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『ロキ』シーズン2/時間の問題は時間が解決・・・してくれない!希望はあの“裏切りの神”に託された!

この映画は、つまり―
  • 色んな意味で間違った存在ながら、ヒーローより愛されるヴィラン、ロキ!
  • 運命に従うか、抗うか!?
  • 忍び寄る新メインヴィラン征服者カーンの影!

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◆配信中の注目作

『ロキ』シーズン2(2023)

ディズニープラスで視聴する⇒こちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

知力や財力があれば、大抵のことは何でもできる。科学力があれば、やはり大抵のことは何でもできる。人間は自由だ。少なくとも、生まれた時点では未来のことは何も決まっていない(はず)。ああ、しかし、現代の地球に生まれ落ちたにも関わらず別の銀河系の惑星まで旅行したいと夢見ても難しいだろうから、無限に思える選択肢の中からたかだか数兆だか数那由多(なゆた)だかを引いた分が現実的に選べる未来の数になるだろう。ましてや、魔法の力があれば、神にも等しい力があれば、ただの人間以上の自由を得られるに違いない…。

ところが、北欧神話でもどの神話でも、あらゆる神々には肩書がつく。「◯◯の神」と。オーディンならば「戦いと死、魔術と知識の神」、トール(ソー)ならば「雷と農耕の神」だ。彼らはまだ良い方だ。ロキの場合は困ったもので、本シリーズの作中では「裏切りといたずらの神」と呼ばれている。もはやこれは能力ではなく性格、生き方に関わる話だ。人間よりもよっぽど運命に縛られた不自由な存在に見えるロキだが、強いだけで魅力が薄いヴィランも珍しくない中、その不憫さと愛らしさでヴィランながらヒーローにも負けない人気を得ることに成功した。演じているトム・ヒドルストンが最高に役にハマっており、さらに本シリーズはヒーローものというより時間がテーマのSFとして楽しめる、マーベルの中でも異色の作品となっている。

シーズン1では、マーベルの世界にはただひとつのあるべき歴史(神聖時間軸)があると語られていた。本来の筋書きから外れた行動を取る「変異体」たちは正史からずれた時間軸を生み出してしまうため、神聖時間軸を守る時間変異取締局(TVA)によって存在を刈り取られてしまう(“剪定”)。神聖時間軸のロキは元々、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で強大なヴィラン・サノスに殺されている。つまりそれが彼のあるべき運命だったのだが、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でヒーローたちがサノスを倒すためタイムトラベルをした時、生前のロキが正史と異なる行動を取るきっかけを与えてしまった。そのため時間が枝分かれし、ロキが死ぬ歴史とは別にロキが生き残る歴史も生まれてしまったのだ。これが本シリーズの基本設定である。

変異体となったロキは別の変異体ロキたち(あったかもしれない別の可能性のロキ)と出会い、しかも女性版ロキであるシルヴィとは何とロマンチックな関係にもなった。見た目はともかく一応はどちらも自分なので、ロキは自分自身を愛することができるようになった…というような展開だったのだが、シルヴィが神聖時間軸を管理していた「在り続ける者」を殺したため、今や時間はコントロール不能な状態になり、“間違った歴史”がいくつも誕生してしまっている。シーズン2はこの状態から始まっており、TVAはてんてこまいだ。

シルヴィに言わせれば、“間違った存在”である変異体にも自由に生きる権利がある。しかしTVAに言わせれば、時間軸の乱立を許すと将来的にマルチバース同士の争いとなり全てが消滅する可能性がある。運命に抗うか、従うかの二者択一とも言える。この「時間の問題」には正解がないため、時間をかけても解決しない。さて、では変異体であるロキはこの難問にどのような答えを出すのか、というのが最も気になるところだ。

緊迫した状況ではあるが、シーズン1でロキと友人になったTVAの分析官メビウスの他、新キャラクターであるTVAの設備管理部所属の職員ウロボロスなど、魅力的な登場人物が雰囲気を和らげてくれる。良い意味でKYなウロボロスを演じているのは、『ロキ』と同じマルチバースものの『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』にも出演したキー・ホイ・クァンだ。しかし、今後サノス級のヴィランとなってくる征服者カーンの変異体が「在り続ける者」であり、新たな変異体のヴィクター・タイムリーも登場するため、ドラマは不穏な雰囲気に包まれている。

メビウス(の輪)も、ウロボロス(自分の尾を噛んだ蛇のシンボル)も、抜け出せない円環を思わせる名である。あろうことか、ロキという名前もゲルマン語でループを意味する語から来ているとする説すらあるようだ。努力も虚しく堂々巡り…なんて事態にならぬよう、ロキには自分の運命すら裏切り、ヒーローを差し置いてカーンを倒してしまうほどのヴィランになってほしいところだが、果たして…!?

【ストーリー】
マーベル・スタジオが贈る『ロキ』では、アベンジャーズの敵・ロキが、裏切り王子として再降臨する。『アベンジャーズ/エンドゲーム』後の物語を描く新シリーズだ。

【キャスト】
トム・ヒドルストン、オーウェン・ウィルソン、ソフィア・ディ・マルティーノ、ググ・バサ=ロー、ウンミ・モサク、タラ・ストロング、ジョナサン・メジャース、キー・ホイ・クァン 他

【スタッフ】
原案:マイケル・ウォルドロン
監督:ジャスティン・ベンソン&アーロン・ムーアヘッド 他
脚本:エリック・マーティン、マイケル・ウォルドロン 他

 

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