MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『底知れぬ愛の闇』/「深ければ良い」わけじゃない。豪華W主演で描かれる愛の暗部とは。

この映画は、つまり―
  • ベン・アフレック×アナ・デ・アルマス! 超豪華W主演作!
  • これって“ゴーン・ボーイ”?
  • 本当に大切なのは「アイ」よりも…

記事を見る

◆配信中の注目作 
『底知れぬ愛の闇』(2022)

Amazonプライムで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

 

愛の深さを形容する際、「海より深い」なんて表現をする場合がある。普通、それは大らかで慈愛に満ちている様をイメージさせるが…、「ブルーホール」をご存じだろうか? そこだけ海底が周りより深いため円形に濃い青が広がる、まさに海の目(アイ)のような神秘的な場所のことだ。非常に美しく吸い込まれそうな碧眼だが、その底知れなさには同時に恐怖も覚える。邦題や、原題の『Deep Water』からも、そういったニュアンスが感じ取れる。

本作は、DCコミックスのスーパーヒーロー、バットマンを演じたベン・アフレックと、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でボンドウーマン(同作では従来のように「ボンドガール」とは呼ばない)を演じ、もしかしたら主演のダニエル・クレイグより観客の印象に残ったかもしれないアナ・デ・アルマスW主演作だ。監督は、男女の不倫を描いたリチャード・ギア×ダイアン・レインW主演作『運命の女』のエイドリアン・ラインで、同作から実に20年ぶりの監督作であり、同じ不倫というテーマを扱っているのが興味深い。

美男美女な上、リッチな暮らしをしているヴィックとメリンダ夫妻にはかわいい娘もいるが、メリンダは夫の目の前でも他の男性と戯れる奔放な性格。メリンダは次々に相手を変え、レッスン代と称してピアノ講師へ3000ドルも振り込んだりしている(本年度アカデミー賞有力候補『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン監督の代表作『ピアノ・レッスン』を観れば分かるが、ピアノ・レッスンとはつまり“愛のレッスン”である)。ヴィックが手を焼く中、行方不明となっていた、以前メリンダと不倫していた男が遺体で発見され、ヴィックが疑われ始める…。

本作はキャスティングからして興味深い。アナ・デ・アルマスは『ノー・タイム・トゥ・ダイ』や、それに先駆けてダニエル・クレイグと共演した『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』ではピュアなキュートさが印象的だったが、元々セクシーな魅力が持ち味の女優だ。イーライ・ロス監督の『ノック・ノック』ではキアヌ・リーブスを誘惑する小悪魔(というにはクレイジーすぎるが)的な役を演じていた。本作は官能的なサイコスリラーであり、最近ファンになった方はアナの新たな一面を楽しむことができるだろう。

そして、サイコスリラーでベン・アフレックと言えば思い出されるのは『ゴーン・ガール』だ。やはり完璧そうな夫婦が主人公で、妻が不可解な失踪をしたことからベン演じる夫が疑われ始める(ちなみに、話のモデルになったスコット・ピーターソン事件の犯人とベンは顔がソックリだ)。本作でいなくなるのは男性ばかりなので、ガールならぬ“ゴーン・ボーイ”である。ヴィックはひげを伸ばしているので“黒ひげ”なのだが、少し『青ひげ』的なキャラクターでもある。『青ひげ』のモデルとも言われるジル・ド・レの「ド」は「〇〇出身」という意味で、ヴィックのフルネーム、ヴィック・ヴァン・アレンの「ヴァン」も同様の意味だ。

不倫相手がなぜか次々と消えるにもかかわらず、男遊びを止めようとしないメリンダを見ていると、これはリアルな話というより大人向けの童話のように思えてくる。『ゴーン・ガール』のラストには『それが〇〇(ネタバレなので伏せる)ってものでしょ』なんて核心めいたセリフがあった。本作もきっと「愛」についての童話なのだ。童話には教訓がつきもの。「ヴィック」とは「ヴィクター(=勝利者・征服者)」の愛称だが、愛に必要なのは勝利や支配ではない。筆者は本作から「大切なのは“I”ではなく、“優”である」と学んだ。あなたは本作からどのような教訓を得るだろうか?

【ストーリー】
完璧と思える夫妻、ヴィックとメリンダの結婚生活。2人が繰り広げる危険な心理ゲームに巻き込まれていく人々。彼らに何が。

【キャスト】
ベン・アフレック、アナ・デ・アルマス、トレイシー・レッツ

【スタッフ】
原題:Deep Water
原作:パトリシア・ハイスミス『水の墓碑銘』(河出書房新社)
監督:エイドリアン・ライン
脚本:ザック・ヘルム サム・レビンソン
撮影:アイジル・ブリルド
美術:ジェニーン・オッペウォール
衣装:ハイディ・ビベンズ
編集:ティム・スクワイアズ、アンドリュー・モンドシェイン
音楽:マルコ・ベルトラミ
音楽監修:トリッゲ・トーベン トウコ・ナガタ

 

バックナンバー