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『ホランド』例え盲目と言われても、知らない方が幸せだった。

この映画は、つまり―
  • アメリカ国内の“オランダ”が舞台のスリラー
  • 人は周辺情報のせいで騙される
  • 年齢不詳すぎるニコール・キッドマン

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◆配信中の注目作

『ホランド』

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文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

「知っている」ことは通常、最終的な答えに辿り着く上でプラスに働くと思われている。しかし、そのせいで逆に目が曇る場合もある。この『ホランド』も、まさにそういった映画だ。「ホランド」(オランダ)というタイトルだが、舞台となるのはアメリカ・ミシガン州に実在する都市ホランド。ではオランダは関係ないのかと言えば、もちろん関係はある。ニューヨークは元々、1600年代前半にオランダからの入植者によって「ニューアムステルダム」と名付けられたが、ホランドもオランダの入植者が移り住んだ土地だった。そのため、風車やチューリップ・タイムなるチューリップ祭などのオランダ文化が今も残っている。本作もやはり、風車とチューリップ畑ののどかで美しい映像から始まる……のだが。

その映像の終わり際には、蜂とも蝿ともつかない虫の不快な羽音が割り込んでくる。これで思い出すのは、つい先日紹介したばかりのデヴィッド・リンチ監督作『ブルーベルベット』だ。明るい真昼の田舎町に隠された真夜中の顔。『ホランド』もそういったテーマなのかと思わせる。奇しくも、ホランドはリンチに大きく影響を与えている児童文学『オズの魔法使い』の原作者ライマン・フランク・ボームが愛した土地でもある。さらに、本作のオープニングで流されるのは、主人公である普通の教師で主婦のナンシーの意味深なモノローグ。曰く、現実とは思えないほど最高の町である、と。「ホランド」という響きとリンチから連想されるのは『マルホランド・ドライブ』。どこからが現実で夢なのか分からない同作を思い出すと、『ホランド』はかなり身構えて見ないといけない作品のように思えてくる。10年以上前に本作が映画化されようとしていた際、主演する予定だったのは『マルホランド・ドライブ』のナオミ・ワッツと知ればなおさらだ。

ナンシーはある日、イヤリングを片方失くしてしまう(『ブルーベルベット』では“耳”を見つけることで物語が始まるのと対照的だ)。このイヤリングを探そうとする中で、ナンシーは様々なことに気づいていく。優しい夫が仕事ではない理由で何度も出かけて行ったり、ナンシーに隠れて息子ハリーと何事かを話していたり……。何不自由ないと思っていた生活に少しずつ影が差す。幸せな家庭は、砂の城のように脆いものだったのか? ナンシーを演じている大女優ニコール・キッドマンは、その貫禄を一旦引っ込めとびきりキュートにナンシーを演じている。思い込みが激しく空回りばかりの困ったキャラクターながら、キッドマンのおかげで初心な乙女のようにも見える。キッドマンの出演作の中で、男性と女性の違いに切り込んだ作品では『ステップフォード・ワイフ』が思い出されるが……さて、本作ではどうなるのか?

ここまでややこしい話をしてきたが、最初に言った通り、知識は時に人を真実から遠ざける。これらの予想は全くの的外れかもしれない。少なくとも監督のミミ・ケイヴは、「デート相手のセバスチャン・スタンが実は人肉大好きサイコパスイケメンだった」というとんでもない設定のホラー『フレッシュ』でデビューした曲者だ。ろくでもない展開が待っていることだけは疑いようもない。……ああ、知らないままでいれば良かったのに。

【ストーリー】
ナンシーは、町の名士である夫と一人息子とともに、チューリップの咲き誇るミシガン州ホランドで暮らしている。完璧に見える生活は、やがてひねりの聞いた物語へと転落していく。ナンシーと優しい同僚は、ある秘密に疑念を抱いたことで、自分たちの生活は見た目とは違うことに気づく。

【キャスト】
ニコール・キッドマン、マシュー・マクファディン、ガエル・ガルシア・ベルナル、ジュード・ヒル 他

【スタッフ】
監督:ミミ・ケイヴ

 

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