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『クイーンズ・ギャンビット』精神安定剤、アルコール、そして勝利依存症。チェス世界王者に若き女王アニャ・テイラー=ジョイが挑む。

この映画は、つまり―
  • エミー賞で作品賞と監督賞受賞!天才チェス少女のサクセスストーリー!
  • チェスを知らずとも熱くなれるスポ根もの!
  • これはまだアニャ・テイラー=ジョイのキャリアの“オープニング”に過ぎない

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◆配信中の注目作 

『クイーンズ・ギャンビット』(2020)

Netflixで視聴するこちら

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

 

日本時間9月20日、アメリカのテレビ番組で優秀な作品に対して贈られるプライムタイム・エミー賞の授賞式が行われた。リミテッドシリーズ(1シーズンで完結のドラマ)/テレビ映画部門で作品賞、監督賞(スコット・フランク)を受賞したドラマが、今回紹介する『クイーンズ・ギャンビット』だ。

チェス由来の言葉は我々の身近に存在している。「チェックメイト」に「エンドゲーム」…。終盤戦を意味するこの言葉は、『アベンジャーズ』4作目のタイトルにもなった。しかし、チェスそのものはどうか? 恥ずかしながら筆者も、この機会に初めて基本的なルールを学んだ。将棋にはない、一度に2つの駒(キングとルーク)を動かせる「キャスリング」なる技を知った時は興奮した。…それはさておき、本作はチェスに疎くとも問題なく楽しめる作品だ。戦術には「シシリアン」や「ナイドルフ」など口にしたくなるクールな名前がついているし、盤面を見ずともキャストの繊細な演技で戦況を感じ取れる。…やはり盤面が読めないと本当の意味で楽しめない? いや、やはり安心して良い。本作の配信後、チェスの人口が大幅に増加したと言われている。きっとあなたもその一人になるだろう。

主人公のベスは幼少期にシングルマザーの母親に無理心中を図られ、一人生き残った。孤児院でチェスに出会うも、飲まされ続けた精神安定剤の依存症に。その後、夫から関心を持たれず酒に逃げた養母の影響でアルコール依存症にも。しかし、それらの過去を引きずったまま貪欲に勝利のみを求め、世界チャンピオンであるソ連のプレイヤーに挑んでいく。女性が少ない冷戦時代のチェス界で異端のベスが、自信満々の男たちを次々になぎ倒していく様は爽快だ。その中で恋も経験し、何人かは戦友となっていく。強敵との試合を控えたベスが以前負かした男たちと協力し、相手の戦術を分析・特訓する流れはまるでスポ根、胸が熱くなる。

ベスを演じたアニャ・テイラー=ジョイは、若手の中でも頭一つ抜けた有望株だ。すでにクイーンの座を手にしているとも言えるが…。ちなみに『クイーンズ・ギャンビット』とはオープニング(序盤)でよく用いられる戦術を指すが、アニャにふさわしい言葉ではない。本作含め、若くして話題作ばかりに出演してきた彼女は「よくある」キャリアの持ち主ではないからだ。だが、これがまだ彼女にとって“オープニング”に過ぎないというのは間違いなくその通りだろう。

【ストーリー】
1950年代の児童養護施設で、人並外れたチェスの才能を開花させた少女は、依存症に苦しみながら、想像もしていなかったスターへの道を歩いていく。

【キャスト】
アニャ・テイラー=ジョイ、ビル・キャンプ、マリエル・ヘラー

【スタッフ】
監督:スコット・フランク

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