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『ライトハウス』現代に作られた“100年前の映画”!?その強烈な“光”に目を焼かれろ。

この映画は、つまり―
  • ホラー…というより怪奇映画!?
  • どう見てもファンタジーか神話なのに、まさかの実話!?
  • モンスターや幽霊よりも怖いもの

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『ライトハウス』

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

『ライトハウス』は、映画ファンにはもうお馴染みのA24が製作した作品だ。尖った内容で知られるA24作品の中でも、本作はかなり異色の出来になっている。画面を一目見た瞬間に、その違和感に気づけるはずだ。全編モノクロで、画面が狭い。たいてい映画の画面は横長だ。しかし、本作のアスペクト比は1.19:1。サイレント映画で用いられたスタンダードサイズ(1.33:1)よりさらに正方形に近い。これはサイレントからトーキーに移行する際に使われていたもので、つまりは100年近く前のフォーマットということだ。さらに、舞台は孤島にある灯台で、登場人物はほぼ2人のみ。逃げる場所はどこにもない。観客は、閉所恐怖症的な感覚を味わわされながら異世界に誘われる。

時代設定も100年以上前の19世紀末。ニューイングランドの孤島にそびえ立つ灯台(ライトハウス)を4週間にわたり管理するため、ベテランの灯台守トーマス・ウェイクと新人イーフレイム・ウィンズローが島に降り立つところから物語は始まる。しかしここはウィンズローにとって最悪の職場だった。部屋は狭く汚いし、日夜灯台が発する霧笛の轟音にさらされる。しかも、唯一の相棒であるウェイクのパワハラがひどいのだ。理不尽な命令ばかりで、こき使われる。さらに、何の恨みかカモメにまで仕事を邪魔されるなど、良いことがひとつも起こらない。そのうちウィンズローは現実と幻想の境が分からなくなっていく。ウェイクもウェイクで、灯台の灯室管理だけはウィンズローに任せず、入り浸って光を独占している。この島にまともな人間はいないのだ。

映画冒頭にはユニバーサル・ピクチャーズの白黒ロゴが映る。ユニバーサルはそれこそ100年前から、ドラキュラやフランケンシュタインの怪物など様々なモンスターが登場する初期のホラー映画、怪奇映画を作っていた。正気を失ったウィンズローは、存在するはずがない異形のものを目にする。本作は、その趣からやはりホラーより怪奇映画と呼びたくなる。また、ウィンズローがウェイクに強いられる無駄な作業は、神を欺いたために、絶対に転がり落ちる岩を山頂まで押し上げ続けなければならない終わりなき罰を受けたギリシャ神話のシーシュポスのイメージだ。しかし、ここまでファンタジーや神話的要素が盛り込まれた作品でありながら、ベースになっているのは何と実話である。

 

1801年、灯台守のトーマス・グリフィスとトーマス・ハウエルが、ウェールズの孤島にあるスモールズ灯台を管理することになった。ある日グリフィスが死んでしまい、殺人を疑われるのではと考えたハウエルは死体を遺棄することもできず、即席の棺に入れて灯台の外側にぶら下げた。するとそこに嵐がやって来て棺が壊され、むき出しの死体が窓から見えるようになってしまった。迎えの船が来た時にはハウエルはすでに狂っており、誰も彼がハウエルであると認識できなかった…というよくできた怪談のようなエピソードだ。現代劇に興味がないと語るロバート・エガース監督は、この話を基にして得体の知れない不気味な作品を作り上げてしまった。

文字通り「灯台下暗し」で、灯りのすぐ下にいるウィンズローには光が届かない。しかし、光に魅入られたウェイクもまた正気を失っている。船を導くはずの灯台が人間を迷わせるのは何とも皮肉だ。闇より怖いのは光。幽霊などより怖いのは、発狂してしまうこと。いつ誰に訪れるとも知れない、自分が壊れる瞬間だ。度胸がある方は、この機会に100年前にタイムスリップしてみてはいかがだろう。この強烈な光の芸術に心が焼け焦げない保証はないが。

【ストーリー】
1890年代、ニューイングランドの孤島に2人の灯台守がやって来る。 彼らにはこれから4週間に渡って、灯台と島の管理を行う仕事が任されていた。 だが、年かさのベテラン、トーマス・ウェイクと未経験の若者イーフレイム・ウィンズローは、そりが合わずに初日から衝突を繰り返す。 険悪な雰囲気の中、やってきた嵐のせいで2人は島に孤立状態になってしまう。

【キャスト】
ロバート・パティンソン、ウィレム・デフォー 他

【スタッフ】
監督:ロバート・エガース

 

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