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『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実』 解決しないも地獄、解決するも地獄。悪夢の事件にケイト・ウィンスレットが挑む。

この映画は、つまり―
  • エミー賞で3部門受賞!骨太なミステリー×家族ドラマ
  • 皆が顔見知りの田舎町だからこその閉塞感
  • “美化されていない”リアルな中年女性を演じたケイト・ウィンスレット

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◆配信中の注目作 

『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実』(2020)

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文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

 

日本時間9月20日、アメリカのテレビ番組で優秀な作品に対して贈られるプライムタイム・エミー賞の授賞式が行われた。リミテッドシリーズ(1シーズンで完結のドラマ)/テレビ映画部門で主演女優賞(ケイト・ウィンスレット)、助演男優賞(エバン・ピーターズ)、助演女優賞(ジュリアンヌ・ニコルソン)を受賞したドラマが、今回紹介する『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実』だ。

ペンシルベニア州の田舎町イーストタウンでシングルマザーの少女が殺される凄惨な事件が起こり、中年の女性刑事メアが事件を担当することになる。メアは優秀な刑事だが、悪人とは言えないまでも善人であるとも言いがたい。人当たりがすこぶる悪いのだ。それもある意味仕方ない。メアは父と息子を自殺で亡くした過去を未だ克服できず、息子が遺した幼い孫の親権を義理の娘と争っている最中で、離婚したばかり。その上、解決しない友人の娘失踪事件まで抱えている。今回も犯人を見つけられなければ、また未解決かと住人になじられる。犯人を見つければ、この田舎は全員が顔見知りだ、知り合いの家族が崩壊することになる。どの道を選ぼうとも地獄、まさに悪夢(ナイトメア)である。

イーストタウンは小さい町だけに、住民は多くなくともその関係性は複雑だ。そのせいで、誰もが怪しく見えてくる。実際、毎話ごとに新たな容疑者が浮上し、全く話が読めない。よく都会の人間関係の希薄さが問題視されるが、ここまで濃いのも考え物。刑事なんて因果な職業を選んでしまったメアは、恨みを買いながら友人たちを疑うことになる。それなのに事件は一歩も前に進まない。自らの過去も振り切れず、一歩も前に進めない。この閉塞感で、走ってもいないのに息が詰まるドラマなのだ。

メアを演じるのは、来月で46歳になる大女優ケイト・ウィンスレット。本作は、ケイトがラブシーンで映る自身のお腹のたるみを修正しないよう要求したことでも話題になった。顔のしわもそのまま。俳優やモデルの画像・映像は当然のように加工・修正される時代になったが、逆にありのままの姿を見せるべきとする流れも生まれている。本作は、人生に行き詰った中年女性を内面含め美化せずに描き出した。だからこそ、観客はメアとともに疲れ、本当の意味で応援できるようになったのだ。人類にとっては小さいが、彼女にとっては大きな飛躍となるだろうその一歩が訪れる瞬間を見逃さないように。

【ストーリー】
平穏な田舎町で発生した少女惨殺事件。刑事メアは捜査に当たるが、誰もが容疑者となりうる状況で難航。父親、元恋人、親友、神父…少女を取り巻く住民たちの想いは絡み合い、やがて事件は思いもよらない展開を見せていく。待ち受ける衝撃の<真実>とは―。

【キャスト】
ケイト・ウィンスレット、エバン・ピーターズ、ジュリアンヌ・ニコルソン、ジーン・スマート、アンガーリー・ライス、ガイ・ピアース

【スタッフ】
監督:クレイグ・ゾベル

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