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『ダムゼル 運命を拓きし者』プリンセスはビューティフルでデューティフル(従順)な存在でしかないのか?否っ!!

この映画は、つまり―
  • 従来の「ダムゼル・イン・ディストレス」からの解放
  • 中世ファンタジーながら時折顔を出すホラー要素!?
  • 主演のミリー・ボビー・ブラウンは製作総指揮も

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◆配信中の注目作

『ダムゼル 運命を拓きし者』

 

Netflixで視聴する⇒こちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「ダムゼル・イン・ディストレス(囚われ/捕らわれの姫君)」は非常によくあるタイプのキャラクター造形だ。世界の神話にも、日本の神話にも、現代の漫画やゲームにも数多く登場する。毎回クッパにさらわれる『スーパーマリオブラザーズ』のピーチ姫などはまさにその典型である。大抵の場合、彼女らは主人公であるヒーローに助けられるだけの役割しか持たない。しかし、国際女性デーであった昨日3/8に配信開始となった本作は、そのようなこれまでの“伝統”から脱却しようとしている。

平民でありながら、外国・アウレア王国のヘンリー王子との縁談を持ちかけられるヒロイン・エロディを演じるのは、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でゴジラと共演したミリー・ボビー・ブラウン。今回彼女が相対するのはゴジラならぬドラゴンで、あろうことかその生贄に選ばれてしまう。王子たちが求めていたのは姫ではなく、ドラゴンに国を襲われないために何世紀も続けられてきた暗い伝統の犠牲者だったのだ! なぜ、会ったこともないただの平民の娘を姫に選ぶのかと思ったら、誰でも良かったのである。普通のダムゼル・イン・ディストレスであればヘンリー王子が助けに来てくれるはずだが、本作ではまさにその王子の手によってエロディは窮地に立たされる。最悪だこいつ!

 

過酷な運命を背負わされたエロディは、ドラゴンのいる洞窟の中でそのまま食われるのを待つ…のではなく、機転を利かせてどうにか逃げ回る。迷路のように入り組んだ洞窟は狭いながらも様々な抜け道があり、獲物を弄ぶのが好きな趣味の悪いドラゴンとの追いかけっこは中々にスリリングだ。ブラウン自身がこなしているスタントのおかげで、たまにエロディが『トゥームレイダー』のララ・クロフトに見える。中盤からはずっと洞窟のシーンが続くので、本作が中世ファンタジーであることを忘れてしまいそうになるが、いくつもの幻想的な映像が見られるので飽きることはない。

 

女性を解放するというテーマの作品は近年珍しくないので、次に大体どのような展開になるのは読めてしまうところがあるが、良いアクセントになっているのはホラー的な描写だろう。何と監督は、あの有名なゾンビ映画『28日後…』の続編『28週後…』を手掛けたフアン・カルロス・フレスナディージョなのだ。後半はわりと残酷描写も多くあり、ドラゴンが恐ろしい存在であることが殊更に強調されている。ところが、“彼女”が物語上で果たす役割はそれだけではない。そう、このドラゴンはメスなのだ。

本作ではひとりを除いて、男たちの存在感があまりにもない。物語のキーパーソンになるのは女性ばかりだ。フェミニストを公言しているブラウンは、主演に加え製作総指揮も務めており、作品から若者らしい強い想いが感じ取れる(まだ20歳!)。唯一存在感を発揮している男性は、レイ・ウィンストンが演じているエロディの父。興味深いことに、ウィンストンはMCUの『ブラック・ウィドウ』ではナターシャ・ロマノフをはじめ女性たちを洗脳しスパイとして隷属させているドレイコフ(すごい名前だ)役だった俳優である。本作ではどのようなキャラクターになっているのか? それは実際に見て確かめていただきたい。

【ストーリー】
若い女性は魅力あふれる王子と結婚して幸せになるはずが、火を吐くドラゴンのいけにえにされてしまう。この絶望的な状況から逃れるべく、彼女は命懸けで大きな試練に立ち向かう。

【キャスト】
ミリー・ボビー・ブラウン、レイ・ウィンストン、ロビン・ライト、アンジェラ・バセット、ニック・ロビンソン、ショーレ・アグダシュルー 他

【スタッフ】
監督:フアン・カルロス・フレスナディージョ
製作総指揮:ミリー・ボビー・ブラウン 他

 

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