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『ロスト・イン・シャドー』影はどこまでもついてくる。13階段を上るまで。

この映画は、つまり―
  • インドネシアン・アクションは世界レベル
  • マンガの如く分かりやすいバイオレンス・エンタメ
  • 『ジョン・ウィック』×『ブラック・ウィドウ』!?

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◆配信中の注目作

『ロスト・イン・シャドー』(2024)

Netflixで視聴する⇒こちら

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

アジアのホラー映画のクオリティの高さについて今さら言及する必要はないだろうが、それはアクション映画でも同様だ。特に、未だに頭にこびりついて離れない、鮮血、もとい鮮烈な印象を残したインドネシアン・アクションの金字塔『ザ・レイド』シリーズの衝撃は凄まじかった。あれから約15年。インドネシアン・アクションの勢いはまだ衰えていない! 『ヘッド・ショット』と『シャドー・オブ・ナイト』(両方Netflixで見られる)で『ザ・レイド』主演のイコ・ウワイスと組んだティモ・ジャヤント監督による新作が、今回の『ロスト・イン・シャドー』だ。

いきなり、みんな大好き日本のヤクザのシーンから始まり、そしていきなり全員謎の女たちに殺される。この女たちが本作で主に描かれる、「死の影」と呼ばれる暗殺者集団だ。その内のひとり、コードネーム「13」の若き女刺客が主人公となっている。劇中でヤクザのボスが「忍者でも連れてこい」と言うが、近未来感さえ漂わせる出で立ちの13はまさに現代のインドネシアン・ニンジャだ(日本刀バトル多し!)。「死の影」と呼ばれるだけあって、彼女らはもはや死神のような存在と言って良い。出会ってしまったら最後、必ず人生の最終目的地(ファイナル・デスティネーション)までついてくる。本作の内容は、マンガのように分かりやすい。組織に命じられるがままにただただ人を殺し続けてきた13が、犯罪組織に誘拐された隣人の男の子を助けるため死地に赴く、というシンプルなストーリーだ。

登場人物たちも、これまたマンガのようにキャラが立ちまくっている。13は凄腕の殺し屋ながらベビーフェイスで優しい心を持ち、敵はヤクザに、サイコなギャングに、マスクを被って相手を拷問するのが大好きな変態ファザコン男。明らかに盛りすぎ、やりすぎなのに、決してバカバカしくはならず不思議なリアリティを保っている。『ザ・レイド』で認知度が急上昇したであろうインドネシアの格闘技シラットも健在で、手数の多い打撃と斬撃には見惚れるばかり。やりすぎなのは、もちろんバイオレンス描写もだ。銃で撃たれれば顔は抉れるし、刃物は容易く身体を分離させ穴を開ける。そして、「死の影」のメンバー含め、誰もが等しく凄惨な死を迎える運命を背負っている。安全圏にいる者などどこにもいない。

ベビーフェイスの女殺し屋と言えば、『ジョン・ウィック』シリーズのスピンオフでアナ・デ・アルマス主演の『Ballerina』(原題)の公開が来年に控えているが、もう本作を見れば良いのではと思えるほどの満足感がある。テイストとしては、それに『ブラック・ウィドウ』を足してインドネシア風味の2で割った感じだ。144分と長尺ながら、全編に超絶アクションがまぶされ退屈する隙がない。ラストも、インドネシアン・アクション映画に触れたことがある方なら知っているあの人が登場し、驚いてつい「師匠!」と叫びたくなった。続編もありそうな終わり方なので、ぜひ作ってもらいたい。ティモ・ジャヤントはインドネシアン・ホラーの監督としても名高いので、本作が気に入った方はそちらもチェックしてみてはいかがだろう。

【ストーリー】
凄腕の若き殺し屋が、ひとりの少年を非情な犯罪組織から救うため、自らの師に背を向けて立ち上がる。そして、その行く手を阻む者を片っ端から滅ぼしていく。

【キャスト】
アウロラ・リベロ、ハナ・マラサン、クリスト・インマヌエル、アンドリ・マシャディ、アリ・フィクリ 他

【スタッフ】
監督・脚本:ティモ・ジャヤント

 

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