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『呪餐 悪魔の奴隷』忘れていた。“死体”は気持ち悪いものだということを。

この映画は、つまり―
  • あの謎邦題インドネシアン・ホラーをリメイクした『悪魔の奴隷』の続編
  • インドネシア版『ヘレディタリー/継承』!?
  • リアルな死体によるジャンプスケアの連続

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◆配信中の注目作

『呪餐 悪魔の奴隷』

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

アジアンホラーには欧米のホラーとは全く異なる雰囲気や魅力がある、というのはもはや周知の事実だろう。Jホラーはもちろん、韓国ホラー、最近では台湾やタイのホラーも勢いを増してきている。そんな中、密かに忍び寄る存在がひとつ。それがインドネシアのホラーだ。現在活躍しているインドネシアン・ホラーの監督で、日本のホラーマニアにもよく知られているのは、おそらく3人ほどだろう。まず、『マカブル 永遠の血族』のキモ・スタンボエル監督とティモ・ジャヤント監督。彼らは「モー・ブラザーズ」というコンビ名で知られ、インドネシアン・アクションの傑作『ザ・レイド』でスターとなったイコ・ウワイスと『ヘッド・ショット』で組み、何と『KILLERS/キラーズ』ではあの北村一輝とも組んでいる。ちなみにジャヤントは、ボブ・オデンカーク主演の爽快アクション『Mr.ノーバディ』の続編を担当するとも決まっている。

3人目が、今回紹介する『呪餐 悪魔の奴隷』のジョコ・アンワル監督だ。本作はシリーズ2作目なので、前作『悪魔の奴隷』について軽く触れておこう。内容の前に立ち位置からだが、同作は知る人ぞ知る往年のインドネシアン・ホラー『夜霧のジョギジョギ』(または『夜霧のジョギジョギモンスター』)のリメイクだ。インドネシアで同時期に作られた『首だけ女の恐怖』といい、邦題が味わい深い……とそれは置いておいて、“ジョギジョギ”とは一体何かというと、内容とは何の関係もない。おそらく、ウェス・クレイヴン監督の『サランドラ』(これも謎邦題)の宣伝で使われた“ジョギリ・ショック”というキャッチコピーに着想を得たのだろう。つまり『夜霧のジョギジョギ』はジョギジョギと刃物で人間を切り裂く殺人鬼などが出てくる映画ではない。幽霊とゾンビが出てくる映画だ。

ゾンビと言っても、多くの人が思い浮かべる、ジョージ・A・ロメロが作り上げたゾンビ像とは全然違う。人間を食い、噛んだ人間をゾンビに変える能力を持ち、それこそヘッド・ショットすれば“二度”殺せるあのゾンビではなく、ただの死体が動く。ゾンビ自身の本能は感じさせず、より高位の存在に使役されるだけの、まさに「悪魔の奴隷」だ。エンタメ的に盛られていない分、余計に不気味である。

『悪魔の奴隷』は、貧しい一家の母親であり、過去有名な歌手でもあったマワルニが病死するところから物語が始まる。そして、死後もなぜか生前マワルニが家族を呼ぶ時に使っていたベルの音がしたり、マワルニの代表曲がラジオから突然流れ始めたりして、遺された家族の心をどんどん蝕んでいく。隣人まで巻き込まれ死人が出つつも、一家が引っ越しをして一応一件落着した。本作ではその4年後が描かれるが、マワルニにまつわる呪いのようなものはまだ消えていなかったことが分かる。新居の高層アパートに嵐が近づく中、凄惨なエレベーター事故をはじめとした不吉な現象が起こり始め、一家はまたもや命の危機にさらされる。

家族ドラマを中心に据えたホラーで、死んだ家族が不幸をもたらすストーリーなので、本シリーズはインドネシア版『ヘレディタリー/継承』と例えても良いのではないかと思う。それに加えて、今回は停電中で、そこら中の部屋に死体が並べられているという最悪の状況のアパートが舞台。雰囲気は抜群、死体の顔もリアルな造形だ。ハリウッドゾンビには慣れすぎてもはや気持ち悪さをあまり感じないが、本作の死体には(本来当然ながら)強い嫌悪感を抱く。そのため、度重なるジャンプスケアも非常に効果的だ。派手なホラー描写自体は前作の方が多かった気がするが、前作の小ネタをきちんと拾っている家族ドラマパートは笑える部分もあり、一家により感情移入できる。まだ深堀りされていない要素もあり、さらなる続編が作られる可能性もありそうだ。備えあれば憂いなし、今のうちに2作とも見ておこう。心臓麻痺を起こさぬよう祈りながら。

【ストーリー】
母と祖母を立て続けに亡くし、末弟のイアンも行方不明になったリニ。それまで住んでいた一軒家を後にし、父親とふたりの弟と共にジャカルタ北部の高層アパートに4年前に越して来た。一方、数年に渡り2,000人が犠牲となっている前代未聞の連続殺人事件が世間を賑わせていた。そして、慎ましく暮らしていたリニたちの周囲を、度重なる不幸が襲い始める。アパートのエレベーターが落下し、多くの住人が命を落とし、父親も重傷を負う。さらに、死者の埋葬もままならないまま、局地的な大嵐が襲い下層階が浸水。停電も併発し完全に孤立してしまう。リニたち住人は、暗闇を纏ったアパートで、多数の遺体と一夜を過ごす事となり……。

【キャスト】
タラ・バスロ、エンディ・アルフィアン、ネイサー・アヌズ、ブロント・パララエ 他

【スタッフ】
監督・脚本:ジョコ・アンワル

 

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