『アセスメント～愛を試す7日間～』この1週間で、子どもが産まれてくるに足る世界を創造してください。

2025.05.11

この映画は、つまり―

あなたは子どもが欲しいですか？
あなたは親にふさわしい人間でしょうか？
あなたは子どものために何もかもを犠牲にする覚悟がありますか？

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◆配信中の注目作

『アセスメント～愛を試す7日間～』

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文：屋我平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

上記の問い全てに迷わず「はい」と答えられたでしょうか。であれば、次の段階である「査定(アセスメント)」に進みましょう。この星にはもう、過去のように80億人もの人間を生かし続けるだけの資源はありません。豊かな緑は破壊されてしまい、世界はご存じのように科学的に居住に適した環境が整えられたエリア「新世界」と、そのまま打ち捨てられ荒廃したエリア「旧世界」に分かたれました。野蛮な「旧世界」で生きるという考えは現実離れしており、今となっては国家に反逆した者か精神に異常を来した者しか足を踏み入れることはありません。とは言え、寿命を劇的に伸ばす奇跡の薬「セノキシジン」が広く普及した素晴らしき「新世界」であっても制約はあります。通常の生殖ではなく、国家が管理する体外受精でしか人口は増やせません。それ故に、あなた方が親となるにふさわしい資質を持つ人間なのかを査定する必要があるのです。天地が創造されたのと同じ7日間をかけて。

まず、あなた方のもとには経験豊かな「査定官」が派遣されます。今回あなた方を担当する査定官はヴァージニア。より親しみを感じていただくために彼女を紹介しましょう。ヴァージニアは、クラシックSF映画『エクス・マキナ』で、人間の男性から十分な“人間らしさ”を備えているかどうかのテストをされるアンドロイドを演じたアリシア・ヴィキャンデルに似ています。奇しくもアリシア自身が、故郷のスウェーデンで最初に体外受精で産まれた人々のうちのひとりと言われており、ヴァージニア以上に査定官にふさわしい人物はいません。査定は彼女の確かな目をもって行われますが、きっとあなた方を驚かせるでしょう。堅苦しい質問だけでは表層しか分かりません。普段の生活の様子や、実際の子どもに対する反応を暴き、親の資質は測らねばならないのです。ヴァージニアの卓越した演技力、聡明さ、そしてゾッとするほどのユーモアセンスをもって。

査定中、あなた方は様々な負の感情にさらされるでしょう。解決策の見出せない困惑、耐え難い羞恥心、抑えきれない怒り、不条理に対するやりきれなさ、理解できないことから来る恐れ……。子どもを育てるのは、それらのようなストレスの連続です。子どもに可愛さや大きな愛情を感じるのは当たり前のことですが、それらと同じほど強いストレスを乗り越えられなければ育児はできません。もちろん、あなた方パートナー間の強い絆や両親との関係、秘めた過去についても掘り下げていきます。そして、ヴァージニアに「不適格」と判断されれば即座に査定終了、不合格となります。査定に例外はありません。例え、あなたがかつて栄華を誇ったマーベル映画の最強ヒーロー、ワンダだとしても。子どもはルール通りに動くプログラムではない故に、時にどんなヴィランよりも厄介な存在になります。育児には、ヴィランを倒すのとは全く別のスーパーパワーが必要になるのです。

さて、査定の詳細についてはご理解いただけたでしょうか？　あなた方が立派なお父様・お母様になれるよう、幸運(フォーチュン)を心より願っております。インターホンが鳴りましたら、ヴァージニアを中に迎え入れてください。さあ、それでは査定開始です。