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『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』支配せよ。このホテルを。裏社会を。ジョン・ウィックの友人ウィンストンの過去を描くクライムアクション!

この映画は、つまり―
  • 『ジョン・ウィック』ユニバースを拡張する前日譚ドラマ!
  • 本編でお馴染み支配人ウィンストン・スコットの若かりし頃を描く!
  • あれ?なんか『ジョン・ウィック』っぽくないかも…今のところは。

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◆配信中の注目作

『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』(2023)

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ちょうど新作『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が公開されたばかりの『ジョン・ウィック』シリーズ』。同作には「結果、報い」というひとつの区切りを予感させるサブタイトルがついていながら、ユニバースの拡大は留まるところを知らない。来年には、アナ・デ・アルマス主演のスピンオフ映画『Ballerina(原題)』の公開が予定されている。タイトルのバレリーナとは、『ジョン・ウィック:パラベラム』で描かれたジョン・ウィックの古巣でもある暗殺者養成所「ルスカ・ロマ」に属する女殺し屋のことだ。そして今、本編の数十年前を描く前日譚ドラマ『ザ・コンチネンタル:ジョン・ウィックの世界から』も配信された。“ひとつの区切り”とは、つまるところこういうことなのかもしれない。即ち、“フェーズ1の終わり”であると。

『ザ・コンチネンタル』はその名の通り、本編でお馴染み、殺し屋御用達の「コンチネンタルホテル・ニューヨーク」支配人ウィンストン・スコットの若かりし頃を描いている。老ウィンストンは、他のキャラクターのように戦いこそしないものの、演じているイアン・マクシェーン(現在80歳!)の貫禄も相まって、圧倒的な存在感を漂わせていた。コンシェルジュのシャロン(演じていたランス・レディックは今年3月に亡くなってしまった…RIP)と固い信頼で結ばれていたり、ジョン・ウィックを「ジョナサン」と呼ぶ数少ない人物であったりと、過去が非常に気になるキャラクターだったのだが、本作はその過去に迫る作品になっている。

とは言え実際は、少なくとも第1話の時点では「これは『ジョン・ウィック』なのか?」と戸惑う方も多く出そうな内容だ。まず、本編に比べてアクションとドラマの比率が全く逆。本編はほぼ全編がアクションでセリフも少ない。アクションが全てを物語っているからだ。ところが、本作では今のところアクションはあまりない。ところどころにあるアクションシーンも、ハイレベルながら本編とは少しテイストが異なっている。ジョン・ウィックの動きは、良い意味で速すぎない。少しの遅さが打撃の重さと正確さを感じさせるのだ。本作のバトルは、それよりもテンポが速い。ここには正直違和感があったが、まあ当たり前だろう。本作で描かれる1970年代には殺し屋ジョン・ウィックはいない(生まれてはいるだろうが)。それどころか、殺し屋自体がほとんど出てきていない。まだ。

ウィンストンは殺し屋ではない。この時点では裏社会とはあまり関わりのない、ただのビジネスマンである。裏社会にどっぷりの生き別れの兄フランキーがコンチネンタルホテル・ニューヨークからある物を盗んだため、ウィンストンは過去に関わりがあるらしい支配人のコーマック(メル・ギブソン!)からフランキーを探すように依頼される…これがあらすじだ。この世には表社会なんて存在しないと言わんばかりに裏社会しか描かれない本編と違い、本作には普通の人間も登場する。特別なコインが必要なホテル内に忍び込み、通常の紙幣で支払いをしてしまう刑事のKDがまさにその象徴だろう。ウィンストンは本作でコーマックの部下である10代のシャロンと出会うが、本編にはなかった性描写もあり『ジョン・ウィック』というよりマフィアものと形容した方がしっくり来る。いや、それとも前日譚だけに、「まだ『ジョン・ウィック』になっていない」と言うべきか。

終盤に男女2人組の殺し屋“ヘンゼルとグレーテル”が登場したところで、雰囲気は本編にグッと近づく。彼らは一言も喋らないが、ともに前髪ぱっつんという奇妙なビジュアルでキャラが立っている。この漫画のようなキャラクターたちがシリーズの醍醐味なのだ! おそらく、第1話はあくまでもこの前日譚におけるプロローグに過ぎないのだろう。特に、グレーテルを演じているマリナ・マゼーパはダンサー・曲芸師でもあり、『マリグナント 狂暴な悪夢』のアノの奇怪な動きを実際にやってのけた人物である。彼女のアクションはきっと見たことのないものになるはずだ。…そうそう、エレベーター内のグレーテルの行動が非常にチャーミングなので、絶対に見逃さないでほしい。

本作で最も『ジョン・ウィック』らしいのは、アジア系俳優の卓越したアクションだ。フランキーの恋人イェンを演じたベトナム出身のニュン・ケイトは素晴らしい動きを披露している。『ジョン・ウィック:チャプター2』に登場した、手話が超クールな聾唖の殺し屋アレスしかり、シリーズの女性殺し屋はとても良いキャラクターばかりだ。第1話の最後に、ウィンストンは人生の転機を迎える。このままウィンストンもこのドラマも、完全に裏社会に突入していくのではなかろうか。来週配信の第2話にも期待するしかない。

【ストーリー】
「ザ・コンチネンタル」はジョン・ウィックの世界を象徴する、暗殺者が集うホテルの起源を描くミニ・シリーズ。1970 年代のニューヨーク、ウィンストン・スコットは兄がコンチネンタルホテルを襲撃したことによって勃発した、巨大な陰謀に挑むメンバーを集める。血で血を洗うこのアクションドラマでは、家族愛、運命、そして復讐を描いている。

【キャスト】
コリン・ウッデル、メル・ギブソン、アヨミデ・アデグン、ベン・ロンソン、ジェシカ・アレイン、ミシェル・プラダ、ニュン・ケイト、マリナ・マゼーパ 他

【スタッフ】
企画:グレッグ・クーリッジ、ショーン・シモンズ、カーク・ウォード
監督:アルバート・ヒューズ、シャーロット・ブランドストロム
製作総指揮:レット・リース、ポール・ワーニック、デレク・コルスタッド、チャド・スタエルスキ、デヴィッド・リーチ 他

 

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