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「止まったら爆発」から50年——再起動するスリルとリアル『新幹線大爆破』Netflix版の真価

この映画は、つまり―
  • 「加速し続ける」物語が映し出す、現代社会の緊張感
  • 本物が走るリアリティ——JR東日本の全面協力が実現した“現実感”
  • 群像劇としての厚み——名もなき人々の決断がドラマを加速させる

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◆今週配信の注目作

『新幹線大爆破』

Netflixで視聴する⇒こちら

 

文:アイエリ

1975年、列車に爆弾が仕掛けられた――という一報から始まる、日本映画史に残るパニックサスペンス『新幹線大爆破』。監督は佐藤純彌、主演に高倉健、千葉真一、宇津井健らを迎えたこの作品は、ただの娯楽作では終わらなかった。国家、組織、そして個人のドラマが入り乱れる社会派スリラーとして高く評価された。そして2025年。あの物語がNetflixで、樋口真嗣監督によって再び走り出す。時代を超え、加速するスリルの真髄とは何か。

「加速し続ける」物語が映し出す、現代社会の緊張感
1975年版のストーリーはシンプルかつ強烈だった。爆弾を積んだ新幹線ひかり109号。時速80km以下に落とすと爆発するという脅迫に対し、警察と国鉄(現JR)は知恵と時間との戦いを繰り広げる。爆弾を仕掛けたのは、社会の中で追い詰められた元技術者たち。一見テロのようでいて、その動機には個人的な絶望と現実への怒りが渦巻いていた。当時の日本は高度経済成長の余熱をまといながら、都市化と格差、会社至上主義と人間疎外が社会の裏面に潜んでいた。犯人たちはその裏側の象徴であり、物語は「テロを描いた作品」ではなく「追い詰められた人々が選んだ最後の抵抗」として観客に突き刺さった。そして2025年。新幹線は、もはや夢ではなく、誰もが使う日常の足だ。だからこそ、爆弾が仕掛けられたその日常が壊れていく恐怖は、より身近に迫ってくる。ネット社会の不安、情報過多、分断と孤立。現代の不安要素が作品全体に緊張感を与え、1975年版が内包していた社会への問いが、より鋭くアップデートされる。

本物が走るリアリティ——JR東日本の全面協力が実現した“現実感”
オリジナルでは国鉄の協力を得られず、セットやミニチュアで再現した新幹線や、ゲリラ撮影などが行われた。だがその制限が、逆に創意工夫と迫力につながっていた。対してNetflix版では、JR東日本が全面協力。実際の駅、列車、管制センターなど、すべてが“本物”で描かれる。樋口真嗣監督は、『のぼうの城』や『シン・ゴジラ』などでも知られる、特撮とリアルの融合に長けた映像作家。今回も、迫力ある映像を徹底的に突き詰めている。実際に働く運転士や保守員の動きを取り込み、そこにリアルな判断や葛藤が反映される。だから観ていてドキドキするのは、列車が爆発するかどうかだけじゃない。たとえば、通報から管制、指令、乗務員への伝達のラグ。乗客のパニックをどう抑えるか。安全と速度のジレンマ。これらすべてがリアルで、観客自身が列車に乗り込んでいるような感覚を覚える。

群像劇としての厚み——名もなき人々の決断がドラマを加速させる
1975年版は、ただの爆弾サスペンスではない。車内の乗客、国鉄の管理者、警察、犯人グループ。それぞれの視点が交錯し、ドラマは一本線ではなく網のように広がっていく。高倉健、宇津井健、千葉真一といった名優たちが、国家と個人、正義と理性のあいだで揺れる人間たちを演じたことで、物語は単なるパニックでは終わらなかった。Netflix版も、その群像劇スタイルを踏襲する。出演は草彅剛、斎藤工、のん、尾野真千子、要潤、尾上松也など多彩。彼らは新幹線の中だけでなく、指令所、警察、報道といった様々な現場に配置され、それぞれの立場で緊急事態に向き合う。誰が味方で、誰が敵なのか。自分の正義と他者の安全がせめぎ合うなか、個々の物語が予想外の形で絡み合っていく。そして最大のポイントは、犯人役のキャストや動機が明かされていないこと。1975年版のように、犯人の内面を軸とした展開になるのか、それとも新たな構造が仕掛けられているのか。観客は、列車と同じく、先が見えない緊張の中を走ることになる。

再び「走り出した物語」に乗り遅れるな
『新幹線大爆破』は、スリルと社会性を高いレベルで両立させた数少ない日本映画だ。そしてその本質は、2025年の今こそ深く響く。単なるパニック映画としてではなく、社会の縮図としての“走り続ける列車”。その中に乗り合わせた名もなき人々の物語が、スクリーンを突き破ってくる。Netflix版『新幹線大爆破』は、4月23日、世界独占配信。止まったら終わり。だから、走りながら考えろ。爆発寸前のスリルと、胸に残る余韻が、きっとそこにある。

Netflix映画『新幹線大爆破』
4月23日(水)よりNetflixにて世界独占配信

【キャスト】
草彅剛 細田佳央太 のん 要潤 尾野真千子 豊嶋花 黒田大輔 松尾諭 大後寿々花 ・ 尾上松也 六平直政 ピエール瀧 坂東彌十郎 / 斎藤工

【スタッフ】
監督:樋口真嗣
原作:東映映画「新幹線大爆破」(監督:佐藤純彌、脚本:小野竜之助/佐藤純彌、1975 年作品)
エグゼクティブ・プロデューサー:佐藤善宏(Netflix)
プロデューサー:石塚紘太
ライン・プロデューサー:森賢正
准監督:尾上克郎
脚本:中川和博 大庭功睦
音楽:岩崎太整 yuma yamaguchi
撮影:一坪悠介 鈴木啓造
照明:浜田研一
録音:田中博信
美術:佐久嶋依里 加藤たく郎
スタイリスト:伊賀大介
編集:梅脇かおり 佐藤敦紀
アクション・コーディネイター:田渕景也
VFXスーパーバイザー:佐藤敦紀
ポストプロダクションスーパーバイザー:上田倫人
Compositing Supervisor:白石哲也
リレコーディングミキサー 佐藤宏明 (molmol)
音響効果 荒川きよし
ミュージックスーパーバイザー 千陽崇之
特別協力:東日本旅客鉄道株式会社 株式会社ジェイアール東日本企画
制作プロダクション:エピスコープ株式会社
製作:Netflix

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