『三茶のポルターガイスト』この部屋……何か妙……。霊を心でなく機械の目に焼き付けた禁断のドキュメンタリー！

2024.07.15

この映画は、つまり―

有名な実在の心霊スポット。それはあの住んでみたいオシャレな街にあった――
撮れ高満点ドキュメンタリー。サービス精神旺盛の幽霊
信じるも信じないもあなたの自由……ではない。だって映ってるんだもん

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◆配信中の注目作

『三茶のポルターガイスト』(2023)

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文：屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

あなたは、科学では説明のできない恐ろしい現象に遭遇したことがあるか。いや、それを聞く前に、こちらが先に話すのが礼儀というもの。場をあたためるため、もとい、今回は場を“冷やす”ために、まず筆者の体験談をご紹介しよう。筆者が10代半ばのころ――もうあれからすでに15年近くも経ったのか、怖くなってきた――実家のリフォームが行われた。手を加えられたのは主に1階で、連日昼間は工事の音がトンテンカンカンとひっきりなしに鳴り響いていた。さて、問題は夜間。2階にある寝室で寝ようと床に布団を敷き、横になった。そこで何の気なしに、布団越しに片耳を床につけてみた。もちろん、瓦礫だらけの1階には誰もいない。何も聞こえない……はずだった。しかし、筆者にははっきり聞こえたのだ。トンテンカンカン。明らかに人間ではない、幽霊が工事を続行している音が(残念ながら工事は予定より早く終わったりはしなかった)！

まさに“騒がしい霊”、ポルターガイスト現象だったのだろう。筆者の怪奇現象体験はそのひとつだけだが、もっともらしい原因などひとつも思い当たらない。間違いない。幽霊は存在する。この体験は、今でも筆者の心の中に残り続けている。さて、今回紹介する『三茶のポルターガイスト』も、その名の通りポルターガイスト現象がバッチリ収められたドキュメンタリー映画だ。三茶こと三軒茶屋に実在する非常に有名な心霊雑居ビルを舞台に、長年止まぬ怪異の真実に迫ろうとする作品になっている。ちなみに、三軒茶屋の地名は、現在の神奈川県である相模国の大山へ向かう道の途中に信楽、角屋、田中屋という3つの茶屋があったことに由来するらしい。本作の主人公は、何の因果か茶屋のひとつと同じ字の名を持ち、オカルトニュースメディア「TOCANA」の元編集長でもある角(すみ)由紀子だ。

彼女が訪れるのは、件のビル4階にある俳優養成機関「ヨコザワ・アクターズ・スタジオ」。ここでは昔、劇団員が降霊術を行った際に男の子の霊が目撃され、それから怪奇現象が起こり続けているという。水が滴る鏡に映る謎の人影、どこからともなく現れる白い手、ひとりでに揺れるホワイトボード、怒ったようにガタガタと揺れる天井……。ご丁寧に、劇団員が遭遇した現象は再現ドラマの形で紹介される(俳優の芝居がちゃんと演劇的だ！)。そして、カメラとともにスタジオに張り込み、ゲストたちとコックリさんや心霊グッズで幽霊を呼び出そうとした角を襲うのは……上記全て(+α)の怪奇現象である！　恐ろしい。何と恐ろしい部屋なのだろう。そう言えば、この部屋があるのは4階と縁起が悪い。きっと死の世界に通じているに違いない。

実際、角たちは怪奇現象を解き明かそうと様々な専門家を呼び部屋の構造を調べていくのだが、何らかの仕込みができそうなスペースが見当たらない。妙な部屋には妙なスペースが付き物だろう。なのにそもそもそれがないのだ。そして、コックリさんでの幽霊の返答も、たまに意味不明。謎が謎を呼ぶ展開だ。あまりにもハッキリと怪奇現象が映っているので、逆に笑ってしまう瞬間もあるかと思う。だがよく言うだろう。「笑いと恐怖は紙一重」。この世とあの世の境目も、同様に紙一重なのかもしれない。笑ってしまったシーンにこそ、真実は映っていたのかもしれない。