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『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』地の果てでひとつ、またひとつと個々の世界が終わっていく。Z世代の探偵は世界の崩壊を止められるか?

この映画は、つまり―
  • 異色の才能ブリット・マーリング&ザル・バトマングリ
  • 新世代のピンク髪ハッカー・アマチュア探偵、ダービー・ハート誕生
  • ミステリーか、SFか、スピリチュアルか、はたまた…

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◆配信中の注目作

『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』

ディズニープラスで視聴する⇒こちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「知る人ぞ知る」。非常に甘美な響きである。今回取り上げる探偵ドラマ『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』も、知る人ぞ知るクリエイターによる4年ぶりの新作だ。寡作ながらも毎回ユニークな作品を届けてくれるふたりの名は、ブリット・マーリングとザル・バトマングリ。筆者がブリット・マーリングに出会ったのは、10年ほど前になる。「名作」と聞くとなぜだか見る気が削がれてしまう捻くれた筆者は、レンタルショップに並ぶDVDを1枚1枚吟味しながら、タイトルもキャストも全く知らないけれど実は面白い、隠れた良作探しに躍起になっていた。

そこで見つけたのが、マーリングの初主演作『アナザー プラネット』だ(隠れた良作はひっそりと、しかし意外に多くソフト化されている)。マーリングが友人の映画監督マイク・ケイヒルと組み共同で脚本まで書き上げた作品で、タイトル通り(原題は「アナザー・アース」)、突如空に現れた第二の地球がテーマのSFだった。今風に言えば“マルチバース映画”ということになるだろうが、むしろSF的なのは見た目だけで、実際は第二の地球に気を取られ自動車事故を起こしてしまった加害者の主人公が被害者遺族に贖罪しようとする、優れた切ないヒューマンドラマであった。

ゴールドマン・サックスでのキャリアではなく映画の道を選んだマーリングにとって、最も飛躍の年だったのは2011年だ。この年のサンダンス映画祭で『アナザー プラネット』とともに上映されたのが、未公開映画『Sound of My Voice(原題)』(いつかの日本上陸を願ってやまない)。主人公たちが、マーリング演じる自称タイムトラベラーが率いるカルト教団の真実を暴こうとして信者のふりをした結果、だんだんと洗脳されかけていくサイコスリラーであり、同作を監督したのがやはり友人の映画監督ザル・バトマングリだった。

その後もマーリングはバトマングリと組み、フリーガン(まだ使えるゴミやまだ食べられる廃棄食料を回収しながら生活する者たち)と一緒に生活した経験を活かしエコテロリスト・スリラー『ザ・イースト』で脚本・主演を務め、Netflixドラマ『The OA』では失踪から7年後になぜか視力を取り戻した状態で救助された盲目の主人公を演じた。バトマングリと企画した『The OA』は、物語がどこに転ぶか分からないミステリアスで斬新なSFドラマだったが、ファンに惜しまれつつシーズン2で打ち切りに。『マーダー・イン・ザ・ワールドエンド』はそれ以来の待望の新作なのだ。

検死官の父に育てられ、いくつもの事件現場を見てきたピンク髪のZ世代ハッカー・アマチュア探偵ダービー・ハート。かつて相棒のビルと調査した、女性連続殺人事件について記した本で有名になったダービーは、億万長者のアンディ・ロンソンから謎めいたアイスランドの辺境にあるホテルに招かれる。ロンソンは異常気象が頻発している地球の将来を憂いており、各分野で活躍する才人9名を招いて議論しようというのだ。その中には、なんと6年前に突然ダービーのもとを去ったビルの姿も。思いもよらない再会に困惑していたダービーはその夜、ゲストのひとりが薬物のオーバードーズによって死ぬのを目撃する。ところが、調査していくうちに殺人の可能性を疑うようになり…。

普通のクローズド・サークル(世間から隔絶された空間が舞台のミステリー)と違うのはやはり、これまでの作品にも見られたSF要素だろう。ロンソンが創造したAIのレイは人工知能(アーティフィシャル・インテリジェンス)ではなく代替知能(オルタナティブ・インテリジェンス)と呼ばれ、ダービーもレイの力を借りて調査する。ホテルの内装もどことなく近未来的で、指輪がルームキーになっているのも気が利いている。主演のエマ・コリンはノンバイナリーを公言しているクィア当事者であり、繊細な若き探偵を好演している。ダービー同様に繊細なアーティストのビルを演じているのは、『キングスマン:ファースト・エージェント』のハリス・ディキンソンだ。

現在4話まで配信中だが、ビルとの過去パートと現在の調査パートを交錯させた語り口で、なかなか今後の展開が読めない。『ザ・イースト』のように環境問題に切り込んでいくのかもしれないし、『The OA』のようにSF色を強めていくのかもしれない。マーリングたちの作品に一貫したテーマは、SFとスピリチュアル。であれば、神秘的な領域に突き進んでいくのかも…。まるで行き先の分からないミステリーツアーだ。彼女らの作品はジャンル分けするのが難しい。最近の若者には「思っていたのと違う」展開は好まれないなんて話も聞くが、この機会に同じZ世代のダービーとともに事件に翻弄されてみるのはいかがだろうか?

【ストーリー】
ダービーと他の8人のゲストは、隠遁生活を送る億万長者から、人里離れた魅力的な場所にある静養所に招待される。しかし、そこでゲストの1人が死体で発見され、ダービーは自分のスキルを駆使して、それが殺人であることを証明し、次の犠牲者が出るのを阻止しなければならない。

【キャスト】
エマ・コリン、クライヴ・オーウェン、ハリス・ディキンソン、ブリット・マーリング、アリシー・ブラガ、ジョアン・チェン 他

【スタッフ】
企画:ブリット・マーリング、ザル・バトマングリ
監督:ブリット・マーリング、ザル・バトマングリ
脚本:ブリット・マーリング、ザル・バトマングリ 他

 

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