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『ハートアイズ』その故意の矢は、すでに結ばれたふたりの心臓のみを射抜く。

この映画は、つまり―
  • 今日は楽しいバレンタイン。カップルは皆殺しだ!
  • ロマンチック・コメディ×ホラー……いや、ホラー×ロマンチック・コメディ?
  • 『ハッピー・デス・デイ』のクリストファー・ランドン監督が脚本を担当

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◆配信中の注目作

『ハートアイズ』

配信先:Apple TV

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

バレンタインデー。それは恋する者たちにとって聖なる日。……半年ほど気が早くて申し訳ないが、今回紹介する映画『ハートアイズ』のテーマがそうなのだから仕方ない。さあ、また新たなホリデーホラーの誕生だ! バレンタインデーはロマンチックなイメージながら、元から割と血とは縁がある。日本人にとっては、大量のチョコレートで鼻血ブーする(したい)日。そして起源を辿れば、士気を下げさせないため兵士の結婚が禁じられていた古代ローマにおいて、密かに結婚式を執り行っていた司祭ウァレンティヌス(バレンタイン)が2月14日に処刑されたことにちなんでいる(諸説あり)。恋人たちの心臓を赤き血潮が勢いよく駆け巡るこの日は、約二千年後の未来である現在でもなお、多くの人に愛されている。

いや、もしかしたら憎まれてもいるのかもしれない。本作では、バレンタインデーに目がハートになっているカップルたちを殺害して回るシリアルキラーが街を恐怖に陥れている。自身も目の部分が赤くハート型に光るマスクで顔を隠したそいつは、人呼んで「ハートアイズ・キラー」。主人公のアリーは失恋を引きずり、会社もクビになる寸前というギリギリの状況で、偶然価値観が正反対ながら気になる男性ジェイに出会う。よりにもよってバレンタインデーにディナーに誘われ、それだけならまだ良いのだが、聖バレンタインが気を利かせたのか、不可抗力で彼とキスする流れに。そうしたら、ま、マサカー、ハートアイズに見られロックオンされてしまうのだ! 恋人未満、どころか友人未満のふたりは果たしてどうなってしまうのか?

ホラー映画においては、カップルはよく「リア充爆発しろ」と言わんばかりに殺されまくる。愛が続くのは死がふたりを分かつまで、だ。しかし本作の場合は、デコボコな男女がなんだかんだあって最終的に結ばれるというようなロマンチック・コメディとホラーが合体しているため、お互いが殺されてしまう前にどうにかカップルになれるよう観客は応援する羽目になる。ハートアイズに追われるドキドキを利用してでも良いから、とにかく早くくっつきなさい。どうせそういう展開になるのは分かっているんだから! しかしハートアイズは、バレンタインデーの恩恵にあずかれない嫉妬に突き動かされているのか、どこまでもしつこく“血眼”になって追って来る。そしてこれまた殺し方がえげつない。ホラーコメディ好きならニコニコできるが、単にロマコメ好きな方の笑顔は100%引きつる(出演しているジョーダナ・ブリュースターに引っかけた『ワイルド・スピード』ギャグなどもあり、映画好きもニコニコできる)。

特筆すべきは、脚本・製作に『ハッピー・デス・デイ』シリーズを監督したクリストファー・ランドンが参加している点だ(ちょうど、監督最新作『DROP/ドロップ』が劇場公開中)。同シリーズや『ゾンビーワールドへようこそ』『ザ・スイッチ』などを見れば分かるように、彼の作品は基本的に良質な笑えるホラーとなっている。また彼はゲイをカミングアウトしており、作品内にもよく多様性の要素が盛り込まれる。本作で扱われているのはもちろん異性愛だが、アリーとジェイがステレオタイプな女性像/男性像とは少し異なる形で描かれるので、ステレオタイプな分かりやすいキャラクターが登場しがちな普通のホラーを予想すると良い意味で裏切られるかもしれない。加えて、本作は話が終わったと思ったところからもうひと展開ある、やはり一味違うホラーだ。実に多様なホラー映画界、鑑賞後は我々の目もハートになっていることだろう。

【ストーリー】
バレンタインデーに残業していた会社の同僚2人は殺人鬼“ハートアイズ”にカップルと間違われて襲われてしまう。一年で最もロマンチックな夜を、彼らは命がけで過ごすことに。

【キャスト】
オリヴィア・ホルト、メイソン・グッディング、ジジ・スンバド、ミカエラ・ワトキンス、デヴォン・サワ、アン・ヨーソン、ジョーダナ・ブリュースター 他

【スタッフ】
監督:ジョシュ・ルーベン
脚本:クリストファー・ランドン、フィリップ・マーフィ、マイケル・ケネディ
製作:クリストファー・ランドン、グレッグ・ギルレス、アダム・ヘンドリックス

 

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