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『木曜殺人クラブ』事件で亡くなる人がいれば、イキイキする人もいる。しかも4人。

この映画は、つまり―
  • クロスワードパズルや数独より刺激的な老後の楽しみは……殺人事件!?
  • 子どものように楽しそうな高齢者探偵チームがキュート
  • チョイ役にいたるまで名優ばかり

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◆配信中の注目作

『木曜殺人クラブ』
配信先:Netflix

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

基本的には、何事もアマチュアよりプロフェッショナルの方が優れている。当然、素人と呼ばれるよりは玄人と呼ばれる方が羨ましい。しかし、ある肩書に関してはその限りでない。そう、「素人探偵」だ。様々な作品に登場する彼らは、時にプロの探偵や警察も顔負けの推理によって事件を解決に導いてしまう。真相に近づきすぎたが故に真犯人に命を狙われることもあるが、それすら切り抜けて。そして何より、彼らは実に楽しそうだ。他人の不幸を密のようにペロペロ舐めているのは疑いようもない事実ながら、同様の所業を行っている他の連中と比べると憧れの度合いが段違いに強い。以前ご紹介した『マーダーズ・イン・ビルディング』のように、本作『木曜殺人クラブ』ではイギリスのご老人たちがチームを組んで謎に立ち向かう。老後の趣味としては刺激的すぎて最高だろうが、画面に刺激的すぎる場面は登場しない、非常に穏やかで軽妙なコージー・ミステリーとなっている。

木曜殺人クラブは、高級高齢者住宅で悠々自適に暮らしている謎解き好きのご老人たちの集まりだ。昔の未解決事件をどうにか解決しようと、毎週熱い議論を交わしている。しかもメンバーはそうそうたる顔ぶれだ。『クィーン』でエリザベス2世を演じ、本作ではクラブを引っ張るクールなエリザベス役のヘレン・ミレンに、ジェームズ・ボンドのようにチャーミングなロン役のピアース・ブロスナン、いつも知的で紳士的なイブラヒム役のベン・キングズレー(久々に見られて嬉しい)……。レジェンド俳優たちが、少年少女のような純粋さと年相応の老獪さを併せ持ちながら嬉々として事件に首を突っ込んでいくのは、よく考えれば危険で不謹慎ながらもとても微笑ましい。

問題が起こるのは、皆の家であるこの高齢者住宅が横暴なオーナーによって売り飛ばされそうになってからだ。関連があるであろう殺人事件も実際に起きてしまい、夢のような状況になったクラブは元看護師の新入り入居者ジョイスを仲間に加え、本格的に“捜査”に乗り出す。警察も出し抜くほどの行動力だが、見た目には子どもが友だち同士で遊んでいるのとそう変わらない。人が死んでいるのに不思議な心地良さを漂わせながら、クラブはゆる~っと事件の真相に近づいていく。

どこかしら只者ではない雰囲気のヘレン・ミレンが非常にハマっており、イギリス人らしいシニカルな態度がたまらない。監督は『ホーム・アローン』や『ハリー・ポッター』シリーズの初期2作を手がけたクリス・コロンバスで、物騒なタイトルとは裏腹に誰もが楽しんで見られる作りになっている。60~80代の名優たちが多く登場するので、同世代の方にも心地良いだろう(叶うならジム・ブロードベントや、引退さえしていなければマイケル・ケインなどにも出演してほしかった)。アフタヌーンティーのおともに、ぜひどうぞ。

【ストーリー】
木曜殺人クラブへようこそ。毎週集まって未解決事件の謎解きにいそしんでいたメンバーたちだが、ある日起こった事件をきっかけに思いがけず本格的な謎解きをすることに。

【キャスト】
ヘレン・ミレン、ピアース・ブロスナン、ベン・キングズレー、セリア・イムリー、ナオミ・アッキー、ダニエル・メイズ、ジョナサン・プライス、リチャード・E・グラント 他

【スタッフ】
監督:クリス・コロンバス

 

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