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『デーヴァラ』彼が笑えば、頬が赤く染まる。彼が怒れば、海も赤く染まる。

◆今週公開の注目作

『デーヴァラ』

 

文:屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

インド映画はやはり規格外だ。例え現代劇であっても、どこか神話めいた物語に見えてくる。それはこの『デーヴァラ』も例外ではない。主演のNTR Jr.(ナンダムーリ・ターラカ・ラーマ・ラオ・ジュニア)、通称「タラクさん」が出演したあの大傑作『RRR』もまさにそんな作品だった。実際に神話を基にしているかどうかとは別に、その荒唐無稽さに説得力を持たせてしまう不思議なリアリティがあるからだ。コミカルさとシリアスさが同居するのがインド映画の最大の持ち味と言っても良いだろう。

「デーヴァラ」とは、NTR Jr.演じる主人公の名だ。彼は海を支配し、鮮やかな密輸の技術を持つ益荒男(ますらお)であり、ひとつの村のリーダーでもある。デーヴァラの周りにはそれぞれ村をまとめる男が3名おり、彼らの4つの村は海を血で赤く染めると言われ恐れられていた。しかしデーヴァラはいたずらに人を殺すのを好まず、やがて好戦的なバイラほか村のリーダーたちと仲違いし、同胞の血で海を赤く染める惨事へ発展していく、というのがあらすじだ。……前半の。

本作の上映時間は約3時間! 長尺なのはもはやインド映画おなじみとは言え、鑑賞にはスタミナを求められる。やはりずっとクライマックスのような映画で、全部盛りである。デーヴァラの無双アクション、どこか滑稽でありつつも否応なくテンションを上げてくるミュージカル・ダンスシーン、そして“神話”にふさわしい英雄の誕生。特に、ハカよろしく戦闘の前に士気を上げるための曲で披露されるダンスは非常にトライバル(部族的)な奇妙さで、新鮮さと中毒性がある。ケレン味たっぷりのインド・アクション映画には、「笑ってしまうほどカッコ良い」という表現がピッタリだ。

とは言え、デーヴァラのターンは本作の半分ちょっとに過ぎない。しかし、NTR Jr.は全編出ずっぱりだ。ここで詳しくは明かさないが、彼はデーヴァラとは正反対のキャラクターで後半も画面を支配する。デーヴァラは強く逞しく、とにかくカッコ良さで押し切る主人公。そしてもうひとりの主人公は3枚目で、秘められた力は持っているがへなちょこでキュートなタイプだ。主人公の交代に合わせ映画のテイストも一変、シリアスでバイオレントな前半と打って変わって、後半は楽しいラブコメになる。映画的にも、NTR Jr.ファン的にも、一粒で二度美味しい仕上がりだ。

本作だけでストーリーは完結しているように見えるが、恐ろしいことに3時間もありながら物語のほとんどは過去の話であり、現在パートだけ見ると本作ではほとんどと言って良いほど何も語られていない。そう、すでに映画2本を浴びた気分になっているのに、何と本作は“パート1”なのだ! この後どのようなストーリーが語られるのか想像できないが、インド映画はいつも想像を余裕で超えてくる。鑑賞後は疲労困憊必至だが、今や定番となった“インド英雄アクション”映画は1年に1本は見ておかないと禁断症状が出る体になっているのではないだろうか? 昨年の『SALAAR/サラール』も同様に3時間を乗り切った後にパート1に過ぎなかったと知り衝撃を受けたわけだが、こうなったらもうこのXXLサイズ映画たちに慣れてしまった方が人生楽しいかもしれない。どうせ震えるなら禁断症状にではなく、英雄、もとい修羅が下す恐ろしき裁きに震えよう。

【ストーリー】
1996年、クリケットのワールドカップを控えたインドに衝撃が走る。巨大犯罪組織による破壊工作の情報を得た警察本部は、それを阻止すべく作戦を開始。犯罪組織のリーダーを追って、特別捜査班が凶悪な密輸団の巣窟として恐れられていた“赤海”と呼ばれる村へと向かった。困難を極めた捜索の末、捜査班は十数年にわたって凄惨な抗争が続くその土地で、愛と正義を貫いたデーヴァラという英雄とその息子の血塗られた伝説を知ることになる……。

【キャスト】
NTR Jr.、ジャーンヴィー・カプール、サイフ・アリー・カーン 他

【スタッフ】
監督・脚本:コラターラ・シヴァ

 

 

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