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『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』好奇心に注意せよ。9つ目の命を失わないために…。

この映画は、つまり―
  • ギレルモ・デル・トロ版『世にも奇妙な物語』
  • 一癖も二癖もある監督ばかりが大集合
  • デル・トロお墨付きの恐ろしいほど醜悪で美麗な世界観

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◆配信中の注目作

『ギレルモ・デル・トロの驚異の部屋』(2022)

Netflixで視聴するこちら

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

本作は、『パンズ・ラビリンス』や『シェイプ・オブ・ウォーター』など、ダーク・ファンタジー、ホラーの監督として知られるギレルモ・デル・トロがクリエイター・製作総指揮・脚本を務めた、8編のオムニバス・ホラーだ。毎エピソードの最初に本人が出てきて、その回にまつわる怪について簡単に紹介してくれる。ストーリーテラー、タモリのようだ。これは、ギレルモ・デル・トロ版の『世にも奇妙な物語』と言っても良いだろう。デル・トロは監督を務めていないが、代わりにホラー映画界で活躍する8人の監督たちが集められている。

原題は『Guillermo del Toro’s Cabinet of Curiosities』。これを現代的に直訳すると「ギレルモ・デル・トロの、珍奇な物の入った飾り戸棚」となる。だが、「キャビネット・オブ・キュリオシティーズ」は固有名詞で、日本語だと「驚異の部屋」と訳される。元々キャビネットは戸棚でなく小部屋を意味する言葉だった。15世紀ごろ~18世紀のヨーロッパでは、貴族や学者によって自身のコレクションを飾る部屋が作られた。彫刻など美しいアートの他に、曰く付きの宝石や奇異な絵画、動物のミイラなど…。これが、今日の博物館の起源と言われている。デル・トロは、毎回豪華で精巧な意匠のキャビネットとともに登場する。つまり、それぞれのエピソードがデル・トロにとって珠玉のホラー・コレクションとなっているわけだ。

8人の監督の中で、ホラーファンが特にキュリオシティ(好奇心)を惹かれるのは、ヴィンチェンゾ・ナタリ、パノス・コスマトス、ジェニファー・ケントの名だろう。ナタリは、『CUBE』でシチュエーション・スリラーブームの火付け役となったことであまりに有名だ。コスマトスは、ニコラス・ケイジ主演の『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』というドラッギーな超絶怪作を生み出した。ケントはシングルマザーを主人公にしたサイコロジカルホラー『ババドック ~暗闇の魔物~』で、観客の神経をすり減らす恐怖を繊細なタッチで表現した。彼らはそれぞれ、第2話「墓場のネズミ」、第7話「観覧」、第8話「ざわめき」を監督している。

第2話「墓場のネズミ」は、借金を返すため夜な夜な墓荒らしをして金品を漁る男の話だ。全エピソードの中で最もコンパクトでテンポが良く、マンガ的な分かりやすさやユーモアまで感じさせる。第7話「観覧」では、謎の富豪に集められた様々な分野のスペシャリストたちが体験する“死ぬほど”レアな出来事を拝める。どぎつい色調とトリッピーな音楽に包まれる「見るドラッグ」だ。第8話「ざわめき」は、子を亡くした鳥類学者夫婦の妻が、鳥の観察のため訪れた屋敷で遭遇する怪異を描いている。分かりやすいジャンプスケアはなく、静謐な空気の中で混じり合う恐怖と悲しみのホラー・ドラマだ。どれも個性的で恐ろしく、醜く、退廃的な美しさに満ちている。

猫には9つの命があるという。だがその猫をも殺すものがある。それは好奇心だ。キュリオシティ(curiosity)は「注意(cure)」から派生した言葉なのだ。気をつけろ。各エピソードの恐怖で1つずつ命を失えば、終わったころにはもう最後の命しか残らない。…まあ、あなたが猫でないのなら、そんな先のことを心配する必要はないか。

【ストーリー】
奇妙な悪夢から紡ぎ出される、8つの恐ろしい物語。背筋も凍るような恐怖を美しいビジュアルで描く、ギレルモ・デル・トロのホラーコレクション。

【キャスト】
ティム・ブレイク・ネルソン、デヴィッド・ヒューレット、F・マーレイ・エイブラハム、ケイト・ミクーチ、ダン・スティーヴンス、ベン・バーンズ、ルパート・グリント、ピーター・ウェラー、ソフィア・ブテラ、エッシー・デイヴィス 他

【スタッフ】
監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ、パノス・コスマトス、ジェニファー・ケント 他
クリエイター:ギレルモ・デル・トロ
製作総指揮:ギレルモ・デル・トロ
脚本:ギレルモ・デル・トロ

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