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『RED ROOMS レッドルームズ』 あなたは赤い部屋が好きですか?

この映画は、つまり―
  • ネット上にあると噂される、血塗られた部屋。それが実在したとしたら?
  • 悲劇はロングショットで見ると喜劇に。……本当に?
  • 深淵を覗くとき、深淵もまた……

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◆配信中の注目作

『RED ROOMS レッドルームズ』
配信先:Amazonプライム

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「赤い部屋」。今は懐かしいFLASH動画の全盛期だった2000年代前半に、ネットサーフィンが好きだった方には聞き馴染みのあるワードではないだろうか。この架空の都市伝説を題材にした短いホラー動画について、内容を簡単に説明しよう。ネットサーフィン中によく出てくるポップアップ広告の中には決して閉じてはいけないものがある。それは赤い背景に「あなたは|好きですか?」と書かれており、出現と同時に「あなたは✕✕✕✕好きですか?」という音声が流れる。主人公が消しても現れるそれを消し続けると、真ん中が途切れていた文が「あなたは赤い部屋が好きですか?」と完成し、誰とも知れない人名がずらっと羅列された赤いサイトに飛ばされる。主人公は自分の背後にナニカの気配を感じるも時すでに遅く、後日彼が首を切って自殺したとの噂が学校で持ちきりに。そして赤いサイトの人名の列の最後に主人公の名前が追加され、動画は幕を閉じる。

もちろん、このFLASHは本作『RED ROOMS』とは関係ない。だが、元々海外には「レッドルーム」なる都市伝説がある。これは、ネットの深部に同名の有料拷問・殺人配信サイトが存在する、というまことしやかな噂だ。本作においてはこのサイトが実在し、シュヴァリエなる中年男性が3人の少女のスナッフビデオを配信した容疑にかけられている。主人公でありモデルとして成功している若き女性ケリー=アンヌはシュヴァリエ事件に異常に惹かれており、毎日のように夜中にタワーマンションの自室から抜け出し、傍聴席を確保するため野宿する。すでに見つかった2人の少女の動画に映る覆面の犯人の姿だけでは証拠としてまだ弱く、限りなく怪しいシュヴァリエが有罪になるには至っていない。明らかにハイクラスなケリー=アンヌが、華やかな人生そっちのけで事件にのめり込んでいくのはなぜなのか。それを追っていくサイコスリラーだ。

このあらすじから、きっとあなたは猟奇的な描写が連続する映画だと思っただろう。実際は違う。本作に直接的な暴力シーンは全くと言っていいほど存在しない。劇中多く登場するのも、レッドならぬ無機質な裁判所のホワイトルームだ。本作は、映画からの説明を待つ受動的な観客はおそらく楽しめないだろう。だからこそ、普段は無表情で全く考えが読めないケリー=アンヌの幽霊じみた真っ白い顔が、PCの光に照らされて血色を取り戻したかのように赤く染まる非常に静的なシーンでさえ、ひどくショッキングに感じられる。中盤、ケリー=アンヌは彼女同様傍聴に通うシュヴァリエの“ファン”であるハイブリストフィリア(犯罪性愛)のクレマンティーヌに出会うが、この女性ははじめ観客の感情を逆撫でするキャラクターとして登場する。だが果たして、あなたは最終的にどちらの方に感情移入するだろうか?

日々オンラインポーカーで空虚な金稼ぎに興じるケリー=アンヌのハンドルネームは「LadyOfShalott(シャロットの女)」。これは英国の詩人アルフレッド・テニスンがアーサー王伝説を下敷きにして書いた詩に登場するキャラクターで、塔の外の世界を直接見ると死んでしまう呪いにかけられており、鏡に映した景色を見るしかない。だがある日、鏡に映ったアーサー王の騎士(フランス語でシュヴァリエ)ランスロットを見て恋に落ち、死を覚悟して外の世界に飛び出していく。ケリー=アンヌはまさしく現代病的に解釈されたシャロットの女であり、高い塔からPC画面という鏡を通して現実を覗き、死んでいるかのように虚ろに生きている。ダークウェブにアクセスするためのTor(トーア、「ジ・オニオン・ルーター」の略)ブラウザは、匿名性を保つためのそのシステムがタマネギの皮に構造に似ているためそう名付けられた。ケリー=アンヌが残虐な動画を見て涙を流したとしたら、それは少女や遺族の苦痛を思ってのことか、催涙成分に誘発されたただの生理現象か、それとも……。

ホラー好きを名乗る者としては、かなり痛烈な問いを突き付けられた気分だ。もちろん現実の実際の事件に対してホラー映画を楽しむように接しはしないが、実録ものの映画などいくらでもある。我々が現代の“鏡”を覗くとき、おそらく多くの場合、不思議なことにそこに反射しているはずの自分の顔は見ていない。ところがふと、真っ暗になった画面に映し出された目に気づく。ネット上には、「赤い部屋」に関する別の恐怖譚もある。一人暮らしの主人公が壁にある小さな穴から隣室を覗くと真っ赤な景色が広がっていた。隣室が異様なインテリアだった、のではない。実はそこには病気で目が赤い人が住んでおり、相手も常に穴からこちらを見つめていたのだ。暗い画面に映る我々の目もまた、もしかしたら血走っているのかもしれない。赤い部屋は、我々の数だけ存在するのかもしれない。常に自戒しなければならない。幽霊にならないように。そして肉体はもちろん、“精神の殺人者”にもならないようにと。

【ストーリー】
人気ファッションモデルのケリー=アンヌのささやかな日課は少女たちを拉致、監禁、拷問、そして死に至るまでを撮影し、ディープウェブ(通称:RED ROOMS)上で配信していたとされる容疑でメディアを賑わせているルドヴィク・シュヴァリエの裁判の傍聴だった。彼女はなぜ彼に執着するのか、審判の先に見たものは――。

【キャスト】
ジュリエット・ガリエピ、ローリー・ババン、エリザベート・ロカ、マックスウェル・マッケイブ=ロコス 他

【スタッフ】
監督・脚本:パスカル・プラント

 

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