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『グリーン・ナイト』騎士道と云うは生きることと見つけたり。A24が贈るアート色全開中世ファンタジー。

この映画は、つまり―
  • A24映画に慣れてきたら、アートに振り切った本作もぜひ
  • 異形の存在との、互いの首を賭けたゲーム
  • 一般的なイメージと真逆のへっぽこ騎士ガウェインががんばる!

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◆配信中の注目作

『グリーン・ナイト』

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

A24作品のいくつかは、世の中の大半の映画に不足しているアート性を備えながらある程度のエンタメ性も忘れないというバランスで成り立っており、それが新鮮な映画体験を求める観客層に刺さっているために人気なのだと思うが、時々アートに振り切った作品も登場する。本作『グリーン・ナイト』もその中の1本で、決して万人受けする内容ではない。テンポはかなりスローだし、分かりやすい説明ゼリフはないし、ファンタジーではありながらアクション要素はほぼない。ただし雰囲気は抜群なので、少し不気味な大人の寓話を求める方にはオススメだ。

本作がとっつきにくいのは、日本人にあまり馴染みがない物語だからでもあるだろう。しかし、おそらく主人公や周辺人物の名前には聞き覚えがあるはずだ。サー・ガウェイン、アーサー王伝説で知られるアーサー王の甥である。本作のあらすじ自体は非常にシンプル。ガウェインたちがクリスマスにパーティをしていたところ全身植物のような緑の騎士が現れ、ゲームを提案する。勇気をもって切りかかってきた者には強力な斧を与えるが、1年後のクリスマスに緑の礼拝堂にて緑の騎士と再会し、逆に一撃食らわなければならないというルールだ。ガウェインはこの勝負を受け緑の騎士の首を落とすが殺すことができず、約束を守るため旅に出る羽目になる。

作者不詳の原作『ガウェイン卿と緑の騎士』の中では、ガウェインは立派な騎士だ。しかし本作のガウェインは、騎士とは名ばかりのただのダメ男になっている。自堕落な生活を送り、粋がって緑の騎士の挑発に乗るも自分の剣がなくアーサー王から借りる始末(聖剣エクスカリバー!)。1年間の猶予があったのに変わらず遊んで過ごし、ビクビクしながら仕方なく緑の礼拝堂を探しに行く。タイトルにある「グリーン・ナイト」は緑の騎士と思わせて、青二才(グリーン)の騎士ガウェインを指しているような気もする。重厚なルックからかなり高尚な物語に見えるが、実際は「はたしてへっぽこ騎士は立派な騎士に成長できるのか!?」がテーマの珍道中なのだ。

ガウェインは、途中で出くわす試練で騎士道精神を試されるもことごとく失敗し、観客の笑いを誘う。しかし、中々覚悟を決められない彼を本当の意味で笑える者がどれだけいるだろうか? 将来に何となくの希望を持ちながらも、それを叶えるための適切な行動に踏み切れない…というのはありがちなことだろう。とは言え、緑は若々しい色であると同時に腐敗をイメージさせる色でもある。主演のデヴ・パテルは愛すべきダメ男を好演しているが、ガウェインの物語からは「あなたは最初から最後まで緑色のままで終わるの?」と問いかけられているようだ。130分、スローペースでより長尺に感じるが、真っ当に生きる覚悟を決めるには必要な時間かもしれない。

【ストーリー】
アーサー王の甥であるサー・ガウェインは、まだ正式な騎士ではなかった。彼には人々に語られる英雄譚もなく、ただ空虚で怠惰な日々を送っていた。クリスマスの日。アーサー王の宮殿では、円卓の騎士たちが集う宴が開かれていた。その最中、まるで全身が草木に包まれたような異様な風貌の緑の騎士が現れ、“クリスマスの遊び事”と称した、恐ろしい首切りゲームを提案する。その挑発に乗ったガウェインは、彼の首を一振りで斬り落とす。しかし、緑の騎士は転がる首を堂々と自身で拾い上げると、「1年後のクリスマスに私を捜し出し、ひざまずいて、私からの一撃を受けるのだ」と言い残し、馬で走り去るのだった。それは、ガウェインにとって、呪いと厳しい試練の始まりだった。1年後、ガウェインは約束を果たすべく、未知なる世界へと旅立ってゆく。気が触れた盗賊、彷徨う巨人、言葉を話すキツネ・・・生きている者、死んでいる者、そして人間ですらない者たちが次々に現れ、彼を緑の騎士のもとへと導いてゆく。

【キャスト】
デヴ・パテル、アリシア・ヴィキャンデル、ショーン・ハリス、ケイト・ディッキー、ジョエル・エドガートン、サリタ・チョウドリー、バリー・コーガン、ラルフ・アイネソン 他

【スタッフ】
監督・脚本:デヴィッド・ロウリー

 

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