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『ウルフズ』相棒じゃない。片棒を担いでるだけだ。

この映画は、つまり―
  • あのハリウッドスター共演作が公開中止、配信に!?
  • どんなに有能でイケてても、おじさんの悲哀からは逃げられない
  • 結局、ケンカするほど仲が良い

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◆配信中の注目作

『ウルフズ』

Apple TVで視聴する⇒こちら

 

文:屋我 平一朗(日々メタルで精神統一を図る映画ブロガー)

ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットのダブル主演作が配信作品として作られるなんて、お手軽な時代になったものだ。……いや、本来は日本で劇場公開されるはずだった。しかし、製作のApple の方針変更に伴い、北米での公開規模は縮小、日本ではApple TV+のみでの配信となった。ビジネス上の判断なので仕方がないとは言え寂しいが、内容としてはド派手アクションではないし、家で気楽に見る方が適している気もする。なぜなら、本作『ウルフズ』はどこか抜けたイケオジふたりによるおしゃれでオフビートなクライムコメディだからだ。

ある夜、女性検事長がホテルの部屋に連れ込んだ若い男が誤って死んでしまった。このままでは私の人生も終わる。そう思った彼女は、死体をきれいさっぱり“掃除”してくれる名もなき男に電話をかける。会ってみると、神経質そうだが何とも頼りになりそうなイケオジだ(クルーニーが演じているので便宜上ジョージと呼ぶ)。しかし“掃除”を始めようとした矢先、別人から同じ仕事を依頼されたもうひとりの飄々とした名もなきイケオジが訪れる(ピットが演じているので便宜上ブラッドと呼ぶ)。っていうかお前誰? このくらいの仕事ひとりで出来るよ。しごでき男たちのプライドがバチバチ火花を散らすが、ツイていないことにふたりは部屋に隠された持ち主不明のドラッグも見つけてしまう。“掃除”の対象が増えてしまった。ああ、長い夜になりそうだ……。

本作は、凸凹な2匹の狼、もとい“2匹の一匹狼”がケンカしながら一緒にどんどん面倒な事態に巻き込まれていくのをゆる~く楽しむ映画になっている。ジョージとブラッドは明らかに裏の世界の人間だが、世界の理からは逃げられない。どちらも中年なのだ。死体を片付けようと屈めば腰をやらないか心配だし、老眼なので近くの文字は読めない。互いに性格も仕事のやり方も正反対で馬が合わないと思っているが、実はけっこう似た者同士。逆向きの図形をくっつけたらきれいなハート型になった。長い夜を過ごすうち、昔からの腐れ縁だったような気がしてきた。そんな感じの作品だ。

監督はMCUのスパイダーマン「ホーム三部作」を撮ったジョン・ワッツ。これまで一貫して子どもと大人の関係を描いてきたワッツは、本作でもそのテーマを踏襲している。本作の子どもはスパイダーマンと比べるのが失礼なくらいしょうもないヤツだが、これだけ年齢が離れているからこそ考えることもある。さあ、期せずして運命共同体となったローンウルフたちの命運やいかに? 死がふたりを分かつまで、末永く……短く? お幸せに~。

【ストーリー】
ライバル関係にある2人のフィクサーがニューヨークの高官の不祥事をもみ消すため同時に呼び出され、互いの運命が交わる。この激しく危険な夜に、両者はつまらない不満やエゴを一旦脇に置き、仕事をやり遂げなければならない。

【キャスト】
ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、エイミー・ライアン 他

【スタッフ】
監督:脚本:ジョン・ワッツ

 

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