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『アンジェントルメン』ナチス野郎は、真心込めて、○します。

◆今週公開の注目作

『アンジェントルメン』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

映画を見ていると、スパイなるものはよく紳士的に振る舞っている。『007』シリーズのジェームズ・ボンドしかり、『キングスマン』のエグジー・アンウィンしかり……。もちろんどちらも“紳士の国”イギリスのスパイではあるのだが、本作のスパイはイギリス人ながら非常に紳士的ではない。これまでにアメリカのスパイドラマ、『0011ナポレオン・ソロ』を映画化した『コードネームU.N.C.L.E』や、スパイ映画ではないがその名も『ジェントルマン』という作品を撮ったガイ・リッチー監督が手掛けた本作『アンジェントルメン』は、やはりタイトルからして非紳士的だ(原題は『The Ministry of Ungentlemanly Warfare』=非紳士的な戦争省)。

舞台は第二次世界大戦真っ只中。イギリスはナチス・ドイツ軍のUボート(潜水艦)に補給船を何度も沈められるも、有効な手が打てずにいた。そこで当時のチャーチル首相の下で、Uボート側の補給路を断つための「ポストマスター作戦」が立案されたのだが、大きな問題があった。目的地はスペイン領のフェルナンド・ポー島だったので、もちろん非合法であり、非公式的に行わなければならなかったのだ。言い換えれば、実行者は敵のナチスに見つかれば拷問や殺害は避けられず、味方のイギリス軍に見つかっても一生牢獄行き。

この“ブラック・オプス(ブラック・オペレーション)”は、か弱い紳士の手に余る。白羽の矢が立ったのは、ヘンリー・カヴィル演じる実在のガス・マーチ=フィリップス少佐だ(カヴィルはジェームズ・ボンド役の候補になったことがあり、『コードネームU.N.C.L.E』ではナポレオン・ソロを演じていた)。気に入った物は上官のだろうとナチスのだろうとくすねるし、大勢の敵兵に銃を向けられていても全く動じないどころか笑い出す豪胆な人物として描かれている。ちなみに、彼に作戦遂行を命令する男は“M”と呼ばれており、その隣にはイアン・フレミングという男がいる。そう、フレミングは『007』の生みの親であり、同作の中でジェームズ・ボンドの上司がMだ。マーチ=フィリップス少佐はジェームズ・ボンドのモデルと言われている(フレミングは『0011 ナポレオン・ソロ』の方にも関わっていたのが面白い)。

強靭な精神力を持つ、というか軍人としては狂人にも見える少佐と彼が選んだチームの前では、ナチス野郎に人権などない。数えるのも面倒なほどにばったばったと切り捨てられていく。特に相棒の大男ラッセンのアクションは痛快で、即席で作った彼の弓の前ではナチスの兵はペラペラの紙も同然。あまりの威力に思わず笑ってしまう。こちらの倫理観も狂い出すほど紳士さのカケラもない彼らだが、作戦に対しては紛れもなく真摯だ。44日間のタイムリミットの中、彼らは誰にも見つからず海を渡り、囚われの仲間を救い出し、切れ者のナチス指揮官を出し抜いて作戦を完遂しなければならない。戦争ものながら難しくもなく、ガイ・リッチーらしいアクション映画になっている。死体数は多いがグロさはあまりないし、基本的にはコメディ(なんて非紳士的な!)。だが単純な脳筋映画ではなく、適度に頭脳戦も展開するので満足度は高いだろう。新年度、「なにくそ!」という気持ちで頑張りたい方にオススメだ。

【ストーリー】
第二次世界大戦中、独ナチス軍の猛攻により英国は窮地に追いこまれていた。ガス少佐は特殊作戦執行部に召喚され、ガビンズ‘M’少将とその部下イアン・フレミングから任務を言い渡される。「英国軍にもナチスにも見つからず、北大西洋上のUボートを無力化せよ――」。“イカれた”メンバーを集め漁師を装い船で現地へと向かうガス。潜入工作員のマージョリー、RHらとともに作戦決行に向け準備を進めるが、予想だにしない展開により事態は暗礁へと乗り上げてしまい……。

【キャスト】
ヘンリー・カヴィル、エイザ・ゴンザレス、アラン・リッチソン、アレックス・ペティファー、ヒーロー・ファインズ・ティフィン、バブス・オルサンモクン、ヘンリー・ゴールディング、ティル・シュヴァイガー、ケイリー・エルウィズ、フレディ・フォックス、ロリー・キニア 他

【スタッフ】
監督:ガイ・リッチー
脚本:ポール・タマシー、エリック・ジョンソン、アラッシュ・アメル、ガイ・リッチー
製作:ジェリー・ブラッカイマー

公式サイト:https://ungentlemen-movie.com/

 

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