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『ザ・スタジオ』どれほど映画や映画人を愛しても、彼らから好かれるとは限らないんだ。

この映画は、つまり―
  • 映画好きが映画会社の社長になってしまったら?
  • あの俳優・あの監督たちが毎週登場!
  • 絶対に、絶対に、“クール・エイドは飲む”な!

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◆配信中の注目作

『ザ・スタジオ』

Apple TVで視聴する⇒こちら

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

あなたは映画を愛しているだろうか? 映画業界で働きたいと思っているだろうか? もしそうならば、映画会社の社長にだけはなってはならない。なぜか? それは本シリーズが嫌というほど教えてくれる。『ザ・スタジオ』は、Apple TV+での配信が始まったばかりのハリウッド内幕もののコメディドラマだ。主人公はセス・ローゲン演じる、念願叶って映画会社コンチネンタル・スタジオの新社長に任命されたばかりのマット・レミック。まず自身が映画マニアのマットは、これで後世に残るような映画をたくさん世に出していけると意気込むが、もちろんお話はそう上手く運ばない。現時点でまだ3話までしか配信されていないが、1話完結型で毎回とんでもない事件が起こるのだ!

このドラマで良い味を出しているのが、やはりマットが基本的にはただの映画好きというところ。しかも、娯楽性だけを追求した映画には興味がなく、芸術的な価値もある映画でなければ認めないという厄介オタクだ(A24などに転職すべきではないだろうか?)。ただの映画好きである筆者には深く共感できる考え方だが、それでは社長は務まらない。CEOからは、時流に乗っかって人気商品の映画化を成功させるよう圧力をかけられるが、何とそれがクール・エイド(粉末ジュース)の映画なのだ。クール・エイド・マンというマスコットキャラクターがいるにはいるが、より有名なペプシマンであってもどのように映画化したものか全く分からない。どこに語るべきストーリーが? 例えヒットはしたとしても、それに何の意味が? マットは“作品”としての映画を愛し、“商品”でしかない映画には中指を突き立てる。

……といっても反抗するのは心の中だけで、小心者のマットはCEOや映画人を前にするとついつい相手のご機嫌を取ってしまう! 劇中で言及されるある実際の事件から誕生した、圧力に屈して相手の無茶を受け入れることを意味する「クール・エイドを飲む」という表現があるが、まさにマットはクール・エイドを飲むかどうか何度も何度も突きつけられていくのだ。また、このようにセリフの言葉がドラマの構成に対する自己言及にもなっていたり、これみよがしの長回しショットがあるなど本当にオタクっぽい作りで、映画界の様々な小ネタを知っているとさらに楽しめる。

内幕ものだけに、多くの俳優や監督が本人役で登場してくれるのも嬉しい。しかも画面に映る程度のちょっとしたカメオ出演ではなく、毎回ストーリーで重要なポジションを担っており、そのせいでマットの胃は常にキリキリ、メンタルはギリギリだ。1話からマットも大ファンのまさかの超大物が登場するが、映画スタジオは時にアーティストの希望に添えないどころか、希望を真正面から打ち砕く決断をしなければならない。社長になんてなるもんじゃない、とマットに深く同情しながらも爆笑させられ、さらに伏線も見事に回収していく脚本が素晴らしく良くできている。果たしてマットは、批評家と観客を同時に満足させ、ついでにヒットもするような傑作を世に放つことはできるのか? 他人事じゃないという気持ちで、毎週彼を見守ろう。

【ストーリー】
セス・ローゲンが新任の映画スタジオ代表役で出演。一流セレブたちに認められようと躍起になりながら、会社からの要求と創作活動への情熱を両立し映画の存続と意義を守るべく、コンチネンタル・スタジオの同胞たちとともに奮闘する。

【キャスト】
セス・ローゲン、アイク・バリンホルツ、キャサリン・オハラ、チェイス・スイ・ワンダーズ、キャスリン・ハーン 他

【スタッフ】
監督:セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ
製作総指揮:セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ 他

 

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