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『7A号室』彼らに目をつけられれば、もう生き方は選べない。ならば……。

この映画は、つまり―
  • あの往年の名作ホラー『ローズマリーの赤ちゃん』の前日譚
  • 女性にとってのホラー、妊娠恐怖
  • 独特でイノセントな雰囲気の女優ジュリア・ガーナー

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◆配信中の注目作

『7A号室』

配信先:Prime Video

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

数十年前の名作の続編や前日譚、スピンオフが作られることはもう珍しくもなんともなくなり、昨年も『オーメン』から約50年経っての前日譚『オーメン:ザ・ファースト』が公開されたばかりではあるが、まさかあの作品の前日譚まで作られるとは。『レリック -遺物-』のナタリー・エリカ・ジェームズ監督の新作ホラー『7A号室』は何と、ロマン・ポランスキー監督の『ローズマリーの赤ちゃん』の前日譚だった。本作で主人公テリーが出会う、異様に親切な老夫婦の名字はカスタベット。『ローズマリーの赤ちゃん』の主人公ローズマリーが出会う、異様に親切な老夫婦の名字もやはりカスタベット。そう、本作の舞台は『ローズマリーの赤ちゃん』でおぞましい事件が起こるのと同じニューヨークのアパート「ブラムフォード」で、時系列的には同作の少し前になる。

そして、思い出してほしい。または、配信で確認してほしい。『ローズマリーの赤ちゃん』の冒頭で、ローズマリーがアパートの地下の洗濯室で出会う女性がいたはずだ。7階のカスタベット家の居候というこの女性こそがテリー(キャラクター設定は変えられていそうだが)であり、その後“あんなこと”になるのが確定している人物である。ローズマリーとテリーのシーンはほんのわずかで、あまり覚えていない方も多いかもしれないので今さらネタバレということもないが、彼女の結末は一応伏せておこう。本作のテリーは足を怪我したダンサーで、痛みを薬で紛らわせながらいくつものオーディションを受けては落ち、受けては落ちを繰り返している。家賃も払えない中偶然部屋を提供してくれるのがカスタベット夫妻だ。金銭の余裕が出てきて、だんだんダンサーとしても芽が出始めるテリーであったが、もちろんそんな美味い話はなく……。

前日譚ではあるが、ストーリー自体は『ローズマリーの赤ちゃん』とかなり似ている。というのも、カスタベット夫妻がローズマリーに対して行ったことが、先にテリーに行われようとするからだ。このシリーズで描かれているホラー要素は、はっきり言ってしまうと妊娠に対する恐怖。『7A号室』と『オーメン:ザ・ファースト』はどちらも女性監督で、女性が自分の身体をコントロールできない恐ろしさを描いている。『ローズマリーの赤ちゃん』は当時実際に起こっていた、胎児に悪影響を与えるサリドマイドの薬害問題の雰囲気を引きずっていたが、女性監督の2作は過去が舞台とは言え現代の映画なだけあって、合意のない性行為からの妊娠という側面が強く出ているように思えるのが興味深い。

かなり刺激的だった『オーメン:ザ・ファースト』と比較すると、さすがに本作は大人しく見えるも、テリーがダンサーなだけあって、幻覚シーンは悪夢的なダンスとして表現されていて面白い。テリーを演じるジュリア・ガーナーは常々イノセントな雰囲気のある女優だなと思っていたが、これは昔見た彼女の出演作『エレクトリック・チルドレン』の影響だろう。同作の中で彼女は処女懐妊するのだが、その理由は何と“悪魔的音楽”ロックの曲が入っているカセットテープ! それが本作にこのような形で繋がるとは、奇妙な縁もあったものだ。ちなみにガーナーはこの夏公開のマーベル映画『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』でシルバーサーファーを演じているので、過激なホラーが苦手な方は彼女の演技力を楽しむ意味で本作を見てみても良いかもしれない。

【ストーリー】
ニューヨーク市で富と名声を得ようと夢見ていた若く野心的なダンサーは運悪く大けがを負ってしまうが、年配の裕福なカップルの高級マンションに招き入れられ成功を約束される。ところが記憶があいまいな夜を過ごした後、不気味な出来事が相次ぐようになり、7A号室に邪悪な何かが住んでいると疑念を抱き始める。

【キャスト】
ジュリア・ガーナー、ダイアン・ウィースト、ケヴィン・マクナリー、ジム・スタージェス 他

【スタッフ】
監督:ナタリー・エリカ・ジェームズ
脚本:ナタリー・エリカ・ジェームズ、クリスチャン・ホワイト、スカイラー・ジェームズ

 

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