちも加わり、マリーナ・グランデからカプリの町の広場へ向かう道よりもはるかに入り組んだ殺人、裏切りの予感が……。

【キャスト】
アナ・ケンドリック、ブレイク・ライヴリー、ヘンリー・ゴールディング、アリソン・ジャネイ、ミケーレ・モノーレ、エレナ・ソフィア・リッチ 他

【スタッフ】
監督:ポール・フェイグ

 

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