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『プラットフォーム2』重力は富さえ支配する。弱者は強者の肉となる。それがこの世の物理法則。

この映画は、つまり―
  • “上”が“下”の生殺与奪の権を握るシチュエーション・スリラー、まさかの続編
  • 皆の幸福を重んじるルールができたが……? あの“穴”をさらに深く掘り下げる
  • 何が正しい答えなのか?

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◆配信中の注目作

『プラットフォーム2』(2024)

Netflixで視聴する⇒こちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

本作『プラットフォーム2』の存在を知った時、頭の中が疑問符で埋め尽くされた。きっと同じような気持ちの方は少なくないだろう。「あの『プラットフォーム』に続編など要るか」? まずその問いが浮かんできた。まあ、まずは前作『プラットフォーム』のことを振り返ろう。SF的な世界観で、コンクリートの壁で囲まれた無機質な部屋が上下にどこまでも続く、超高層タワーなのか地下施設なのか分からない不思議な場所が主な舞台となっている。どの部屋の真ん中にもぽっかりと四角に空いた穴があり、重力制御されたリフトが上の階から順番に降りてくる。リフトには零れ落ちそうなほど大量に豪華な食事が並んでおり、自分の階に止まっている数分間だけ食事ができるが、下の階層にいる者の分は上の者が食べ尽くしてしまう。自分の階層は1ヶ月ごとにランダムで決められるので、上の階に選ばれることを願いながら生き延びなければならない……という設定のシチュエーション・スリラーだ。

この施設(垂直自主管理センター、略してVSCと呼ばれている)には訳ありの者ばかり集まっており、何らかの理由で自発的に来た者の他に犯罪者も異常者もいる。さらに皆極限状態なので、毎日誰かが死んでいく地獄のような場所だ。本作はSFに見えて、VSCを社会の縮図に見立てたおとぎ話でもある。先ほど料理が足りなくなると言ったが、実際は皆がVSCに入る前の面接時に希望した好物が全て準備されているので、自分の分だけ食べるなら料理は全員に行き渡るという設定も面白い。

詳しい説明は省くが、前作で主人公ゴレンがVSCの残酷なシステムに抗う際、パンナコッタがキーになった。上階から降り注ぐ一筋の光のごとくささやかな希望を感じさせて前作は終わったが、さて、ここで最初の問いに戻る。「続編は必要だったのか」? 結論から言えば、必要だった。前作を相対化するために。そのおかげで、パンナコッタはVSCに皮肉な影響をもたらしてしまった。『エイリアン2』の結末と『エイリアン3』の冒頭に感じる落差にも似ている。……ここでこそ言うのにふさわしいギャグがあるのでどうしても言っておく。なんてこったパンナコッタ!

本作のVSCでは、前作主人公の選択が宗教のような形として残っている。ちゃんと自分の分だけを食べ、他の人の料理を食べるなら自分の品と交換しなければならない。ほぼ全員が“自主管理”しており、下の者を慮る。何と素晴らしいのだろう! ちなみに空腹で死にかけている者がいても、不平等になるのでいつもより多く食べさせてはいけない。公平(格差を考慮し異なる量を分配)ではなく、平等(格差に関係なく同量を分配)が重んじられている。何と融通が利かないのだろう。そしてルールを破れば処刑される。それが社会のためだ。“自由”は社会を破壊する! 前作のVSCは無法地帯だった。本作のVSCは法治国家だ。ただしルール違反者は“国家反逆罪”で死刑となる。

VSCは上は1階から下は333階まであり、1部屋にはふたりずつ割り当てられている。つまり、VSCには666人の人間がいる。『オーメン』で有名な獣の数字というやつだ。前作主人公が宗教になっているという点は今年公開の『猿の惑星/キングダム』も思い出させる。まさにVSCは今も昔もアニマル・キングダムである。上にいる時は下の者のために、なんて考えるが、いざ自分が下になれば疑心暗鬼になる。『パラサイト 半地下の家族』で、坂の下に住む貧しい家族が洪水で死にかけるように、下の者は重力によって殺される。とは言っても、無重力状態で暮らすなんて全く地に足の着いていない発想だ。穴から上を見上げても下を見下ろしても、合わせ鏡のように永遠に続く部屋。生き延びるしかやることのない最悪の食っちゃ寝生活。ここに放り込まれたら、あなたは本能と理性、どちらに従う?

【ストーリー】
謎の人物が独自のルールの下で支配する、縦型構造の施設。新たに来た者たちは、その残酷な食事供給制度と戦おうとするが……。

【キャスト】
ミレナ・スミット、ホヴィク・ケウチケリアン、ナタリア・テナ、オスカル・ハエナダ、イバン・マサゲ 他

【スタッフ】
監督:ガルデル・ガステル=ウルティア・ムニチャ
脚本:ガルデル・ガステル=ウルティア・ムニチャ、ペドロ・リベロ、エゴイツ・モレノ、ダビド・デソーラ

 

 

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