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『HOW TO BLOW UP』環境保護は地球市民の義務。サボるのならば、正しく“サボ”れ。

◆今週公開の注目作

『HOW TO BLOW UP』

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

もしも、本作『HOW TO BLOW UP』の登場人物たちがクリストファー・ノーラン監督の野心溢れるSF映画『インターステラー』を見たら、きっと怒り狂うだろう。普通に考えると、環境破壊をテーマにした作品なら「もっと地球を大事にしよう」というメッセージが込められそうなもの。ところが同作では、地球の環境破壊が進んだ結果、主人公たちは何と地球を捨て別の居住可能な惑星を探しに宇宙へ旅立つのだ。確かに、星間(=インターステラー)航行が実現した時代においては、最悪それでも良いのかもしれない。ただし現時点で人類は、ハビタブルゾーン(生命が居住可能な領域)内にあり、地球に最も近い惑星である金星や火星の地すら踏めていない。ならばやはり、しばらくはできるだけ長く地球に住み続ける他ないだろう。だが毎年のように、前年以上に暑くなっているようにも感じてしまう。

本作は、そんな現状に怒りを抱く若者たちに焦点を当てたエコロジカルなスリラーだ。現実世界では、化石燃料の使用について政府に抗議するため、ゴッホの『ひまわり』にトマトソースをぶっかける(一応無事だった)などして注目を集めたイギリスの「ジャスト・ストップ・オイル」などの環境運動団体があるが、劇中での計画はさらに過激。邦題の『HOW TO BLOW UP』(〇〇の爆破法)では何が爆破の対象なのか分からないが、原題または原作本のタイトルを見れば一目瞭然。『HOW TO BLOW UP A PIPELINE』。吹っ飛ばすのは石油パイプラインなのだ。

地球の環境がどうなろうと知ったことか、というアンチ環境保護過激派の方はそうそういないだろう。多くの人が、特に行動には移さずとも、何となくでも地球の未来を案じているに違いない。だからと言って、正義を叫ぶ環境活動家の、時にこちらの理解を超えた、もはやテロとも呼べる破壊活動(サボタージュ)には諸手を上げて賛同するのも難しいはずだ。……本作は、その壁をも吹っ飛ばそうとする。若者たちは単純に正義感に駆られているのではなく、大企業による環境破壊のせいで自らの人生も破壊された者ばかり。高尚な目的だけでなく、復讐心もあるのだろうが、どうしても共感してしまう。

「パイプライン爆破法」の名の通り、爆破までの手順が克明に描かれているので、真似しようと思えばできてしまいそうだ。しかも、『オーシャンズ』シリーズなどの、チームでデカいお宝を狙ういわゆる「ケイパーもの」を思わせる作りで、実際に感化される人も出てくるのではないだろうか(FBIも本作を危険視しているようだ……)。スパイク・リー監督作『ドゥ・ザ・ライト・シング』の中では、どんどん気温が高まるにつれ町の住民のボルテージも上がり暴動に結びつく。熱波に浮かされて、戯言を抜かしているのは若者か、政府か。「ドゥ・ザ・ライト・シング(正しいことをしろ)」。地球にとって、人類にとって、何が正しいことなのか。本作があなたに火を付けたなら、爆発するその日はもう近い。

【ストーリー】
環境破壊に人生を狂わされたZ世代の環境活動家たちが、石油パイプラインを破壊する大胆な作戦を実行する。やがて過激な決意が、友人、恋人、苦難に満ちた物語を持つ仲間たちを巻き込みながら暴力の象徴(=パイプライン)を爆破するという大胆なミッションへと結びついてゆく。若い世代のエネルギーは、予期せぬ混乱を招きながら、爆発的フィナーレへと疾走する。

【キャスト】
アリエラ・ベアラー、サッシャ・レイン、ルーカス・ゲイジ、フォレスト・グッドラック、クリスティン・フロセス、マーカス・スクリブナー、ジェイミー・ローソン、ジェイク・ウェアリー 他

【スタッフ】
監督:ダニエル・ゴールドハーバー

公式サイト:https://howtoblowup.com/

 

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