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『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』答えは見えているのに掴めない。ガラスのタマネギに覆われた真実にたどり着け!

この映画は、つまり―
  • ライアン・ジョンソンの傑作ミステリー再び!
  • よりキュートさを増したおとぼけ名探偵ブノワ・ブラン
  • 伏線回収の気持ちよさに酔いしれよう!

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◆配信中の注目作

『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』(2022)

Netflixで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

『スター・ウォーズ』ファンが何よりも恐れる男。それがライアン・ジョンソン監督だ。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』では誰もが思ってもない方向に話を転がした結果、ファンの間で炎上騒ぎとなった。シリーズのライトファンである筆者は同作もわりと気に入っているが、これでジョンソンの名を聞くだけで警戒してしまうアレルギー状態になってしまった方も一定数いるだろう。『スター・ウォーズ』にはマッチせずとも、その予想外で大胆なストーリーテリングは、実にミステリー向きだったと言える。次に監督した、アガサ・クリスティーにオマージュを捧げた『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』では、驚きの展開でミステリーファンを、そしておそらくは『スター・ウォーズ』ファンさえも唸らせてみせた。

『ナイブズ・アウト』シリーズでは、ジョンソンのオリジナル名探偵で、ダニエル・クレイグが演じるブノワ・ブランが活躍する。ただし前作では、アナ・デ・アルマスがワトソン的役回りであるのにかかわらず、シャーロックを食ってしまった。後にクレイグと再共演した『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』で、またクレイグを凌ぐ存在感を発揮する伏線だったかのように。本作も前作同様、曲者スター勢ぞろいで犯人を予想できないようにしているので、ここでは新たなワトソンの正体も明かさないことにするが、今回こそシャーロック、ブノワ・ブランの魅力が堪能できる作品になっている。

フランス人のような響きの名前を持ちながらなぜかアメリカ南部訛りで話し、普段は礼儀正しくも卑劣な犯行に及ぶ者は口汚く罵る。謙虚でとぼけたかわいい名探偵、それがブノワ・ブランだ(私生活も少し明かされる!)。今回ブランは、ギリシャの孤島にある大富豪マイルズ・ブロン(ブランとブロンでややこしい)の別荘で行われるマーダー・ミステリーに、ブロンの友人たちとともに招待される。主催者のブロン自身が被害者役となり、参加者の中の誰かを殺人犯役と見立てた推理ゲームだ。この別荘こそ、巨大なガラスでできたタマネギ型の邸宅“グラス・オニオン”。ブロンは新たな固形燃料でエネルギー革命を起こすと高らかに宣言し、楽しい週末になると思われたが、何者かの手によって本当に犠牲者が出てしまう…。

ミステリーを面白くするためには、今後の展開を仄めかす伏線の張り方が非常に重要だ。それが指す本当の意味は明らかにしなくても、伏線となる事象自体は控えめに、しかしきちんと観客に伝えておかないとフェアではない。中身が丸見えのグラス・オニオンと同じで、ちゃんとヒントは画面に映っているわけだ(至極当然のことのようでいて、たまにこれを破っている映画がある)。全編に漂うユーモアに笑いながら、参加者の笑顔のマスクの下に隠された本性を見破らなければならない。前半に張りまくられた伏線を怒涛のように回収する後半には上質なミステリーならではのカタルシスを得られるし、最後にはダメ押しの燃えるアツい展開まで。前作に続き本作も素晴らしく、『ナイブズ・アウト』は現代の新たな傑作ミステリーシリーズと呼ぶにふさわしい出来だ。ジョンソンには続編制作の意欲もあるようなので、大いに期待して良いだろう。

【ストーリー】
ネッカチーフと小粋な水着をスーツケースに詰めて、さっそうと現れた名探偵ブノワ・ブラン。だが、殺人の謎解きゲームに興じながらギリシャで優雅に過ごすはずの週末が恐ろしい展開に…。

【キャスト】
ダニエル・クレイグ、エドワード・ノートン、ジャネール・モネイ、デイヴ・バウティスタ、ケイト・ハドソン、キャスリン・ハーン、レスリー・オドム・Jr.、ジェシカ・ヘンウィック、マデリン・クライン

【スタッフ】
監督・脚本:ライアン・ジョンソン

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