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『キャドー湖の失踪』見つけ出せ。大きな足跡に隠れた小さな足跡を。

この映画は、つまり―
  • M・ナイト・シャマランがプロデュースしたタイムトラベル・ミステリー
  • どんでん返しと「家族」
  • あなたはすでに騙されている……?

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◆配信中の注目作

『キャドー湖の失踪』(2024)

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

いきなり別作品の話で恐縮だが、あなたは現在公開中の映画『トラップ』を見てどう思っただろうか? 映画ファンで知らぬ者はいないM・ナイト・シャマラン監督の待望の新作は、シャマラン好きの間でも賛否分かれそうな内容になっていた。クオリティの問題というよりも、シャマラン作品に何を求めているかによって評価が変わりそうだ。連続殺人犯が見に来た音楽ライブは、実は彼を捕まえるための罠だった……というあらすじの『トラップ』は、これまでのシャマラン作品と違って非現実的な要素を含まない(ご都合主義展開を“非現実的”と呼ばないのなら)。そのため、いつもの奇想天外さを期待するとそれこそ罠にかけられたような気持ちになるだろう。ストーリー自体には所々できちんと捻りが加えられてはいるのだが、シャマラン作品によく見られる終盤のどんでん返しも、それほど強烈ではないと筆者は感じた。

そういう意味ではシャマラン作品らしくなかったと言える。ところが、シャマランの持ち味はどんでん返しのみにあらず。シャマランらしさには、思うに2つの軸がある。どんでん返しと、「家族」要素だ。『トラップ』は意外にも、外見に反して「家族」要素が強く出ている作品だった。テーマとしてもそうだし、ストーリーの主な舞台となるライブシーンは、シャマランの実の娘であり実際に歌手のサレカが担当している。まさに“家族(ファミリー)映画”というわけだ。……さて、話が長くなってしまったが、タイムトラベルものである本作『キャドー湖の失踪』はシャマランが製作している(「タイムリープもの」と紹介されている場合もあるが、劇中では意識だけでなく肉体ごと時間を旅する)。このジャンルには、観客の予想を超えるオチが必須だ。そう意味では確かにシャマランらしいと言えるが、実際のところはどうだったのだろうか?

本作は少々複雑だ。主人公がふたりいる。ひとり目のパリスは、車を運転中の母親が謎の発作により起こしたキャドー湖への転落事故で自分だけ生き延びた男性。ふたり目のエリーは、再婚した母親に反抗し、養父とも良い関係を築けない少女。ちなみにタイトルの「失踪」は、エリーが唯一仲良くしていた義理の妹アンナがキャドー湖でいなくなった事件を指している。エリーはアンナを捜索に行くが、この湖には別の時空に通じる場所があり、そこをすり抜けてタイムトラベルしてしまうのだ。そして、パリスもまた……。

キャドー湖(カドー湖)はアメリカのテキサス州とルイジアナ州の間にまたがる実在の湖で、何とビッグフットの目撃報告が多数されている場所でもある。本作の序盤にも、観客をギョッとさせるような大型生物の変死体が登場する。このケレン味はシャマランも好きな部分だろうが、見終えてみると……やはり家族の物語だった! シャマラン作品より作風は静かで地味ながら、きちんと観客を翻弄するオチもある。ある意味では『トラップ』よりもシャマランらしい。人を上手く騙すコツは、「木を隠すなら森の中」。そして、前提の中に嘘を仕込むことだ。あなたも、キャドー湖で迷ってしまわぬように。これが今生の別れとなりかねない。だが、例えそうなるとしても……、あえてこう言っておこう。またいつか、お会いしましょう。

【ストーリー】
ある日、8歳の少女がキャドー湖で謎の失踪を遂げる。母の死の真相を探っていたパリスと、失踪した少女を探すエリーは、それぞれ引き寄せられるように湖の奥へと進んで行く。この地に隠された秘密と、事件の真実とはいったい何なのか…。

【キャスト】
ディラン・オブライエン、エリザ・スカンレン、ローレン・アンブローズ、エリック・ラング、サム・ヘニングス 他

【スタッフ】
監督・脚本:ローガン・ジョージ&セリーヌ・ヘルド

 

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