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『仮面ライダーBLACK SUN』”生きている限り戦い続けろ”という強烈なメッセージ

この映画は、つまり―
  • 超社会派だけど超エンタメ!
  • 西島秀俊と中村倫也の変身がかっこよすぎる!
  • 物語から発せられる強烈なメッセージが超刺さる!

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◆配信中の注目作

『仮面ライダーBLACK SUN』(2022)

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文:大西D(ヒカセン兼業ライター)

対話によって分かり合えることこそが美しい。きっと誰しもがそう思うだろう。話し合いで問題が解決できるなら、これ以上素晴らしいことはない。しかし、世の中そんなに簡単ではない。自分の考えを絶対に譲らず、時として異なる意見や思想、人種や性別のものを力で押さえつけようとする者もいる。本作『仮面ライダーBLACK SUN』は、差別を受ける怪人を物語の中心に据え、そこに強烈なエネルギーを持った南光太郎と秋月信彦がいる。

差別を受ける怪人、差別を声高に叫ぶ人間という構造は、どう見たって人種差別問題を、特に黒人が警察官に殺害される事件が多発するアメリカを想起させるし、ルー大柴演じる総理大臣は祖父も総理であったという設定からしても、明らかに安倍晋三元総理をイメージしている。社会が分断されている様はまさに「現代日本」だ。怪人という要素が本作をフィクションたらしめている。

本作が一筋縄ではいかないのが、そういった世界観において「共に手を取り合う未来」を安易に持ってきてはいない点だ。仮面ライダーという正義のヒーローは、やはり悪の集団を倒し、世界に平和をもたらすというのがある種のお約束だ。しかし、本作は常に「戦う」という選択肢を見せてくる。それを背負うのが本作オリジナルのキャラクターであり、物語のカギを握るヒロイン和泉葵だ。仮面ライダーBLACKと聞けば誰もがブラックとシャドームーンの戦いを想像すると思うし、それは確かにある。しかし、本作の魂と呼べる部分を担うのはヒロインである和泉葵だ。彼女が物語の中で経験すること、その先に出した答え。そこにぜひ注目してほしい。

昭和のテレビシリーズは鑑賞していなくても全然問題ない。単語や設定こそ通ずるものはあるが、物語は完全に本作オリジナル。そしてやはり西島秀俊と中村倫也という今最も熱い俳優たちの熱い戦いは、やはり見逃せない。この2人の変身シーンが最高にかっこいい!特に中村倫也の変身シーンはそのポーズのキレの良さが最高なので必見だ。他にもビルゲニアを演じた三浦貴大、総理大臣を演じたルー大柴など、強烈なインパクトを残す演技を見せてくれる。テレビ版にはない、重厚感たっぷりの演技は大きな見どころだ。

大きな話題となった仮面ライダーのデザインだが、オリジナル版に愛着を持っている人も多い中で、なかなか意見が割れる部分ではあるだろうが、個人的には結構好きだ。こういった生物感あふれるデザインはやはり『真・仮面ライダー』を思い起こさせるのだが、結果としてそれに負けないほどに衝撃的な描写も多かった。仮面ライダー史上初の成人指定作品は物語だけでなく、これまでの作品にはないハードな描写にも注目して欲しい。

今のウクライナ情勢を見てもわかるように、人とは簡単に他者の大切なものを平気で奪う。ではどうすれば自分の大切なものを守れるのか?それは「戦う」しかない。どんなに美辞麗句を並べようが、言葉だけでは何も守れない。『仮面ライダーBLACK SUN』は様々な社会問題を物語に反映しているが、本作が最も伝えたかったのは「生きている限り、戦い続けろ」ということだと私は思っている。物語のラストシーンはどんな作品にも劣らない、強烈なエネルギーを私たちに与えてくれるはずだ。

【ストーリー】
時は2022年。国が人間と怪人の共存を掲げてから半世紀を経た、混沌の時代。差別の撤廃を訴える若き人権活動家・和泉 葵は一人の男と出会う。南光太郎──彼こそは次期創世王の候補、「ブラックサン」と呼ばれる存在であった。50年の歴史に隠された創世王と怪人の真実。そして、幽閉されしもう一人の創世王候補──シャドームーン=秋月信彦。彼らの出会いと再会は、やがて大きなうねりとなって人々を飲み込んでいく。

【キャスト】
西島秀俊、中村倫也、平澤宏々路、三浦貴大 ほか

【スタッフ】
監督:白石和彌
特技監督:田口清隆
コンセプトビジュアル:樋口真嗣

公式HP

© 石森プロ・東映 © 「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

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