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『地下に潜む怪人』/ギャップにやられろ!タイトルから想像できない奥深さを秘めたユニークホラー。

この映画は、つまり―
  • 意外な点でタイムリーなホラー!
  • 全編POV(一人称)視点で、観客の正気を侵食する!
  • 恐怖だけでなく、冒険の興奮まで!? 一味違うホラー体験を求めるあなたにオススメ!

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◆配信中の注目作 
『地下に潜む怪人』(2014)

Netflixで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

 

ニコラス・フラメル(またはニコラ・フラメル)という人物をご存じだろうか。名前だけでも聞き覚えのある方は少なくないと思う。ちょうど最新作が公開中の『ファンタスティック・ビースト』シリーズや、その大本の『ハリー・ポッター』シリーズにも登場する名だからだ。また、邦画に目を向ければ実写版『鋼の錬金術師』の最新作の公開が間近に迫っているが、作中には蛇が十字架に巻き付いた、「フラメルの紋章」と呼ばれるシンボルが登場する。このフラメルとは、ニコラス・フラメルのことだ。彼は、(否定説もあるが)一般的には実在の錬金術師として知られている。

錬金術は現代化学の土台になったとも言える技術で、卑金属を貴金属、主に金に変えることを目的としていた。金を生み出すだけでなく、不老不死も可能にすると考えられていた物質が「賢者の石」である。そう、『ハリー・ポッター』シリーズ第1作目のタイトルに用いられ、『鋼の錬金術師』の主人公エルリック兄弟が追い求めている物だ。そして、『地下に潜む怪人』の主人公で考古学者のスカーレットが、錬金術の研究に身を捧げながら実物を目にできないまま亡くなった父親の代わりに探している物でもある。スカーレット、つまり緋色に近い、血のように赤い石だ。

考古学者が主人公で、危険を顧みず調査に向かうのは実際にパリの地下に広がる地下墓所カタコンブ(カタコンベをフランス語ではこう言う)となれば、これはもはや遺跡探検のようなものだ。インディ・ジョーンズのような…というのはさすがに言いすぎだが、キャラクター目線のPOV視点で、謎を解きながら臨場感たっぷりに地中深くへ進んでいく映像や、劇中飛び交う錬金術に関する知的好奇心を呼び覚ます用語の数々には胸が高鳴る。邦題こそチープだが(確かに内容は低予算ではある)、原題は伝説的な錬金術師ヘルメス・トリスメギストスが残した言葉から取られた「As Above, So Below(上のごとく、下も然り)」。実に高尚なタイトルだ。

「上のごとく、下も然り」とはつまり「上にあるものと下にあるものは同じようなものだ」という意味だが、例えてこう言い換えよう。スカーレット一行は地下深くへ潜っていくが、それは“天に昇る”のと同じことだ。好奇心を満たせて心躍りつつ、実際は死と踊っている。カタコンブは、いるはずのないモノがおり、聞こえるはずのない声が聞こえ、起こるはずのないことが起きる場所だ。真実のみを求めるスカーレットがどれだけ歴史上の人物の金言をそらんじようと、金を求めたにもかかわらず結局鉄の味しか許されない仲間と大した違いはない。熟考は時に浅慮に似る。過ぎたるは及ばざるがごとし、、、である。

大きな音と衝撃的な映像による驚かしはあるが、基本的には「今何か映ったような…」という瞬間が連続する、静かで不気味な雰囲気に支配された一見の価値ある作品だ。「フラメルの紋章」に用いられている十字架と蛇から連想されるように、最終的にはダンテの『神曲』を下敷きにしたキリスト教的な物語に収束していく。日本の観客にとって、これほど第一印象から想像できない内容の映画も珍しいが、映画は嗜好品である。好きも嫌いも同じだけの価値を持つ。本作が玉なのかやはり石なのかは、ぜひ皆さん自身に決めていただきたい。

【ストーリー】
華やかなりしパリの通りの地中深く、1785年に造られたらしい世界最大の巨大地下墓地の探検に挑んだ研究者の一団が、迷路のような地下で迷い、絶対に踏み込んではいけない禁断の領域に入り込んでしまう。そして死霊たちが一団を血祭りにあげていくのであった。

【キャスト】
パーディタ・ウィークス、ベン・フェルドマン、エドウィン・ホッジ

【スタッフ】
監督:ジョン・エリック・ドゥードル

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