MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『モンキーマン』人と獣が合わさり、彼の者は神となった。この映画自体も。

この映画は、つまり―
  • あの“良い人”系俳優の監督デビュー作は、まさかのバイオレンス・アクション!?
  • 『ジョン・ウィック』や傑作韓国アクション映画にも負けてない!
  • 理性的な人間と、猿という獣が出会ったら

記事を見る

◆配信中の注目作

『モンキーマン』(2024)

huluで視聴する⇒こちら
Amazonプライムで視聴する⇒こちら
AppleTVで視聴する⇒こちら

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

デヴ・パテルというインド系イギリス人俳優をご存じだろうか。それなりに映画を見ている方であれば名前を知っているか、少なくとも顔を見たことがあるはずだ。一番有名な作品は2009年のアカデミー作品賞その他数多くの賞に輝いた『スラムドッグ$ミリオネア』で、彼は映画初出演にして同作で主演を務めた。その後も、やはりアカデミー賞で複数ノミネートされた『LION/ライオン ~25年目のただいま~』などに出演しては、確かな演技力を見せている。これまでの役柄から、多くの方は彼に理性的で温厚そうなイメージを持っているだろう。だが、彼の監督デビュー作となるこの『モンキーマン』を見ると、我々の予想は全くの見当違いだったのかもしれないと思えてくれる。

そう、本作は穏やかなヒューマンドラマ……などではなく、何とインド成分マシマシの血みどろリベンジアクションなのだ! 設定も独特で、主人公キッドはアンダーグラウンドの賭博闘技場で猿のマスクを被って戦うファイターであり、やられ役。途中までは良い戦いっぷりだが、必ず最後には八百長を成立させるためボコボコにされて負ける、殴られ屋なのである(斬られ役が主人公の『侍タイムスリッパー』とテイストが違いすぎる)。そんなキッドは幼い頃に母親を腐敗した警察に殺されており、いつか復讐を果たすためだけに生き続けているのだ……。パテルは本作を監督しているだけではない。そもそものコンセプトを考えたのも彼自身だし、脚本も自ら書き、そして主演まで担っている。

パテルは、実は大のアクション映画ファンだったようだ。しかも本人はテコンドー黒帯の有段者である。本作はインド版『ジョン・ウィック』とも評されるが、彼自身はむしろ『アジョシ』などの韓国映画に大きく影響を受けたという。初監督作らしく、多少荒い作りながらも勢いが凄まじい。「才気煥発」をそのまま映像にしたような感じだ。非常に役者の近くに寄ったカメラがぶんぶん振り回されながら超絶アクションが展開され、昨今のハイレベルなアクション映画たちの中にあっても埋没しないクオリティになっている。あまり見たことのない戦い方(火の付いたガスコンロに敵の頭を押し付けながら酒瓶で殴って炎上させる技がカッコ良い!)がいくつもある。ストーリーは良くも悪くも単純な復讐ものではあるので先は読めるが、このアクションのおかげで退屈はしない。

パテルは撮影開始直後から手を骨折してパンパンに腫れた状態で撮影を続けたり、撮影機材のトラブルから一部のシーンをスマホで撮ったり、見た目通り本当に汚い床でアクションした後に目の感染症になったり、これらの他にも様々なトラブル(コロナ禍など)に見舞われながらも、どうにか本作を完成させた。劇中で、獣の仮面をまとっただけの中途半端な猿人間だったモンキーマンは覚醒後、パテルの本作のインスピレーション元でもあるインドの半人半猿の神ハヌマーンに重ねられていく。ちなみに、公開の目処が立っていなかった本作が劇場で見られるようになったのは、『ゲット・アウト』などで知られるジョーダン・ピール監督のおかげだ。本作のクレジットに名を連ねるピールの製作会社の名前は「モンキーポー(猿の手)・プロダクションズ」。『スラムドッグ$ミリオネア』にならうなら、これもまた“運命だった”のだろう。……手の骨折も? あるいは。

【ストーリー】
幼い頃に母を殺され、人生の全てを奪われた〈キッド〉は、夜な夜な開催される闇のファイトクラブで猿のマスクを被り、〈モンキーマン〉を名乗る“殴られ屋”として生計を立てていた。どん底で苦しみながら生きてきた彼だったが、自分から全てを奪ったヤツらのアジトに潜入する方法を偶然見つける――。何年も押し殺してきた怒りを爆発させたキッドの目的はただ一つ、「ヤツらを殺す」。【復讐の化身(モンキーマン)】となった彼の、人生をかけた壮絶なる復讐劇が幕を開ける。

【キャスト】
デヴ・パテル、シャールト・コプリー、ピトバッシュ 他

【スタッフ】
監督・原案:デヴ・パテル
脚本:デヴ・パテル、ポール・アングラウェラ、ジョン・コリー
製作:ジョーダン・ピール

 

★配信エンタの過去記事はこちら

『終わらない週末』神が世界を創造し終えた週末から世界が終わっていく。世にも静かで美しいアポカリプティック・スリラー。

『PIGGY ピギー』彼は悪魔の殺人犯、それとも白馬の王子様?これはホラーかラブストーリーか。

『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』地の果てでひとつ、またひとつと個々の世界が終わっていく。Z世代の探偵は世界の崩壊を止められるか?

『レンフィールド』”虫食い下僕”ニコラス・ホルトVS”パワハラドラキュラ”ニコラス・ケイジ!ニコラス対決を制するのは誰だ!

『ザ・キラー』“完璧”は時に人を退屈させる。しかし“完璧”に生きられる人間などいない。

バックナンバー