MOVIE MARBIE

業界初、映画バイラルメディア登場!MOVIE MARBIE(ムービーマービー)は世界中の映画のネタが満載なメディアです。映画のネタをみんなでシェアして一日をハッピーにしちゃおう。

検索

閉じる

『カッコウ』マジョリティこそが格好の標的。堂々巡りを強いる声は何を企んでいる?

この映画は、つまり―
  • 今年はすでに怪作が豊富
  • なかなかお目にかかれない奇妙奇天烈な映像表現
  • 小島秀夫監督ともタッグを組んだスター、ハンター・シェイファー主演

記事を見る

◆配信中の注目作

『カッコウ』
配信先:Amazonプライム

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

怪作『マッド・フェイト 狂運』が公開されてからまだ2週間だというのに、またも怪作が登場してしまった。筆者のようなホラー・スリラーファンの中には一定数、“訳の分からない映画”が好きな方が含まれていると思う。意味が分かる映画=面白い映画では決してないし、また意味が分からないからといってつまらなく感じるとは限らない。むしろ、意味が分からないにもかかわらず面白い作品こそ、本当に面白いものと言えるのではないか? もしもあなたがそういったキワモノを探しているのなら、本作『カッコウ』はうってつけの代物だろう。

物語の舞台自体は、非常にオーソドックスなホラーらしい。主人公グレッチェンが家族4人で引っ越したのは、自然豊かなアルプスのリゾート地。およそホラーには似つかわしくないオシャレな場所にも思えるが、山や森にひっそりと立つ“小屋”では人が死ぬのがお約束だ。グレッチェンの両親は離婚しており、愛する母との別れを経験した彼女は常に憂鬱に沈んでいる。血が繋がっているのは父親だけ、若い継母ベスには馴染めず、異母妹のアルマは耳は聞こえるものの話せないために上手くコミュニケーションができない。孤独感を募らせるグレッチェンは、家族を出迎えた胡散臭い男ケーニヒの所有するホテルで受付のバイトを始めるが、不気味な客の行動や不審な女の影に悩まされていく……。

タイトルの「カッコウ(Cuckoo)」とはもちろん鳥のカッコウも意味するが、『カッコーの巣の上で(One Flew Over the Cuckoo’s Nest)』という映画もあるように、スラングで精神障害者のことを指す。本作を見ていると、痙攣のような編集とでも表現せざるを得ない奇天烈な映像表現が繰り返し出てくるため理解に苦しみ、こちらまでどうにかなってしまいそうになる。監督のティルマン・シンガーはこれが長編2作目となるドイツ人で、筆者は数年前から彼のデビュー作にして怪作(らしい)『Luz(原題)』の日本上陸を今か今かと待ち望んでいた。アメリカ人俳優を起用した『カッコウ』が配信とは言え日本で見られるようになったのも正直かなりのサプライズだったのだが、気になる方はとりあえず『Luz』のトレイラーも見てみてほしい。何やら尋常ではない雰囲気のホラー(?)であることが字幕などなくとも伝わるはずだ。交通事故に遭った主人公のタクシードライバーが警察で取り調べを受けるが、そこに催眠術やらオカルトやらが絡んでくるトンデモカオスな作品らしい。もう何が何やら。

とにかく『カッコウ』の方も、同じアイディアを元にして様々な他の監督が映画にしたとしても、きっとこうはならないだろうという作風になっている。ケーニヒ役は実写版『美女と野獣』(筆者的には『ザ・ゲスト』や『ゴジラxコング 新たなる帝国』)のダン・スティーヴンスで、イケメンなのに変な役も引き受ける彼らしく楽しそうに演じている(ちなみに、「ケーニヒ」とはドイツ語で「王」の意味)。グレッチェン役のハンター・シェイファーは小島秀夫監督の謎の新作ゲーム「OD」にも参加している新しいスターで、少し調べていただくと、彼女を主人公に起用している事実こそが本作のテーマを読み解くヒントになっているようにも思えてくる。過去に縛り付けようとする声に耳を傾けるな、必ずしも生まれた通りに生きなくても良いのだ、と。

【ストーリー】
両親の離婚により、母親と2人暮らしをしていた17歳のグレッチェン。あるきっかけで、気の進まないまま父親のルイス、義母のベス、そして2人の娘である妹のアルマと、ドイツの山奥にあるリゾート地へ移り住むことに。到着した一家を待ち受けていたのは、謎めいたホテルオーナーのケーニヒだった。口のきけないアルマに対し、不可解な興味をあらわにするケーニヒ。グレッチェンは、その静かなリゾート地に強い違和感を覚えてゆく。

【キャスト】
ハンター・シェイファー、ヤン・ブルートハルト、マートン・ソーカス、ジェシカ・ヘンウィック、ダン・スティーヴンス 他

【スタッフ】
監督・脚本:ティルマン・シンガー

 

 

★配信エンタの過去記事はこちら

『ザ・コンサルタント2』人間は決して一面的なものじゃない。そして、それは映画も同じ。

『コンパニオン』運命を、“愛”を超えろ。真の“わたし(I)”になるために。

『室町無頼』これは時代劇の皮をかぶったアウトローたちの生存劇だ!

『ザ・ヒューマンズ』たわいもない家族の団欒。“他愛”もない人間たちの寄せ集め。

「止まったら爆発」から50年——再起動するスリルとリアル『新幹線大爆破』Netflix版の真価

 
バックナンバー