MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『セキュリティ・チェック』その荷物はチェックするな。代わりにお前をチェックしているぞ。

この映画は、つまり―
  • 新たなるクリスマス・サスペンス映画の傑作!
  • やる気のなさそうなタロン・エジャトンは最高!
  • 逆に、新年一発目に見るのがオススメ!

記事を見る

◆配信中の注目作

『セキュリティ・チェック』(2024)

Netflixで視聴する⇒こちら

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

新年明けて早々だが、少し時間を戻そう。――さあ、今日はクリスマスイブ。お坊さんも走れば、人々も今は遠き我が家に帰ろうと飛行機へ走って乗り込む時期だ。……まあまあ、本作を紹介するタイミングが少し遅くなってしまったことは筆者も十分理解している。でも毎日がホリデーなのは悪い気分じゃあないでしょ? 何はともあれ、走り回っているのは空港職員も同じ。今回取り上げるのは、昨年末からNETFLIXで配信が始まった、『キングスマン』のタロン・エジャトン主演の空港サスペンス、『セキュリティ・チェック』だ。

エジャトンが演じるのは、ロサンゼルス国際空港にて機内持ち込み手荷物をチェックするTSA(アメリカ運輸保安局)の運輸保安官イーサン。彼は、自分の仕事に真剣になれないでいる。元々警察官になりたかったのに警察学校の試験に落ち、それから何事にも意欲がなくなってしまっているのだ。しかし恋人の妊娠が分かり人生の岐路に立たされて、イーサンは重い腰を上げ昇進を目指す。これから人生上向き、と思ったら……誰かの落とし物のイヤホンから謎の男の声がする。「ある荷物をチェックなしで機内に持ち込ませてほしい。さもなければ君の恋人を殺す」と……。試練は、ようやくやる気を出した頃にやってくる。イーサンは犯人から指示をこなすだけの木偶の坊になるよう要求され、クリスマスの賑わいの中で誰にも打ち明けられない孤独な闘いが始まる。

本作はかなりの視聴数を稼いでいるが、それが全く不思議ではないくらいよく出来ている。イーサンが警察官のごとき正義感を発揮すれば恋人とお腹の子どもが死に、家族愛を発揮すれば旅客機の乗客全員が死ぬ。イーサンの一挙手一投足、個人情報まで犯人に筒抜けの中、どうすれば両方を守り抜くことができるのか? 筆者は、空港を駆け回り、危険物が入ったキャリーバッグを追いかけベルトコンベアの上で七転八倒するエジャトンを見て、『ミッション:インポッシブル/デッド・レコニング PART ONE』の空港のシークエンスを思い出した。もちろん、名前も同じイーサンであるし。まさに、こちらのイーサンが挑むのも“不可能なミッション”だ。

『キングスマン』の頃からふてくされた表情が非常に似合うも悪い人間ではなさそうなエジャトン(失礼)。本作は、そんな彼をとことん追い詰めていく。犯人からのミッションをこなすためには、同僚も上司も恋人も騙し、不当なそしりに耐えなければならない。クリスマスの精神が施しというのなら、自らの身も心も犠牲にして人々を救おうとする彼は本物のヒーローだ。見ているとこちらまでだんだん苦しくなってくるが、脚本が素晴らしく次から次に事態が転がっていくので、どちらにしても息つく暇がない。果たして、イーサンが行き着く先は?

先ほどクリスマス気分になっていただいたばかりだが、新たなクリスマス映画の代表作となれそうな本作は、むしろ新年に見た方が良いかもしれない。本作の原題は『Carry-On』、名詞だと機内持ち込み手荷物を意味するが、動詞にすると違う意味になる。「めげずにやり続ける」だ。極上のサスペンスであると同時に、くじけそうになりながらも頑張っているあなたの背中を押す一作になるだろう。今年、大空に飛び立てることを願って!

【ストーリー】
クリスマスイブの空港で非情な二者択一を突きつけられた運輸保安官の闘いを描く、アドレナリン全開のサスペンス映画。

【キャスト】
タロン・エジャトン、ソフィア・カーソン、ジェイソン・ベイトマン 他

【スタッフ】
監督:ジャウム・コレット=セラ

 

★配信エンタの過去記事はこちら

『終わらない週末』神が世界を創造し終えた週末から世界が終わっていく。世にも静かで美しいアポカリプティック・スリラー。

『PIGGY ピギー』彼は悪魔の殺人犯、それとも白馬の王子様?これはホラーかラブストーリーか。

『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』地の果てでひとつ、またひとつと個々の世界が終わっていく。Z世代の探偵は世界の崩壊を止められるか?

『レンフィールド』”虫食い下僕”ニコラス・ホルトVS”パワハラドラキュラ”ニコラス・ケイジ!ニコラス対決を制するのは誰だ!

『ザ・キラー』“完璧”は時に人を退屈させる。しかし“完璧”に生きられる人間などいない。

バックナンバー